元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
129 / 161
南国へ国外逃亡できたよ

その頃王都では シールド公爵 3

しおりを挟む
 シナー公爵令嬢のメイドも、スペンサー卿が好きだったとは。

 このメイド、ゾッとする目をしている。

「シナー公爵、どうする?」

 無表情が恐ろしい殿下がシナー公爵に尋ねる。

「妹とメイドや関係している従者達は処刑して下さい。そして、私は爵位を返上します。」

「くっくっ。シナー公爵。そんな事をしたらマリーベルが、シナー公爵令嬢の手によって拐われたって他の貴族にバレるよね。マリーベルは社交界に戻って来れなくなるよ。知ってて言ってるの?」

「しかし、他に償う方法が分かりません。」

「シナー公爵は、父である前公爵と違って、優秀で王家への忠誠心が強いことを私は知っているよ。しかも、もうすぐ夫人は出産だよね?あのバカな妹のせいで、結婚が延期になったりして、苦労してやっと結婚出来たのに。爵位を返上したら離縁されちゃうよ。…私はね、そう言うことは望んでないんだよ。」

 殿下が真面目に話すと、とにかく恐ろしいのだ。

「公爵はこのまま、公爵でいてくれ。そのかわり領地にいる前公爵は、娘をきちんと育てられなかった責任で領地に幽閉して、絶対に表に出さないようにしろ。それとマリーベルが戻って来た時、この先、彼女がどんな生活を送れるのかが全く分からない。誰かと結婚するのか、それとも別の生き方になるのか?その時に困らないように、慰謝料だけはしっかり払ってくれ。フォーレス侯爵家は財産は沢山あるが、マリーベル個人名義の財産も沢山あった方がいいだろう。シナー公爵、どうだ?」

「殿下のご厚意に感謝いたします。これからも、王家に忠誠を誓い、王家と国の繁栄の為に、精一杯勤めさせて頂きます。」

 涙目のシナー公爵。彼は優秀で人格者な事は誰もが認めている。彼を失うのは大きな損失なのだ。

「叔父上、シナー公爵は無関係ですし、今までもこのバカな妹と父親に苦労させられてきたのは知ってますよね?叔父上としては、納得出来ない部分はあると思いますが、私はマリーベルが戻って来た時に、彼女が何も問題なく過ごせることを優先したいと思っています。だから、シナー公爵家の処分はこれでお許しくださいませんか?マリーベルの捜索は引き続き、行っていきますから。」

「…ああ。シナー公爵は悪くないし、優秀で人柄がいい公爵を失うのは望んでいない。マリーベルの変な噂が立つのも困る。これが今の最善の処分だろう。マリーベルは、体調が悪くてずっと臥せっているということにしておこう。実際、最近は具合が悪そうな姿を沢山の人に見られているから、何とか誤魔化せるとは思う。捜索をよろしく頼む。」

「ご理解、ありがとうございます。それとシナー公爵、公爵の妹と関係するメイドと従者は、王家で預かってもいいかな?もう会えなくなるかもしれないけど。」

「勿論でございます。寧ろ、ゴミを預かって下さることに感謝いたします。妹は精神を病んで、領地で療養しているということにしてもよろしいでしょうか?メイドと従者はそんな妹の世話をする為に、一緒に領地に旅立ったと言うことにして。」

「さすがシナー公爵だ。ありがとう。これからもよろしく頼むよ。」

 結局、フォーレス侯爵令嬢の行方は分からなかった。彼女はどこに行ってしまったのか?そこにいる誰もが、憔悴するのであった。


 そして数日経ったある日、スペンサー卿が一足早く、騎士団の遠征から戻って来た。王太子殿下から早急に戻るようにとの命令だけを受け、なぜ戻されたのか理由は知らされていない。

 王太子殿下はスペンサー卿が戻ると、気をしっかり持てと言い、地下牢に連れて行くのであった。私も同伴するように言われ、2人について行く。
 地下牢に、シナー公爵令嬢やメイド、従者がそれぞれ別に入れられているのを見たスペンサー卿は、何かを悟ったようであった。

