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南国へ国外逃亡できたよ
エピローグ
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南国でそれなりに充実した生活を送っていたはずだったのに……。ヤンデレ疑惑の人達が、国境を越えて迎えにいらっしゃった為、仕方なく帰国することになった私。
帰国の道中も大変だった。ベタベタ過保護なフィル兄様と、それを見て殺気立つシールド公爵様、そんな2人を注意するシリル様。そんな3人に疲れ過ぎた私は、自国に着いた時にはゲッソリして血色が悪くなっていた。
両親と義兄は泣いていた。王太子殿下と妃殿下は、涙目になりながらも、私達を見てなぜがニヤニヤしていた。
今回のことを怒られるかと思ったが、誰にも何も言われなかった。
私は体調が悪く、療養しているということになっていたらしい。旅の疲れでゲッソリしていた私は、誰から見ても体調が悪そうに見えたらしく、療養していたということは疑われなかった。
ヤンデレ疑惑の義兄は、更に過保護になる。今まで以上に世話を焼くし、常に側にいる。あの日家に帰った後は、今だけは許してくれと言われ、結構な時間を抱きしめられた。後でお母様が怒って怖かった。
フィル兄様が、義兄がキレたと言っていたが、怖くて何をしたのか聞くことが出来ない私は、ビビリだと思う。
学園は卒業試験に合格していたので、そのまま卒業扱いになっていた。
親友の腹黒達は、私が逃亡している間に、心配して手紙を沢山くれていた。帰って来てからその手紙を読むと、涙が出て来る。本当に心配されていたのね。
そして、今日は帰国してから初めて腹黒達に会う日だ。待ち合わせのカフェに行くと、貸し切りになっていて、中では腹黒達やヒロインのアンジュ様が待っていてくれた。
みんな泣いていた。ミッシェルだけは、すでに留学に行ってしまったようなので、後で手紙を出そうと思う。
腹黒達は私が療養していると聞いてはいたが、いつまで経っても連絡が取れないことを疑問に感じで、ユーリアが影に探らせ、私がタウンハウスに居ないことには気付いていたようだ。しかし、これ以上調べるのはダメだと、ユーリア父からストップがかかり、断念したらしい。…殿下が圧力かけたのかしら?
とにかく、心配してくれたことを謝り、私がいなかった間の積もる話をした。
レジーナは辺境伯領のあの彼と、正式に婚約するらしい。レジーナからは、辺境伯領のフィークス卿が元気がないようだから、手紙を書いてと頼まれる。南国にいたから、今年の休暇は辺境伯領に行けなかったもんね。元気でやっていることを手紙で伝えよう。しばらく会えなかった人達が沢山いて、かなり心配を掛けたようだから、しばらくはお詫びの手紙を書くことで忙しくなりそうだ。
腹黒達とのお茶会から数日後。今日はヒロインのアンジュさんが、私の家に遊びに来ることになっている。勿論、2人きりで話すことが沢山あるからだ。私の部屋に来てもらい、人払いしてもらう。ちなみに、アンジュさんは、卒業したらすぐに婚約者の伯爵と結婚するらしい。幸せそうで何よりだ。
「マリーベル様はやはり国外に連れて行かれていたんですね。私、何の力にもなれなくて申し訳なくって。本当にごめんなさい。でも…、無事で良かったです。」
ヒロインは可愛すぎる。とにかく可愛いのだ。言葉遣いもすっかり綺麗になってるし、伯爵様の愛の力ね。
「ご心配をお掛けいたしました。アンジュ様が色々と教えてくれていたので、何とかなりましたわ。それと、1年後には結婚されるのですね。どうか、お幸せになって下さい。」
「ありがとうございます。ところで、マリーベル様は、いつスペンサー卿と婚約されるのですか?今から楽しみですわ。」
「…いえ。この先、婚約するかは決めてませんので、まだ未定ですわ。」
「えっ?でもフィリップ様達、攻略対象者と恋人になったら、別れるなんてないから、婚約するものと思っていました。」
えっ?また何かあるの?別れられないってこと?
