巻き戻り令嬢は長生きしたい。二度目の人生はあなた達を愛しません

せいめ

文字の大きさ
96 / 102
二度目の話

閑話 義兄 ルーク

 私は12歳の時に名門のコールマン侯爵家に養子として迎えられた。

 コールマン侯爵家で家族を紹介された時、そこには小さな妖精のような女の子がいた。
 私の瞳の色によく似たブルーダイヤのような目…、いや、あの透き通るような綺麗な青い瞳はブルートパーズの色か?クリクリの大きな目に、美しいハニーブロンドの髪、色白の綺麗な肌にピンクの小さな唇。
 とっても愛らしくて、大きくなったら、私の義母のような美女になるのだろうと思わせるような容姿の義妹だった。

 私は初めて顔を合わせた義妹が可愛すぎて、緊張してしまったことを覚えている。
 そんな可愛い義妹と仲良くなりたいと思った私だったが、今まで小さな令嬢と関わったことのない私は、どうやって仲良くしていいのかが分からなかった。

 勉強も剣術も、マナーにダンスも、貴族令息として必要なことは何の苦労もなく簡単に出来ていた私が、まさか義妹と仲良くなる術が分からずに、こんなに苦労することになるとは考えたこともなかった。

 気がつくと、義妹とは仲良くなることが出来ないまま、時間だけが過ぎていく。

 仲良くなるきっかけもなく、アナからは壁のようなものを感じていた13歳のある日のことだった。

 風邪をひきやすいアナは、数日間、熱を出して寝込んでいたのだが、そのアナが、突然私の部屋に駆け込んで来たのだ。
 寝起きで、そのまま私の部屋にやって来たのだろうと思われるアナは、私の顔を見ると、涙をボロボロ流す。

 何があったのだ…?

 アナが私の部屋に来ることも、こんな風に取り乱している姿を見ることも初めてのことだと思う。
 そんなアナは、泣きながら私に謝るのであった。

「お、お義兄様!優しいお義兄様に、今まで冷たくしてごめんなさい。
 本当はお義兄様と仲良くしたかったのです。
 ……っ、こ、こんな私ですが、これからもよろしくお願いします。」

 その後すぐに、アナの専属メイドがやって来て、アナが熱でうなされて怖い夢を見て、パニックを起こしてしまったことを教えてくれた。
 そこまで風邪をこじらせていたのか。こんな小さな体で可哀想に…。

 アナは自分が死ぬ夢をみて、夢の中で私と別れることが悲しかったと話す。
 そして、これからは私と仲良しの義兄妹になりたいと言ってくれたのだ。

 私もずっとアナと仲良くしたいと思っていた。
 だから、アナから言われた言葉は私にとって、とても嬉しいものであった…

 そんな私は迷わずにアナに伝えた。
〝私達は二人だけの義兄妹なのだから、これからは仲良くしよう〟と。


 アナと仲良くなってから、毎日が楽しくなった。
 明かりのない暗くて寒い部屋から、太陽の光が差し込む暖かい部屋にやって来たかのような日々。

 まだまだ先の話だが、私はこの可愛い義妹が嫁ぐ日に、正気を保っていられるのだろうか…。

 アナはあの日から、性格が少し変わったような気がする。
 まだ10歳の令嬢にしては、大人びた現実的なことを口にするし、基本はおっちょこちょいだが、実年齢より落ち着いた雰囲気になったような…

 勉強だってそこまでやっていないし、自分から好き好んで学習するような子ではないのに、難しい外国語を流暢に話すことが出来たりと、とても不思議だった。
 そして時に、何かを思い詰めたような表情をするのだ。
 まだ10歳の少女が何を悩むと言うのか?それとなく探りを入れようとするが、アナは話したがらない。
 話したくないことを無理には聞けないが、いつかアナが話してくれる日が来るのを待つことにしよう。

 
 そして、その頃から私は、夢を見ることが多くなった。
 死にそうになるアナを私が看病している夢だったり、アナが望まない結婚でこの邸を離れる夢。
 また違う日には、アナの葬儀をする夢や、義両親が泣き崩れている夢も見た。

 こんな不吉な夢を見ているなんて、誰にも言えなかった。
 そう言えば、アナも自分が死ぬ夢を見たとか言っていた。
 これは、この先に起こる未来を見ているのか?しかし、こんな夢なんかを信じていいものか…

 だが…、アナは私の最愛の義妹だ。

 私はこの小さな可愛い義妹を、守っていくと強く心に決めたのであった。
 
 

あなたにおすすめの小説

【完結】なぜ、私に関係あるのかしら?【番外編更新】

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

妃が微笑んだまま去った日、夫はまだ気づいていなかった

柴田はつみ
恋愛
「セラフィーヌ、君は少し、細かすぎる」 三秒、黙る それから妃は微笑んで、こう言った。 「そうですね。私の目が曇っていたようです」 翌朝から、読書室に妃の姿はなかった。 夫への礼は完璧。公務も完璧。微笑みも完璧。 ただ妻の顔だけが、どこにもなかった。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します