23 / 161
アンネマリー編〜転生に気付いたのでやり直します
閑話 ある公爵令息の話 3
しおりを挟む
アンネマリーが病み上がりに登校し始めてから、以前よりも顔を合わせる機会が減ったような気がする。
遠くにいるのを見る事があってもそれだけで、以前のように挨拶に来ることが無くなったのだ。
そんな時に、ちょっとした出来事を耳にすることになる。同じ学年でやたら高位の貴族令息に媚を売りまくる事で有名な、ケール男爵令嬢がアンネマリーに絡んだらしい。
昨年までは王太子殿下に媚びを売り、殿下の婚約者のファーエル公爵令嬢を一方的に敵視し、王家から厳重注意を受けていたが、殿下が卒業したら、私に照準を合わせてきたようだ。迷惑以外の何でもない。
何を勘違いしているのか、アンネマリーに絡み、アンネマリーは最強の親友達と華麗に返り討ちにしたようだ。
あの迷惑女、これでアンネマリーには絡まなくなるだろうと安堵したものの、そこに同じクラスに在籍する、宰相家の嫡男のマディソンまで加わっていたと聞き言葉を失った。マディソンがなぜ、アンネマリーを助ける?
マディソンは宰相家の嫡男だけあって、とにかく頭の切れる男である。私と一緒で王太子殿下の側近であるが、騎士の家門である私と、宰相で文官の家門であるマディソンとは学園ではあまり交流がない。
冷静沈着で隙がなく、殿下と同様に腹黒な面を持っていると思われる。見目も良く、筆頭侯爵家の嫡男であるので、令嬢から人気があるようだが、全く相手にせず、近寄り難い雰囲気を持つ。
今まで色々な令嬢に言い寄られても、冷たくあしらってきた筈のあの男が、アンネマリーを助けた?
嫌な予感しかしない。そして、そんな嫌な予感ほど当たるのであった。
後日、アンネマリーに絡んだケール男爵令嬢が自宅謹慎に入ったらしい。どうやら、マディソンと王太子殿下が動いたようだ。迷惑女と顔を合わせなくて済むのは良かったが、どうしてマディソンが動くのか、不愉快でしかない。
そして、その頃から嫌な噂を耳にする。女性に冷たいあのマディソン侯爵令息が、スペンサー侯爵令嬢と仲良く話をしていると…。
そんな噂話なんて聞きたくなかった。
アンネマリーと徐々に疎遠になってきたことや、マディソンとの噂話のことで、心配したであろう親友のエリックから、放課後2人で歩いている時に聞かれる。
「最近、スペンサー嬢、お前の所に全く来なくなったよな。大丈夫なのか?」
そんなの前から気付いていた。以前は私に少なからずは、寄り添うような素振りがあったのに、今は彼女は全く自分を見てないし、恐らく避けられている。そうさせてしまったのは、他でもない自分だ。でも今更どうしたら良いのか分からない自分は強がってしまった。
「子供の頃からの政略結婚の婚約者に、今更、何も思わないし、気にならないさ。」
気になることは沢山あるが、子供の頃に自分が強く望んで婚約したのだから、今更、何があっても気持ちは変わらない…と言えたらどんなに良かったか。
無駄に強がって放った言葉に、すぐに後悔することになる。一番聞かれたくない人に、その言葉を聞かれてしまったのだ。
アンネマリーは一瞬、悲しそうな表情をしたような気がする。しかし、すぐに私を軽蔑したような目で見て、
「お互い、同じ気持ちだったようですね。親が決めただけのただの政略結婚。いつ無くなっても困りませんわね。…ご機嫌よう。」
そう言って、小走りで去ってしまった。
あんなに冷たい声で話す彼女は初めて見た。
親が決めただけの政略結婚じゃないし、無くなったら困るんだ。同じ気持ちって何だ?
しかし、それでも言えることは、彼女を傷つけたのだと言うことだ。
唖然として、動けなくなっている私にエリックは、すぐに追いかけて謝って来いと、背中を押してくれた。
慌てて追いかけるが、すでに彼女の姿は見当たらず、その日は謝る事が出来ずに終わった。
この日のことを、この先ずっと後悔し続ける事になるとは、この時の私はまだ知らないのであった。
アンネマリーとの会話がこれが最後になるなんて…。
遠くにいるのを見る事があってもそれだけで、以前のように挨拶に来ることが無くなったのだ。
そんな時に、ちょっとした出来事を耳にすることになる。同じ学年でやたら高位の貴族令息に媚を売りまくる事で有名な、ケール男爵令嬢がアンネマリーに絡んだらしい。
昨年までは王太子殿下に媚びを売り、殿下の婚約者のファーエル公爵令嬢を一方的に敵視し、王家から厳重注意を受けていたが、殿下が卒業したら、私に照準を合わせてきたようだ。迷惑以外の何でもない。
何を勘違いしているのか、アンネマリーに絡み、アンネマリーは最強の親友達と華麗に返り討ちにしたようだ。
あの迷惑女、これでアンネマリーには絡まなくなるだろうと安堵したものの、そこに同じクラスに在籍する、宰相家の嫡男のマディソンまで加わっていたと聞き言葉を失った。マディソンがなぜ、アンネマリーを助ける?
