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変化
初めての閨は痛みがあるとは聞いていたが、本当にそのとおりだった。
愛し合う夫婦なら違うのかもしれない。
でも、王命で仕方なく結婚することになった愛のない夫婦にとっては、ただの苦痛の伴う義務でしかなかった。
「……こ、これは? どうして……」
行為が終わった後、シーツだけでなく旦那様の体にまで私の血が付着してしまった。
それを見て顔色を悪くする旦那様は、血が苦手な人なのかもしれない。
「申し訳ありません。お目汚し失礼しました。
旦那様はもう義務を果たされましたので、どうか部屋にお戻り下さいませ。」
「……なんてことだ。……すまない。」
なぜ謝るの? 血が出てしまうのは当たり前のことなのに。
「旦那様。ここはもう大丈夫ですから、体を清めて下さいませ。」
「……本当にすまない。今日は無理をさせたからゆっくり休んでくれ。」
旦那様は服を着て部屋から出て行ってしまった。
そんな顔しなくても……
いくら私が嫌いでも、閨の後に死んだような目をされたら傷付くわよ。
一人になった私は、一日の疲れがグッと押し寄せてきて、深い眠りについてしまった。
翌日、目覚めた私は体の怠さを我慢しながら、湯浴みをしてもらう。
「奥様。出血が続いているようですし、体調が悪そうにも見えますわ。
心配なので侍医を呼んでもらいましょうか?」
「アンナは心配性ね。これくらいは大丈夫よ。」
「しかし奥様、先程話しておられましたが、近いうちに領地に向かわれる予定でしたら、尚のこと出発前に侍医に診てもらった方がいいかと思います。
移動は馬車で何時間もかかるようですし、私は心配ですわ。」
そうだった……。初夜を終えたら領地で好きにしていいと言われていたから、あの旦那様と一緒にいたくない私は、すぐに領地に行きたいとアンナに伝えていたんだった。
「そうね……。では侍医に診てもらえるように手配してもらえるかしら?」
「はい。畏まりました。」
その日の午後、さっそく中年の女性医師が来てくれる。
公爵家の侍医だから、年配の偉い男性医師かと思っていたから驚きだった。
「奥様。出血や痛みは二、三日で止まると思います。初めての閨はお辛かったようですね。
疲労も溜まっているようですし、しばらく安静に過ごして下さいませ。」
「ありがとうございます。」
女性医師は丁寧に診察してくれ、言葉も柔らかくて優しい人のようだ。体の恥ずかしいところも見られたけど、女性医師だから良かった。
診察を終えた後、ベッドで体を起こして本を読んでいると、ドアがノックされる。
「奥様。旦那様がいらしております。」
「え、旦那様が?」
まさか旦那様が私の部屋に来るとは思っていなかった。
慌ててベッドから出て、立ち上がったタイミングで旦那様が部屋に入ってくる。
「なっ……何で起き上がっているんだ?
安静にするように言われていたはずだ!
君は体が弱かったのだから、医師から言われたことは守るようにしてくれ!」
私は体が弱かった……? そんなこと知らなかった。
「……大したことはありませんし、旦那様がいらっしゃるのに、横になったままでは失礼かと思いまして。」
「私は医者から、君を安静にさせるように言われている。
まだ顔色も悪いから早く横になってくれ。」
私のことなど興味もなかったはずなのに、心配してくれているのかしら?
……違うわね。結婚したばかりですぐに具合が悪くなったと噂になったら、何を疑われるか分からないから気にしているだけよ。
変な期待を持ってはいけない。後で自分自身が傷付くことになるのだから。
「分かりました……。ところで旦那様、体調が戻りましたらすぐに領地に行かせていただいてもよろしいでしょうか?」
「……急いでいく必要はない。
今は体を大切にすることを優先してくれ。」
旦那様はどうして傷ついたような顔をするのかしら?
私がここにいない方が、旦那様は愛する人と逢瀬しやすいと思うのに。
分かりやすく邪魔者扱いされるよりはマシだと思うことにしよう。この人なりに私に気を遣ってくれているのね。
「ありがとうございます。
では領地に行く日は、体調が戻ってから決めるようにします。」
「…………」
「……旦那様?」
「……すまない。」
「いえ。大丈夫です。」
「何か必要な物があったら何でも言ってくれ。
遠慮もいらない。」
「ありがとうございます。」
婚約期間中はこんなに喋ったことはなかった。
表情を見ても何を考えているか分からないし、こんな風に喋る人なのね。
翌日、私の部屋に花が届く。
「奥様、旦那様からでございます。」
メイド長がスズランの可愛らしいブーケを持ってきてくれた。
「まあ、綺麗ね。部屋に飾ってもらおうかしら。
旦那様にはお礼を伝えてくれる?」
「畏まりました。」
その日から部屋で安静にしている私のところに、旦那様からの贈り物が毎日届くようになる。
美しい花束だけでなく、流行りのお菓子やアクセサリーなど。
流石に毎日プレゼントをいただくのは心苦しく感じてきたので、あまり気を遣わないで欲しいとメイド長から旦那様に伝えてもらうことにした。
愛し合う夫婦なら違うのかもしれない。
でも、王命で仕方なく結婚することになった愛のない夫婦にとっては、ただの苦痛の伴う義務でしかなかった。
「……こ、これは? どうして……」
行為が終わった後、シーツだけでなく旦那様の体にまで私の血が付着してしまった。
それを見て顔色を悪くする旦那様は、血が苦手な人なのかもしれない。
「申し訳ありません。お目汚し失礼しました。
旦那様はもう義務を果たされましたので、どうか部屋にお戻り下さいませ。」
「……なんてことだ。……すまない。」
なぜ謝るの? 血が出てしまうのは当たり前のことなのに。
「旦那様。ここはもう大丈夫ですから、体を清めて下さいませ。」
「……本当にすまない。今日は無理をさせたからゆっくり休んでくれ。」
旦那様は服を着て部屋から出て行ってしまった。
そんな顔しなくても……
いくら私が嫌いでも、閨の後に死んだような目をされたら傷付くわよ。
一人になった私は、一日の疲れがグッと押し寄せてきて、深い眠りについてしまった。
翌日、目覚めた私は体の怠さを我慢しながら、湯浴みをしてもらう。
「奥様。出血が続いているようですし、体調が悪そうにも見えますわ。
心配なので侍医を呼んでもらいましょうか?」
「アンナは心配性ね。これくらいは大丈夫よ。」
「しかし奥様、先程話しておられましたが、近いうちに領地に向かわれる予定でしたら、尚のこと出発前に侍医に診てもらった方がいいかと思います。
移動は馬車で何時間もかかるようですし、私は心配ですわ。」
そうだった……。初夜を終えたら領地で好きにしていいと言われていたから、あの旦那様と一緒にいたくない私は、すぐに領地に行きたいとアンナに伝えていたんだった。
「そうね……。では侍医に診てもらえるように手配してもらえるかしら?」
「はい。畏まりました。」
その日の午後、さっそく中年の女性医師が来てくれる。
公爵家の侍医だから、年配の偉い男性医師かと思っていたから驚きだった。
「奥様。出血や痛みは二、三日で止まると思います。初めての閨はお辛かったようですね。
疲労も溜まっているようですし、しばらく安静に過ごして下さいませ。」
「ありがとうございます。」
女性医師は丁寧に診察してくれ、言葉も柔らかくて優しい人のようだ。体の恥ずかしいところも見られたけど、女性医師だから良かった。
診察を終えた後、ベッドで体を起こして本を読んでいると、ドアがノックされる。
「奥様。旦那様がいらしております。」
「え、旦那様が?」
まさか旦那様が私の部屋に来るとは思っていなかった。
慌ててベッドから出て、立ち上がったタイミングで旦那様が部屋に入ってくる。
「なっ……何で起き上がっているんだ?
安静にするように言われていたはずだ!
君は体が弱かったのだから、医師から言われたことは守るようにしてくれ!」
私は体が弱かった……? そんなこと知らなかった。
「……大したことはありませんし、旦那様がいらっしゃるのに、横になったままでは失礼かと思いまして。」
「私は医者から、君を安静にさせるように言われている。
まだ顔色も悪いから早く横になってくれ。」
私のことなど興味もなかったはずなのに、心配してくれているのかしら?
……違うわね。結婚したばかりですぐに具合が悪くなったと噂になったら、何を疑われるか分からないから気にしているだけよ。
変な期待を持ってはいけない。後で自分自身が傷付くことになるのだから。
「分かりました……。ところで旦那様、体調が戻りましたらすぐに領地に行かせていただいてもよろしいでしょうか?」
「……急いでいく必要はない。
今は体を大切にすることを優先してくれ。」
旦那様はどうして傷ついたような顔をするのかしら?
私がここにいない方が、旦那様は愛する人と逢瀬しやすいと思うのに。
分かりやすく邪魔者扱いされるよりはマシだと思うことにしよう。この人なりに私に気を遣ってくれているのね。
「ありがとうございます。
では領地に行く日は、体調が戻ってから決めるようにします。」
「…………」
「……旦那様?」
「……すまない。」
「いえ。大丈夫です。」
「何か必要な物があったら何でも言ってくれ。
遠慮もいらない。」
「ありがとうございます。」
婚約期間中はこんなに喋ったことはなかった。
表情を見ても何を考えているか分からないし、こんな風に喋る人なのね。
翌日、私の部屋に花が届く。
「奥様、旦那様からでございます。」
メイド長がスズランの可愛らしいブーケを持ってきてくれた。
「まあ、綺麗ね。部屋に飾ってもらおうかしら。
旦那様にはお礼を伝えてくれる?」
「畏まりました。」
その日から部屋で安静にしている私のところに、旦那様からの贈り物が毎日届くようになる。
美しい花束だけでなく、流行りのお菓子やアクセサリーなど。
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