巻き戻り令嬢は長生きしたい。二度目の人生はあなた達を愛しません

せいめ

文字の大きさ
94 / 102
二度目の話

残酷な言葉

 お義兄様への気持ちを今更自覚しても、苦しいだけだった。


「私はアナとブレア公爵令息の婚約なら…、非常に悔しいが…、認めてもいいと思っている。
 あの男とは一度目は失敗したかもしれないが、今回はきっと上手くいくだろう。
 アナを深く愛してくれているのがよく分かるし、あの男なら、きっとアナを大切にしてくれるはずだ。」


 残酷な言葉だった…

 
 お義兄様は、義妹である私の幸せを願ってくれているからこそ、そのように言ってくれているのだろう。
 私はお義兄様にとって大切な…、ただの義妹だから。

「……そうですね。それは分かっております。」

「アナ、迷っているのか?あまり嬉しそうには見えないな。
 もしかして、学園に好きな男でもいるのか?私達には紹介出来ないような身分の男だとか?」

「……。」

 こんな時もお義兄様は鋭い。でも、私の好きな人が学園にいると大きな勘違いしているようだ。
 お義兄様でも勘違いすることがあることに驚きだわ。

 家族に紹介出来ない恋人がいるのはお義兄様の方なのに…
 自分がそうだったからと、私まで同じだと思わないで欲しい。


「黙るということは、アナの好きな男は学園にいるのだな。
 …ミルズ先生か?先生と生徒という関係では、誰にも話せないし、隠れて付き合わなければならないからな。
 ミルズ先生は貴族学園の教員になるくらい優秀な男かもしれないが、教員になって陛下から爵位を貰ったと言っても、領地を持たない、しがない男爵位だ。
 侯爵令嬢であるアナとは身分が違いすぎる。」

「なぜミルズ先生が出てくるのです?
 先生とは何の関係もありませんわ。」

 私がミルズ先生との関係を否定する姿を見て、お義兄様は冷ややかに笑うのだった。

 お義兄様が私にこんな顔をするなんて…

「私が何も知らないと思ったか?
 ミルズ先生は昔と違い、カッコよくて、優しくて、面倒見の良い先生として、女子生徒に大人気だと聞いている。
 人気のミルズ先生は、他の女子生徒とは一線を画しているのに、アナだけは自分の教科係に指名したりして、近くに置いているのだろう?
 資料作りだと言って、放課後に二人きりで過ごしたり、アナは何度もミルズ先生に助けられているらしいじゃないか。
 二人はお似合いだけど、身分が違いすぎるから結ばれない、可哀想な恋人達だと言われているらしいな。」

 初めて聞いた話だった…。
 これは学園でチェルシー達に聞いてみよう。

「ふふっ…。お義兄様は、そんなつまらない噂話を信じるのですか?」

 余りにも馬鹿らしい噂話に、乾いた笑いが出てきてしまう。

「アナは王太子殿下の婚約者候補の筆頭と言われていて、殿下とは仲が良かったし、陛下や王妃殿下にも気に入られていた。
 そんなアナが突然婚約者候補を辞退したのだから、他に好きな男がいるのではと思われても仕方がないだろう?
 私は、アナはブレア公爵令息に未練でもあるのかと思っていたのだが、今のアナを見る限りそうではないようだな。
 私はブレア公爵令息なら認めるが、ミルズ先生は認めることは出来ない。」

 自分が秘密の恋人と結ばれることが出来ないからって…
 それに、ミルズ先生とは何の関係もないわ!

「……認めて貰えなくて結構ですわ!」

「アナ!待ちなさい!」
 
 馬鹿らしい話をすることに耐えられなくなった私は、お茶の席から立ち上がり、その場を足速に離れた。


 アナスタシア・コールマン、17歳。
 二度目の人生で、義兄への気持ちを自覚した日は、生まれて初めて兄妹喧嘩をした日になった。



 翌日の朝食時…


「あら、アナとルークは喧嘩でもしたの?
 珍しいわね。」

「お母様、喧嘩なんてしていませんわ。
 そろそろ学園に行って来ます。
 今日は少し帰りが遅くなります。では!」

「そう…。気をつけてね。」

 言葉を交わさない私達を見て、お母様はすぐに兄妹喧嘩に気付いたらしい。
 学園から早く帰ると、お義兄様とお茶を一緒するのがお約束のようになっていたから、しばらくは早く帰ってくるのはやめよう。

 放課後は図書室でも行こうかしら。
 今日はチェルシー達に、噂話について何か知っているか聞いてみよう。


あなたにおすすめの小説

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

完結 この手からこぼれ落ちるもの   

ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。 長かった。。 君は、この家の第一夫人として 最高の女性だよ 全て君に任せるよ 僕は、ベリンダの事で忙しいからね? 全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ 僕が君に触れる事は無いけれど この家の跡継ぎは、心配要らないよ? 君の父上の姪であるベリンダが 産んでくれるから 心配しないでね そう、優しく微笑んだオリバー様 今まで優しかったのは?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

嘘つきな貴方を捨てさせていただきます

梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。 「さっさと死んでくれ」 フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。 愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。 嘘つきな貴方なんて、要らない。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 11/27HOTランキング5位ありがとうございます。 ※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。 1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。 完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。