「アンジュ様。攻略対象者と別れるなんてないって、どういうことでしょう?」
「攻略対象者達は、みんなヤンデレでしたよね?前世ヤンデレ好きの私が思うに、ヤンデレの人と別れるなんて、自殺行為だと思います。別れるのが難しいということです。自分から去って行きそうだと思えば監禁。他に好きな人が出来れば、相手を暗殺。それでも無理なら、毒を飲ませて病人にして、自分から離れられないようにするとか、無理心中もありえますね。君は永遠に私の物だとか言って、刺されるかもしれないですし。100歩譲って無理矢理妊娠させて、強引に結婚に持っていくとか。ヤンデレならそれくらいはやると思います。ヤンデレって頭がキレる人が多そうだから、上手くやりそうですよね。しかも、フィリップ様はマリーベル様を溺愛しているので、絶対に別れられないと思いますけど。」
ゾゾゾ…。ヤンデレ…、恐るべし。
しかも、フィル兄様は暗殺だとか、孕ませるとか口にしていたことがあったから洒落にならない。でも、無理に別れようとして、死にたくない。どうしよう。
「マリーベル様、ヤンデレはある意味で一途ですし、深い愛情をくれますわ。監禁・殺人・暗殺・自殺・暴力は確かに怖いですから、それはしないでって、マリーベル様がフィリップ様に可愛くお願いすれば、あっさり約束してくれそうですけど。」
ヒロインなのに、すごい事を言うわ!でも、別れられないのよね。命懸けの別れ話なんて無理だし!結婚したいなら約束して欲しいと言って、頼むしかない。
後日。フィル兄様が会いに来てくれる。
「あの、フィル兄様。もしもの話ですわよ。もし私がフィル兄様と別れて従兄妹同士に戻りたいと言ったら…」
「別れないよ。どうしてそんな事を聞くの?」
うっ。何か冷気が!
「…何となくですわ。」
「へぇ。私を試してるの?でも、どんな手を使ってでも別れないから大丈夫だよ。」
どんな手を使うんだ?怖すぎる…。
「…ですよね。」
「うん。そろそろ、正式に婚約したいと思っているから、覚悟してね。」
「フィル兄様、もし私と結婚したいなら、約束して欲しいことがありますわ。」
「何?マリーと結婚出来るなら、何でも約束するよ。」
「えっと。不貞と愛人は駄目です。それと、私を殺さない、暴力を振るわない、監禁しない。また、フィル兄様は自殺しない、暗殺しない、殺人しない、という約束をしてくれますか?」
「……随分とすごい内容だけど、それでマリーが結婚してくれるなら、いくらでも約束するよ。」
「契約魔法を使って約束出来ますか?」
「勿論だよ。マリーが安心出来るなら、契約魔法で約束しよう。」
ああ、言ってみるものね。これで、フィル兄様は私を監禁しないわね。
「ありがとうございます。」
「マリーが、いつも何かを思い悩んでいたのは知っているよ。私はそんなマリーを守りたいし、ずっと側にいたい。私自身もマリーがいないとダメなんだ。だから、私とずっと一緒にいて。愛してるよ、マリー。」
この人は私にこうやって愛を囁いてくれる。こんな風に言ってもらえるのは、嬉しいよね。元遊び人の近衛騎士なのが引っかかるが、不貞はしないと契約魔法で約束してくれるなら大丈夫だろう。
「はい。私もフィル兄様が大好きですわ。そこまで言ってくれるフィル兄様を信じたいので、約束は守ってくださいね。」
「ああ!勿論守るよ。…マリー、ありがとう。嬉しいよ。」
もうフィル兄様がこう言ってくれているし、フィル兄様のスペンサー家も好きだから、2人の未来を前向きに考えていこう。
しかし…
せっかく私が前向きになったのに、外野に煩い人が沢山いるせいで、婚約の話がなかなか進まず、苦労することになるとは…。
お父様と義兄のコンビに邪魔をされ、王太子殿下とシリル様のコンビにも邪魔をされ、シールド公爵と騎士団長達にも邪魔をされ……。
