元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

治療終了

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 魔術師団長の邸に着いた私は、フィル兄様のお仕置きのせいで、ぐったりしていた。フィル兄様は黒い笑みを浮かべながら、私の腰を抱き、エスコートしている。ちょっと近いんですけど。
 家令が応接室に案内してくれる。入室すると、魔術師団長と、何故か今日も王都騎士団長と公爵閣下がいる。この2人はまた来ていたのね。気疲れするから、別に来なくていいのに。

「フォーレス侯爵令嬢、体は大丈夫か?先日は本当に申し訳なかった。今日もわざわざ来てくれてありがとう。妻は意識が戻って、食事も取れるようになったんだ。顔色も良くなって来たし、君には感謝しかないよ。本当にありがとう。…ところで、そちらはスペンサー卿?2人は従兄妹だよな?」

「魔術師団長、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。本日もどうぞよろしくお願い致します。今日は、従兄妹が付き添いで一緒に来てくれたのです。」

「魔術師団長、ご無沙汰しております。今日は従兄妹のマリーベルの付き添いで、お邪魔することをお許しください。」

 フィル兄様はその後も、王都騎士団長と公爵閣下に挨拶をしていた。こういう時は、イケメン好青年なのよね。

 そういえば、この前倒れた時にハワード卿に助けてもらったから、上司の王都騎士団長にも一言お礼を伝えた方がいいわよね。

「騎士団長様、先日は申し訳ありませんでした。特にハワード卿には、迷惑をおかけしてしまったので、後日、騎士団に謝罪に伺いたいのですが、よろしいでしょうか?」

「気にしなくて、大丈夫だ。でもハワード卿は喜ぶと思うから、いつでも来てくれ。ところで、ハワード卿とは仲がいいんだな。」

「ありがとうございます。後日、伺わせて頂きますわ。ハワード卿には、親切にして頂いて感謝しておりますので。」

「ああ、マリーを邸まで運んでくれた騎士ですよね?ハワード伯爵家の。母がステキな騎士様だったと言っていたのです。マリーがお世話になっているなら、ぜひ私からも挨拶させて頂きたいですね。」

 おば様、そこまで言っちゃったの?しかも、伯爵家の子息なのね。なんかフィル兄様の笑顔が怖いような。

「スペンサー卿は、随分とフォーレス侯爵令嬢を可愛がっているようだな。」

「ええ。マリーが恋人なんて連れて来たら、決闘を申し込むかもしれないですね。」

 この人、笑顔で何を言っているのよ!思わず、ジロっとフィル兄様を見る私。余計な事しゃべるなー!

「フォーレス侯爵令嬢も、お父上と義兄上、それに従兄妹殿もいて、なかなか恋人も作れないだろう。私が誰か紹介しようか?」

 王都騎士団長、貴方も黙ろうね!とは言えないので、

「ふふっ。お気持ちだけ頂きますわ。いざという時は、国外逃亡でもしますので。」

 お父様はともかく、義兄とフィル兄様のシスコンはヤバいからね。しかし、なぜうちの家庭の事情を知っているんだろう?

「くっくっ。公爵、聞いたか?フォーレス侯爵令嬢は面白いよな。」

「ああ。そうだな、面白い御令嬢だ。」

「あの、そろそろ奥様の治療をしたいのですが、よろしいでしょうか?」

 さっさと終えて帰りたいし、夫人の様子も気になるからね。

「ああ。よろしく頼む。…そう言えば、この前預かった魔石だが、かなり強い効果があるようで、毎日、徐々に回復しているように見える。あの魔石はどうやって手に入れた物か、教えてくれないか?」

「あれは、辺境伯領で魔物討伐をして手に入れた魔石に、私が治癒魔法の力を込めたものですわ。」

「えっ?君が魔物討伐するのか?しかも、辺境伯領の?魔石が取れる魔物はなかなか強いのに、君はなかなかの手練れなのだな。」

 魔術師団長が褒めてくれた?

「親友が辺境伯の令嬢ですので、いつも長期休暇の時に辺境伯領に遊びに行っていたのです。今年も行く予定ですわ。」

「しかし、辺境伯領はここから馬車で1週間以上かかるだろう?」

「馬車だと時間がかかるので、最近は単騎で行っています。聖女子学園にいた時は、2日かからないで行けたのですけど、ここからだと、もう少しかかってしまいそうですね。」

「単騎で?すごいな。フォーレス侯爵令嬢は、騎士団にすぐにでも入れそうだ。」

「マリー。辺境伯領の話は家でゆっくりと話合おうね。」

 えっ?フィル兄様が怒る要素はなかったと思うけど。何でよ!私のバケーションにまで口を出すの?