「…マリーは生きているのですか?」

 弱々しい声で殿下に尋ねるスペンサー卿。

「行方不明だ。始めは夜会で媚薬でも盛って、適当な令息に襲わせ、それをフィリップに見せようとしたらしい。でも、マリーベルには常にフィリップやアルベルトが付いていたり、アランやシリル、シールド公爵の目があったりして、他の令息にそれは出来ないと断られたようだ。それで、そこのメイドと従者達が破落戸を雇って襲わせる計画を立てたようだが、雇った破落戸は誰かに殺されて、破落戸を監視していた従者とマリーベルは行方不明になっている。従者がマリーベルを連れて逃げたのか、別の誰かに何かをされたのか分からない。自白剤で喋らせたから、嘘は言ってないはずだ。」

「何てことを…。」

 声が震えているスペンサー卿。

「騎士団に協力してもらい、捜索はしているのだが、何の情報もないんだ。この悪女達を捕まえることが出来たのは、フィリップが騎士団の遠征に出発したすぐ後に、この女がマリーベルに絡んでいたのをシールド公爵がたまたま目にして、会話を聞いていたからだ。その時の会話の中で、マリーベルがこの女に対して、凄いことを尋ねたらしいのだ。」

「マリーがですか?この女に何を尋ねていたのです?」

 私を見て聞いてくるスペンサー卿に、私は答えるのであった。

「ああ。『私は殺されるのでしょうか?』と聞いていた。すごいことを聞くものだなと思ったから、しっかり覚えていた。一緒にいた王都騎士団長も聞いている。」

「何でそんなことを?私が出発してすぐですか…。ははっ!私が遠征でいない時を狙ったのですね。まさか、王族のマリーにまで手を出すとは!最近、マリーが何かに悩んでいることは分かっていましたが。マリーはこの悪魔に狙われていることに、何となく気が付いていたのかもしれませんね。この悪魔が私に執着していることは、マリーも知っていましたから。だから、私に対してもあんな風に怯えていたのかもしれません。」
「…ああ、そうなのか。遠征の出発の時に、別れの言葉のようなことを言っていたのは、こんなことになるのを、マリーは予想していた?ははっ!こんな事になるなら、さっさとこの女を暗殺でもして、消しておけば良かったですよ。どうせこの女が死んでも、シナー公爵は、深くは調べないでしょうから。」

 スペンサー卿の話しを聞いて顔色を悪くするシナー公爵令嬢。ちなみに、魔法で今は喋れないようになっている。牢屋を別にしているのに、大声でメイドと罵り合いをして煩いとなったからだ。

「マリーベルが別れの言葉を口にしていただって?」

「はい。今までありがとうだとか、兄様のことは忘れないとか言って、涙を流していました。くっ、、何でマリーの苦しみにあの時に気付かなかったのか。」

「フィリップ、これだけはしょうがない。とりあえず、捜索の範囲を広げてみよう。」

「殿下、ありがとうございます。シールド公爵閣下、貴重な情報に感謝いたします。…それで、悪魔達には自白剤だけですか?」

「今のところは、それだけだよ。シナー公爵はゴミを預かってくれたことに感謝していた。」

「自白剤も完璧かは分かりません。私も少しは喋らせたいのですが、鞭を使ってもよろしいですか?」

「フィリップ、殺さない程度なら許そう。」

「ありがとうございます。死んだ方がマシだと思える程度にしておきます。」

 スペンサー卿がこの女を嫌っていたのは、誰もが知っている。昔から執着されて、大嫌いだった女に最愛の人を奪われたのだから、理性を保つのは難しいだろう。
 その後、表情を無くしたスペンサー卿が拷問を加える様子を、黙って見つめる殿下と私であった。
 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう

楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。 目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。 「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」 さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。 アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。 「これは、焼却処分が妥当ですわね」 だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

行動あるのみです!

恋愛
※一部タイトル修正しました。 シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。 自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。 これが実は勘違いだと、シェリは知らない。

処理中です...