こんなに苦労することを、私はまだ知らないのであった。 おしまい
これで完結です。最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
帰国の道中も大変だった。ベタベタ過保護なフィル兄様と、それを見て殺気立つシールド公爵様、そんな2人を注意するシリル様。そんな3人に疲れ過ぎた私は、自国に着いた時にはゲッソリして血色が悪くなっていた。
両親と義兄は泣いていた。王太子殿下と妃殿下は、涙目になりながらも、私達を見てなぜがニヤニヤしていた。
今回のことを怒られるかと思ったが、誰にも何も言われなかった。
私は体調が悪く、療養しているということになっていたらしい。旅の疲れでゲッソリしていた私は、誰から見ても体調が悪そうに見えたらしく、療養していたということは疑われなかった。
ヤンデレ疑惑の義兄は、更に過保護になる。今まで以上に世話を焼くし、常に側にいる。あの日家に帰った後は、今だけは許してくれと言われ、結構な時間を抱きしめられた。後でお母様が怒って怖かった。
フィル兄様が、義兄がキレたと言っていたが、怖くて何をしたのか聞くことが出来ない私は、ビビリだと思う。
学園は卒業試験に合格していたので、そのまま卒業扱いになっていた。
親友の腹黒達は、私が逃亡している間に、心配して手紙を沢山くれていた。帰って来てからその手紙を読むと、涙が出て来る。本当に心配されていたのね。
そして、今日は帰国してから初めて腹黒達に会う日だ。待ち合わせのカフェに行くと、貸し切りになっていて、中では腹黒達やヒロインのアンジュ様が待っていてくれた。
みんな泣いていた。ミッシェルだけは、すでに留学に行ってしまったようなので、後で手紙を出そうと思う。
腹黒達は私が療養していると聞いてはいたが、いつまで経っても連絡が取れないことを疑問に感じで、ユーリアが影に探らせ、私がタウンハウスに居ないことには気付いていたようだ。しかし、これ以上調べるのはダメだと、ユーリア父からストップがかかり、断念したらしい。…殿下が圧力かけたのかしら?
とにかく、心配してくれたことを謝り、私がいなかった間の積もる話をした。
レジーナは辺境伯領のあの彼と、正式に婚約するらしい。レジーナからは、辺境伯領のフィークス卿が元気がないようだから、手紙を書いてと頼まれる。南国にいたから、今年の休暇は辺境伯領に行けなかったもんね。元気でやっていることを手紙で伝えよう。しばらく会えなかった人達が沢山いて、かなり心配を掛けたようだから、しばらくはお詫びの手紙を書くことで忙しくなりそうだ。
腹黒達とのお茶会から数日後。今日はヒロインのアンジュさんが、私の家に遊びに来ることになっている。勿論、2人きりで話すことが沢山あるからだ。私の部屋に来てもらい、人払いしてもらう。ちなみに、アンジュさんは、卒業したらすぐに婚約者の伯爵と結婚するらしい。幸せそうで何よりだ。
「マリーベル様はやはり国外に連れて行かれていたんですね。私、何の力にもなれなくて申し訳なくって。本当にごめんなさい。でも…、無事で良かったです。」
ヒロインは可愛すぎる。とにかく可愛いのだ。言葉遣いもすっかり綺麗になってるし、伯爵様の愛の力ね。
「ご心配をお掛けいたしました。アンジュ様が色々と教えてくれていたので、何とかなりましたわ。それと、1年後には結婚されるのですね。どうか、お幸せになって下さい。」
「ありがとうございます。ところで、マリーベル様は、いつスペンサー卿と婚約されるのですか?今から楽しみですわ。」
「…いえ。この先、婚約するかは決めてませんので、まだ未定ですわ。」
「えっ?でもフィリップ様達、攻略対象者と恋人になったら、別れるなんてないから、婚約するものと思っていました。」
えっ?また何かあるの?別れられないってこと?