マディソンは宰相家の嫡男だけあって、とにかく頭の切れる男である。私と一緒で王太子殿下の側近であるが、騎士の家門である私と、宰相で文官の家門であるマディソンとは学園ではあまり交流がない。
冷静沈着で隙がなく、殿下と同様に腹黒な面を持っていると思われる。見目も良く、筆頭侯爵家の嫡男であるので、令嬢から人気があるようだが、全く相手にせず、近寄り難い雰囲気を持つ。
今まで色々な令嬢に言い寄られても、冷たくあしらってきた筈のあの男が、アンネマリーを助けた?
嫌な予感しかしない。そして、そんな嫌な予感ほど当たるのであった。
後日、アンネマリーに絡んだケール男爵令嬢が自宅謹慎に入ったらしい。どうやら、マディソンと王太子殿下が動いたようだ。迷惑女と顔を合わせなくて済むのは良かったが、どうしてマディソンが動くのか、不愉快でしかない。
そして、その頃から嫌な噂を耳にする。女性に冷たいあのマディソン侯爵令息が、スペンサー侯爵令嬢と仲良く話をしていると…。
そんな噂話なんて聞きたくなかった。
アンネマリーと徐々に疎遠になってきたことや、マディソンとの噂話のことで、心配したであろう親友のエリックから、放課後2人で歩いている時に聞かれる。
「最近、スペンサー嬢、お前の所に全く来なくなったよな。大丈夫なのか?」
そんなの前から気付いていた。以前は私に少なからずは、寄り添うような素振りがあったのに、今は彼女は全く自分を見てないし、恐らく避けられている。そうさせてしまったのは、他でもない自分だ。でも今更どうしたら良いのか分からない自分は強がってしまった。
「子供の頃からの政略結婚の婚約者に、今更、何も思わないし、気にならないさ。」
気になることは沢山あるが、子供の頃に自分が強く望んで婚約したのだから、今更、何があっても気持ちは変わらない…と言えたらどんなに良かったか。
無駄に強がって放った言葉に、すぐに後悔することになる。一番聞かれたくない人に、その言葉を聞かれてしまったのだ。
アンネマリーは一瞬、悲しそうな表情をしたような気がする。しかし、すぐに私を軽蔑したような目で見て、
「お互い、同じ気持ちだったようですね。親が決めただけのただの政略結婚。いつ無くなっても困りませんわね。…ご機嫌よう。」
そう言って、小走りで去ってしまった。
あんなに冷たい声で話す彼女は初めて見た。
親が決めただけの政略結婚じゃないし、無くなったら困るんだ。同じ気持ちって何だ?
しかし、それでも言えることは、彼女を傷つけたのだと言うことだ。
唖然として、動けなくなっている私にエリックは、すぐに追いかけて謝って来いと、背中を押してくれた。
慌てて追いかけるが、すでに彼女の姿は見当たらず、その日は謝る事が出来ずに終わった。
この日のことを、この先ずっと後悔し続ける事になるとは、この時の私はまだ知らないのであった。
アンネマリーとの会話がこれが最後になるなんて…。
170
あなたにおすすめの小説
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。
自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。
彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。
そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。
大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
笑い方を忘れた令嬢
Blue
恋愛
お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。
嘘つくつもりはなかったんです!お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
季邑 えり
恋愛
異世界転生した記憶をもつリアリム伯爵令嬢は、自他ともに認めるイザベラ公爵令嬢の腰ぎんちゃく。
今日もイザベラ嬢をよいしょするつもりが、うっかりして「王子様は理想的な結婚相手だ」と言ってしまった。それを偶然に聞いた王子は、早速リアリムを婚約者候補に入れてしまう。
王子様狙いのイザベラ嬢に睨まれたらたまらない。何とかして婚約者になることから逃れたいリアリムと、そんなリアリムにロックオンして何とかして婚約者にしたい王子。
婚約者候補から逃れるために、偽りの恋人役を知り合いの騎士にお願いすることにしたのだけど…なんとこの騎士も一筋縄ではいかなかった!
おとぼけ転生娘と、麗しい王子様の恋愛ラブコメディー…のはず。
イラストはベアしゅう様に描いていただきました。
病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで
あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。
怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。
……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。
***
『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる