元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
50 / 161
マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

閑話 守れなかった大切な人 1

しおりを挟む
 その記憶が戻ったのは、両親と一緒に馬車事故に巻き込まれた時だった。

 両親と領地に行った帰り道、土砂崩れに巻き込まれてしまい、自分だけが生き残り、両親は亡くなってしまった。普通ならかなりショックを受けることなのだが、その戻った記憶が余りにも強烈すぎて、両親の死を上手く受け止める事が出来なかったのだ。

 それは事故に遭って瀕死の状態の時だった…



『アンネマリー様、ハァ…。貴女…に、おつ…かえ…出来て、し…あわせ…でした。』

『私も。ハァ…。アル…がいてく…れ…て、よかった…わ。…だいす…きよ。』

『俺…も、ハァ…。大好き…でし…た。…あな…たを、わす…れ…な…………  。 』

 その時も馬車の事故に遭い、その人を守れなかった。大好きで大切で、ずっと側で守りたいと思っていた愛しい人。
 今まで何で忘れていたのだろう…。


 両親が亡くなってすぐに、母の弟夫婦が爵位を継ぐ事になり、うちに引越して来た。
 10歳とはいえ、中身は成人の精神年齢だ。母と仲が悪かった叔父夫婦になんて、何の期待もしていなかった。両親を亡くし、叔父夫婦との関係も悪いなんて、普通の子供なら耐えられないだろうが、前世の記憶が戻った俺は、数年我慢して、騎士学校に進学して家を出ようと計画していた。早く家を出るには、それが一番だから。
 叔父夫婦だけでなく、叔父夫婦の娘である私の従姉妹も大嫌いだった。元々は子爵家の令嬢であった従姉妹は、甘やかされて育ったせいか、我が儘で太った令嬢だった。伯爵家の嫡男の俺を一方的に気に入ったようで、ベタベタして気持ち悪い女だ。
 ある日、叔父夫婦と一緒に家で生活し始めた頃、将来は従姉妹と結婚して、伯爵家を盛り立てて行くようにと叔父から言われた。冗談じゃない。なんでこんな女と!
 だったら、爵位は要らないので成人したら出て行きますと、無意識に言っていた。そこから、関係が更に悪化するのであった。
 こんな女より、アンネマリー様の事を調べたいのに。あの事故の後、彼女は生きているのだろうか?国内の貴族名鑑を見ても名前は載ってなかった。もしかしたら、隣国に留学した後、そのまま向こうで結婚しているかもしれない。誰かに聞きたいけど、叔父夫婦には聞けないし、王族の姫の事を簡単に聞くような事もできない。

 そんな時、母の従姉妹のフォーレス侯爵家で俺を引き取りたいと言ってきた。叔父夫婦は邪魔者の俺をあっさりと手放した。従姉妹は納得していないようだったが、自分の両親が決めた事なので、諦めたようだった。フォーレス侯爵は、この叔父夫婦に対して、大金を渡し、二度と俺に関わらないという念書まで書かせたようだった。それくらい、この叔父夫婦は信用できない人物なのだろう。叔父夫婦は大金に目が眩んで、黙ってサインしたらしい。しかし、これのおかげで、あの大嫌いな叔父夫婦と従姉妹との縁が切れるのだから、有難いと思った。

 フォーレス侯爵は国王陛下の弟で、かなり力を持つ人物のようだ。そしてアンネマリー様の叔父でもあり、アンネマリー様と同じ髪と瞳。彼女のことは、侯爵に聞けばいいのだろうが、俺が聞いたら何故そんなことを聞くのか、不審に思われそうで、聞けなかった。
 フォーレス侯爵夫人は、亡くなった母と姉妹のように育って、とても仲が良かったらしく、もしうちの両親に何かあれば、俺を引き取る約束までしていたらしい。
 そんな家に引き取られた俺は、とても大切にしてもらえた。こんなに大切にして貰えているなら、その気持ちに応えたいと、勉強も剣術も、侯爵家の人間として恥ずかしくないように、頑張るようになった。

 そして、もう一つ気になる人物がいる。フォーレス侯爵夫妻の実の娘で、俺の同じ歳の義妹だ。以前は体が弱かったらしいが、最近は剣術や馬術、魔法などを嗜むくらいには元気になったらしい。しかし馬車が苦手で長距離の移動が難しいので、領地で生活しているようだ。大嫌いな従姉妹の存在のこともあり、仲良くしたいとかいう気持ちはなく、期待もしていなかった。養子の俺の存在も、邪魔に思っていてもおかしくはないのだし。しかし、大切にしてくれているフォーレス侯爵夫妻の為に、表面上だけでも上手くやるようにはしたいと考えていたのだが…。義妹から俺に届いた手紙を読んだ俺は驚いてしまう。手紙には、俺に侯爵家を継いでもらいたいとハッキリ書いてあった。どういう事なのか疑問に思い、義父の侯爵に手紙の事を聞いてみると、義父の手紙にも書いてあったようで、よっぽど家を継ぎたくないようだから、義兄が出来て喜んでいるようだと。しかも義両親には、俺が傷ついているから、大切にしてやるようにとか、私よりも優先しろだとか会う度にキツく言われるようだ。優しい子なのか、不思議な子なのか分からないが、悪い子ではなさそうだ。
 そして特に気になる事がある。義妹から届いた手紙の字は、偶然なのかアンネマリー様の字によく似ている。一緒に届けられたクッキーも、かつてアンネマリー様が手作りしてくれた物と同じ味がするのだ。もしかして……。いや、それはまだ、分からない。アンネマリー様は生きているかもしれないし、まずはそれを調べてからだ。

 義両親が領地に行っている間、ふと思い出した。スペンサー家の近くの教会のことを。スペンサー家の代々のお墓もそこにある。この邸からも単騎なら、そんなに時間がかからないはず。そこに行けば、何か手掛かりがあるかもしれないと思った俺は、偶には遠乗りに行きたいと家令に頼んでみた。護衛を連れて行くならと許可を得たので、護衛を連れて、その教会に行くことにした。

 かつて、アンネマリー様が高熱で生死を彷徨った際に、弟のフィリップ様と毎日祈りを捧げにきていた教会だ。ここはあの頃と何も変わっていないな。時間が止まっているようだ。
 護衛には、教会の入り口で待ってもらう事にして、1人で中に入っていく。教会の裏には墓地が広がっている。スペンサー侯爵家の場所はスペースが広くなっているので、すぐに分かった。

 そこには、沢山の花が手向けられていた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう

楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。 目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。 「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」 さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。 アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。 「これは、焼却処分が妥当ですわね」 だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

行動あるのみです!

恋愛
※一部タイトル修正しました。 シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。 自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。 これが実は勘違いだと、シェリは知らない。

処理中です...