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記憶が戻る前の話
17 結婚
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公爵様の婚約者となった私は、一人でお茶会にも参加するようにした。しかし、一部の夫人や令嬢から見下された態度を取られ、戸惑うことばかりだった。
「今日もベント伯爵令嬢はお美しいわ。でも、公爵様は若くて美しいご令嬢に今までは見向きもしなかったのに、ベント伯爵令嬢は何をなさってあの方の愛を手に入れたのかしら?
やっぱり産みの母君の影響かしらね? 血筋は争えないわ」
「……っ」
「そういえば、公爵様は前の婚約者のことを忘れられずにいたとか。
小耳に挟んだのですが、ベント伯爵令嬢は前の婚約者によく似ていらっしゃるらしいですわ。
こんなに若くて何も知らないご令嬢を、忘れらない元婚約者の身代わりにするなんて、公爵様も酷いお方だわ。
あら、そんな泣きそうな顔をなさらないで。ただの噂話でしてよ」
「……」
次期公爵夫人として社交をこなさなくてはならないのに、社交が苦手で貴族の友人がいない私にとって、女性だけのお茶会は地獄のような時間でしかなかったのだ。
公爵様が一緒の時は何の問題もなかった。しかし、彼がいない時にみんなの態度が一変する。
姉が私の嫌な噂を流しているらしく、私が実家の伯爵家でどれだけ問題のある者だったか、産みの母が悪女で義母は嫌がらせを受けていたとか、謂れのない誹謗中傷に苦しめられる。
こんな時、平民で育ってきた私にはどのように対応していいのか分からず、一人で悩む日々が続いた。
公爵様の前の婚約者のことも気になるけど、30代ならそれなりに色々あるわよ。過去の恋愛話の一つや二つ、気にするのは良くないわよね……
しかし、少しすると私に冷淡な態度を取っていた夫人や令嬢、噂を流していた姉の取り巻き達を社交の場で見なくなっていて、私の嫌な噂話も消えていた。
「アリー、害虫は消しておいたから大丈夫だ。つらい思いをさせて悪かった。
うちの公爵家は無理に社交なんてしなくても問題はない。しばらくは二人でのんびり過ごそう。君は頑張りすぎだよ。
だが、王妃殿下は君に会えないと私に文句を言ってくるから、王宮の夜会だけは我慢してくれ。勿論、私が一緒だから何の心配もない」
「……色々と申し訳ありませんでした」
「何で謝るんだ? 私が君を守るのは当然だろう。
うちは筆頭公爵家で力はあるが僻みの対象になりやすい。今後も君を妬んで引き摺り下ろそうとする者が沢山出てくるだろう。何かあれば一人で悩まずに私に話すようにしてくれ。
分かったね? 私の大切なお姫様」
「……はい」
私は悩みを打ち明けたことはないし、助けを求めたこともない。公爵様は私に何があったかを気付いて裏で動いてくれたようだ。大切にされているのが伝わり嬉しかったが、複雑な気持ちになっていた。
貴族の結婚はただ好きなだけでは駄目なんだわ。
求められることが多すぎて、私に公爵夫人が務まるのかしら?
夫がいないと何も出来ないような弱い妻にはなりたくないのに。
強くなりたい……
しかし、そんな私にも特技なことがあった。
「奥様の公爵家の内政管理の帳簿の書き方は素晴らしいです。計算も合ってますし、とても見やすいです。
初めてやったとは思えないほどですよ。文官も驚くでしょうな」
内政管理など、公爵夫人の執務を家令から教えてもらっているが、覚えが早いとよく褒められる。お世辞なのではと思うほどだった。
「奥様は刺繍やダンスも素晴らしいと講師の先生方がおっしゃっておりましたわよ」
メイド長も何かにつけて褒めてくれるが、公爵家の力で一流の講師の先生から教えてもらっているからか、わりと簡単に覚えられた。
そして、結婚が認められる私の18歳の誕生日に結婚式を挙げ、私達は正式な夫婦になった。
結婚式は国王陛下と王妃殿下が参列して下さり、盛大に執り行われた。
「アリシア、実はエステルも婚約者が決まったの。
結婚式を挙げる教会を決めなければいけないのだけど、貴女が挙げた教会で挙式をさせてもらえないか、公爵様から教会に頼んで欲しいの。貴女から公爵様に話してくれるわよね?
あの教会は格式が高いから、あそこで結婚式を挙げたら他の貴族にも自慢出来るのよ。貴女のたった一人の姉なんだから、立派な結婚式にした方がいいでしょ?」
挙式の後のパーティーで、珍しく義母が笑顔で話しかけてきたと思ったら姉の結婚式の話だった。
今日、私は家族から一言も祝福の言葉を掛けてもらってない。こんな日ですら家族が私を利用することしか考えていないと思うと、空虚な気持ちになった。
「今日もベント伯爵令嬢はお美しいわ。でも、公爵様は若くて美しいご令嬢に今までは見向きもしなかったのに、ベント伯爵令嬢は何をなさってあの方の愛を手に入れたのかしら?
やっぱり産みの母君の影響かしらね? 血筋は争えないわ」
「……っ」
「そういえば、公爵様は前の婚約者のことを忘れられずにいたとか。
小耳に挟んだのですが、ベント伯爵令嬢は前の婚約者によく似ていらっしゃるらしいですわ。
こんなに若くて何も知らないご令嬢を、忘れらない元婚約者の身代わりにするなんて、公爵様も酷いお方だわ。
あら、そんな泣きそうな顔をなさらないで。ただの噂話でしてよ」
「……」
次期公爵夫人として社交をこなさなくてはならないのに、社交が苦手で貴族の友人がいない私にとって、女性だけのお茶会は地獄のような時間でしかなかったのだ。
公爵様が一緒の時は何の問題もなかった。しかし、彼がいない時にみんなの態度が一変する。
姉が私の嫌な噂を流しているらしく、私が実家の伯爵家でどれだけ問題のある者だったか、産みの母が悪女で義母は嫌がらせを受けていたとか、謂れのない誹謗中傷に苦しめられる。
こんな時、平民で育ってきた私にはどのように対応していいのか分からず、一人で悩む日々が続いた。
公爵様の前の婚約者のことも気になるけど、30代ならそれなりに色々あるわよ。過去の恋愛話の一つや二つ、気にするのは良くないわよね……
しかし、少しすると私に冷淡な態度を取っていた夫人や令嬢、噂を流していた姉の取り巻き達を社交の場で見なくなっていて、私の嫌な噂話も消えていた。
「アリー、害虫は消しておいたから大丈夫だ。つらい思いをさせて悪かった。
うちの公爵家は無理に社交なんてしなくても問題はない。しばらくは二人でのんびり過ごそう。君は頑張りすぎだよ。
だが、王妃殿下は君に会えないと私に文句を言ってくるから、王宮の夜会だけは我慢してくれ。勿論、私が一緒だから何の心配もない」
「……色々と申し訳ありませんでした」
「何で謝るんだ? 私が君を守るのは当然だろう。
うちは筆頭公爵家で力はあるが僻みの対象になりやすい。今後も君を妬んで引き摺り下ろそうとする者が沢山出てくるだろう。何かあれば一人で悩まずに私に話すようにしてくれ。
分かったね? 私の大切なお姫様」
「……はい」
私は悩みを打ち明けたことはないし、助けを求めたこともない。公爵様は私に何があったかを気付いて裏で動いてくれたようだ。大切にされているのが伝わり嬉しかったが、複雑な気持ちになっていた。
貴族の結婚はただ好きなだけでは駄目なんだわ。
求められることが多すぎて、私に公爵夫人が務まるのかしら?
夫がいないと何も出来ないような弱い妻にはなりたくないのに。
強くなりたい……
しかし、そんな私にも特技なことがあった。
「奥様の公爵家の内政管理の帳簿の書き方は素晴らしいです。計算も合ってますし、とても見やすいです。
初めてやったとは思えないほどですよ。文官も驚くでしょうな」
内政管理など、公爵夫人の執務を家令から教えてもらっているが、覚えが早いとよく褒められる。お世辞なのではと思うほどだった。
「奥様は刺繍やダンスも素晴らしいと講師の先生方がおっしゃっておりましたわよ」
メイド長も何かにつけて褒めてくれるが、公爵家の力で一流の講師の先生から教えてもらっているからか、わりと簡単に覚えられた。
そして、結婚が認められる私の18歳の誕生日に結婚式を挙げ、私達は正式な夫婦になった。
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「アリシア、実はエステルも婚約者が決まったの。
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あの教会は格式が高いから、あそこで結婚式を挙げたら他の貴族にも自慢出来るのよ。貴女のたった一人の姉なんだから、立派な結婚式にした方がいいでしょ?」
挙式の後のパーティーで、珍しく義母が笑顔で話しかけてきたと思ったら姉の結婚式の話だった。
今日、私は家族から一言も祝福の言葉を掛けてもらってない。こんな日ですら家族が私を利用することしか考えていないと思うと、空虚な気持ちになった。
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