「アンジュ様。攻略対象者と別れるなんてないって、どういうことでしょう?」
「攻略対象者達は、みんなヤンデレでしたよね?前世ヤンデレ好きの私が思うに、ヤンデレの人と別れるなんて、自殺行為だと思います。別れるのが難しいということです。自分から去って行きそうだと思えば監禁。他に好きな人が出来れば、相手を暗殺。それでも無理なら、毒を飲ませて病人にして、自分から離れられないようにするとか、無理心中もありえますね。君は永遠に私の物だとか言って、刺されるかもしれないですし。100歩譲って無理矢理妊娠させて、強引に結婚に持っていくとか。ヤンデレならそれくらいはやると思います。ヤンデレって頭がキレる人が多そうだから、上手くやりそうですよね。しかも、フィリップ様はマリーベル様を溺愛しているので、絶対に別れられないと思いますけど。」
ゾゾゾ…。ヤンデレ…、恐るべし。
しかも、フィル兄様は暗殺だとか、孕ませるとか口にしていたことがあったから洒落にならない。でも、無理に別れようとして、死にたくない。どうしよう。
「マリーベル様、ヤンデレはある意味で一途ですし、深い愛情をくれますわ。監禁・殺人・暗殺・自殺・暴力は確かに怖いですから、それはしないでって、マリーベル様がフィリップ様に可愛くお願いすれば、あっさり約束してくれそうですけど。」
ヒロインなのに、すごい事を言うわ!でも、別れられないのよね。命懸けの別れ話なんて無理だし!結婚したいなら約束して欲しいと言って、頼むしかない。
後日。フィル兄様が会いに来てくれる。
「あの、フィル兄様。もしもの話ですわよ。もし私がフィル兄様と別れて従兄妹同士に戻りたいと言ったら…」
「別れないよ。どうしてそんな事を聞くの?」
うっ。何か冷気が!
「…何となくですわ。」
「へぇ。私を試してるの?でも、どんな手を使ってでも別れないから大丈夫だよ。」
どんな手を使うんだ?怖すぎる…。
「…ですよね。」
「うん。そろそろ、正式に婚約したいと思っているから、覚悟してね。」
「フィル兄様、もし私と結婚したいなら、約束して欲しいことがありますわ。」
「何?マリーと結婚出来るなら、何でも約束するよ。」
「えっと。不貞と愛人は駄目です。それと、私を殺さない、暴力を振るわない、監禁しない。また、フィル兄様は自殺しない、暗殺しない、殺人しない、という約束をしてくれますか?」
「……随分とすごい内容だけど、それでマリーが結婚してくれるなら、いくらでも約束するよ。」
「契約魔法を使って約束出来ますか?」
「勿論だよ。マリーが安心出来るなら、契約魔法で約束しよう。」
ああ、言ってみるものね。これで、フィル兄様は私を監禁しないわね。
「ありがとうございます。」
「マリーが、いつも何かを思い悩んでいたのは知っているよ。私はそんなマリーを守りたいし、ずっと側にいたい。私自身もマリーがいないとダメなんだ。だから、私とずっと一緒にいて。愛してるよ、マリー。」
この人は私にこうやって愛を囁いてくれる。こんな風に言ってもらえるのは、嬉しいよね。元遊び人の近衛騎士なのが引っかかるが、不貞はしないと契約魔法で約束してくれるなら大丈夫だろう。
「はい。私もフィル兄様が大好きですわ。そこまで言ってくれるフィル兄様を信じたいので、約束は守ってくださいね。」
「ああ!勿論守るよ。…マリー、ありがとう。嬉しいよ。」
もうフィル兄様がこう言ってくれているし、フィル兄様のスペンサー家も好きだから、2人の未来を前向きに考えていこう。
しかし…
せっかく私が前向きになったのに、外野に煩い人が沢山いるせいで、婚約の話がなかなか進まず、苦労することになるとは…。
お父様と義兄のコンビに邪魔をされ、王太子殿下とシリル様のコンビにも邪魔をされ、シールド公爵と騎士団長達にも邪魔をされ……。
こんなに苦労することを、私はまだ知らないのであった。 おしまい
これで完結です。最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
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