 そんなこんなで、夫人の治療に向かう。フィル兄様は夫人の部屋の廊下まで来てくれた。
 部屋の中に案内される私。中には、ベッドに座る夫人がいた。夫人は、私をじっと見つめ、

「座ったままで失礼しますわ。私はレベッカ・アダムズと申します。この前は、ありがとうございました。貴女のおかげで、こうやって生きていますわ。私の為に、吐血するほど強い魔法を使ってくれたそうですね。貴女には感謝しかありません。本当にありがとうございました。」

 口調がしっかりしている。顔色も悪くないし、私が思っているよりも、治癒魔法が効いているようだ。しかし、何となく表情がよろしくないような…。

「マリーベル・フォーレスと申します。奥様の体調が回復されたようで、嬉しく思います。まだ、痛みはありますでしょうか?」

「痛みは全くありませんわ。苦しくもないし、毎日少しずつ、動けるようになりました。」

「そうですか。まだ治療をしたいのですが、よろしいですか?」

「ええ。よろしくお願いしますわ。」

 奥様は、女2人で楽しく話もしたいからと、旦那様である魔術師団長に退出してもらっていた。確かに、旦那様がいても気になるよね。
 一応、全身に治癒魔法をかける。思ったより、元気になったようだから、この前ほど気合いを入れなくても平気そうだ。そして、前に胸にしこりができたと言っていたから、美乳を想像して、胸に治癒魔法をかけておこう。更に病み上がりで、お肌や髪が元気がないから、そこもやっておこう。今日はスペシャルエステコースよ!シャンプーやボディーソープ、ハンドクリームのCMに出てくるモデルをイメージして、魔法をかけまくる。さらに、顔のくすみやクマ、シミ、ソバカスも消しちゃえ!艶肌にするわよ!
 うん、うん。奥様は美人だから、磨いたら輝いて、華やか美人になったわね。髪も綺麗な赤髪よ!ゴージャスになったわ。あとは、自分で栄養を考えた食事をとって、体型を戻せば完璧ね。
 奥様は、ニコニコする私を不思議そうに、見ている。

「奥様、鏡はありますか?」

「少し待ってくださるかしら。」

 奥様は、ベルを鳴らしてメイドを呼び、鏡を持って来させる。メイドは綺麗になった奥様を見て、目を輝かせていた。いいでしょ!綺麗でしょ!これで、少しは元気になってくれればいいのだけど…。

 鏡を見た奥様は、信じられないといった表情だ。そして、涙が流れている。

「うっ、うっ、うっ。どうして、ここまでしてくれるの?…ありがとう。私、もう少し頑張るわ。」

 良かった!涙脆いアラサーも、もらい泣きしちゃったわよ。
 その後、奥様と世間話をした。初対面なのに話が合う気がする。奥様は、子供が欲しいが、ずっとできなかったということを打ち明けてくれる。さっきのもう少し頑張るというのは、その悩みか!
 原因はどっちだろう?素人には分からないわね。奥様には、子ができるおまじないと言って、下腹に若返れー、元気になれー、正常になれー、いい卵!と祈りを込めて治癒魔法をかけておいた。効くか分からないけど。後は旦那の方か!旦那様にも秘密のおまじないを、こっそりかけたいから、呼んで欲しいことを伝えると、ノリノリで呼んでくれた。
 奥様に呼ばれた魔術師団長は、綺麗になった奥様を見て、泣きそうになっていた。よし、今のうちに!この距離ならいけそうね。元気になれー!正常に動けー!若返れー!いい種!と魔法を飛ばす。よし、行ったわよね。後は2人の世界でどうぞ、仲良くやってくださいまし。

「そろそろ、私は失礼させて頂きますわ。奥様、治療はもう必要ないと思いますわ。栄養のある物を食べて、少しずつ体を動かして行くうちに、すぐに元気になれると思います。しかし、何かあれば直ぐに駆けつけますので、その時はお呼び下さいませ。どうか、これからもお元気で。」

「ありがとう。何もなくても、また呼ぶから、遊びに来てね。貴女は、もう私の親友だと思っているから。」

「フォーレス侯爵令嬢、ありがとう。妻がもっと元気になったら、正式にうちに招待させてくれ。本当にありがとう。君のおかげで私達は幸せだよ。」

「こちらこそ、ありがとうございました。それでは、ご機嫌よう。」

 熱々の2人をおいて、部屋を退出すると、フィル兄様が待っていてくれた。長い時間、ここで待っていてくれたのね。

「マリー、今日は気分が悪くなってないか?」

「今日は大丈夫です。フィル兄様、長い時間、待っていてくれて、ありがとうございました。」

 私の言葉を聞いて、安心した表情をするフィル兄様。優しくて心配性なところが、ちょっとかわいい。手を伸ばして、頭をなでなでしたくなっちゃう。このサラサラの銀髪が癖になってきている私。

「マリー、ここではそれはダメだよ。」

 と言いながら、嬉しそうな顔してるよね。

「2人は本当に、仲がいいんだな。」

 声の方をみると、公爵閣下が。少し後ろに王都騎士団長も。2人はまだいたのね。何か表情が怖いというか、険しいと言うか。こんな時は、さっさと帰ろう。

「従兄妹ですので。…それでは、今日はこれで失礼させて頂きますわ。」

「公爵閣下・騎士団長、私達は失礼させて頂きます。」

「ああ。気をつけて。」

「フォーレス侯爵令嬢、また今度、学園で。」

 やっと帰れるわ!


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