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閑話 シールズ公爵
アリエルが使用人と心中……?
そんなことはあり得ない。アリエルは殿下を愛していたはずだ。ずっと彼女を見ていた私には分かる。
婚約したばかりの頃は色々悩んでいるように見えたが、殿下の一途な思いにアリエルが変わっていくのが分かったし、少し前に話した時には、殿下と支え合って国のために尽くしていきたいと話していた。
アリエルの目からは強い意志を感じたし、そんなアリエルを見て、私も臣下の一人として未来の国母である彼女を支えたいと思ったのだから……
後日、何とか時間を作ることができた私は、バトラー侯爵家に向かうことにした。
突然訪ねた私を、やつれた顔をしたエリックが迎えてくれる。
「エリック……、大丈夫か?」
「オーウェン、心配して来てくれたんだな。悪いな……
アリーは命を取り留めたがまだ意識が戻らないし、危険な状態らしい。ヘクターは助からなかった。
アリーが目覚めた時に、自分だけ助かったと知ったら……」
ヘクターはアリエルと仲の良かった従者だ。
アリエルが幼い頃からずっと側にいて、真面目で見目のいい従者だったことを覚えている。
「エリック。アリエルは本当に心中だったのか?
殿下と仲の良かったアリエルがそんなことをするとは思えない。」
「アリーは、ずっとヘクターとの恋で悩んでいたらしい。
ヘクターが好きだから、殿下との婚約は断りたかったと話していたようだ。
アリーと仲の良かったヴィオラが打ち明けてくれたよ。」
「ヴィオラ嬢が?」
「ああ……。ヘクターはアリーが体が弱かった頃からずっと側にいて、献身的に支えていた。アリーがヘクターを好きになってもおかしくはない。
それに、アリーは殿下との婚約には前向きではなかったのに、私達家族が強く勧めてしまった。
……アリーが心中したのは私達のせいだ。
私が望まない結婚をしなくてはならないのは、全て家族のせいだとまで話していたようだ。」
アリエルが? ショックだった……
「……エリック、しっかりしろ。」
「私はアリーに合わせる顔がない。
どうすればいいのか……」
エリックと会った日の後日、アリエルが目覚めたと報告を受ける。
その時には、すでに殿下とアリエルの婚約は解消されていた。表向きには急な病気で倒れたということにして。
そして、新しい婚約者候補としてアリエルの義妹のヴィオラ嬢が決まる。バトラー侯爵家の後ろ盾を必要とする王家と、王家との繋がりを望むバトラー侯爵家の利害関係の一致だった。
婚約者ではなく婚約者候補という形になったのは、ヴィオラ嬢は子爵家出身で、高位貴族の令嬢としての教育をあまり受けていないということを王妃殿下が心配したからだった。
王太子妃教育は、高度な教育を受けて育ってきた高位貴族の令嬢ですら大変だという。ヴィオラ嬢の教育の進み具合を見てから、正式に婚約を結びたいという考えらしい。
そこに王太子殿下個人の希望は入っていない。アリエルに裏切られた殿下はずっと塞ぎ込んでいると聞く。
ある日、私は陛下にあることを依頼することにした。
「……オーウェン。それは本気で言っているのか?」
「はい、本気です。アリエル・バトラー侯爵令嬢と婚約したいのです。
彼女は少しずつ回復しているようですが、殿下の元婚約者という立場である彼女の処遇を決めるのは難しいでしょう。領地に生涯軟禁されるのか、バトラー侯爵家の分家にでも嫁がされることになるのか……
それなら、私が彼女と婚約したいと思います。
彼女は優秀で、王太子妃教育を殆ど終わらせていたと聞きます。公爵夫人として問題ないかと。」
「……しかし、彼女は記憶を失っていると聞いているぞ。
公爵夫人が務まるのか?」
「私もそろそろ相手を決めなくてはいけないので、彼女は都合がいいのです。
他に惹かれる令嬢もいませんし、記憶を失っていても、バトラー侯爵家の令嬢で家格的にも問題はないので。
もし彼女の記憶が戻り、王太子妃教育で知った王家の秘密を思い出したとしても、私が夫でしたら何の問題もないかと。」
「……分かった。私からバトラー侯爵に話をしよう。」
「陛下。ありがとうございます。」
自分でも、どうしてここまでアリエルを望んだのか分からない。
彼女に対しての未練はなかったはずだし、記憶喪失になった彼女は別人のようになってしまったと聞いている。しかも彼女は、自分の愛を貫くために家族や王家を裏切ったのだ。
だが、エリックからアリエルの体調が戻ったらすぐに領地に連れて行くという話を聞いた私は、居ても立っても居られなくなってしまった。
陛下はすぐにバトラー侯爵に話をしてくれ、私達は表向きは王命で婚約するということになる。
そんなことはあり得ない。アリエルは殿下を愛していたはずだ。ずっと彼女を見ていた私には分かる。
婚約したばかりの頃は色々悩んでいるように見えたが、殿下の一途な思いにアリエルが変わっていくのが分かったし、少し前に話した時には、殿下と支え合って国のために尽くしていきたいと話していた。
アリエルの目からは強い意志を感じたし、そんなアリエルを見て、私も臣下の一人として未来の国母である彼女を支えたいと思ったのだから……
後日、何とか時間を作ることができた私は、バトラー侯爵家に向かうことにした。
突然訪ねた私を、やつれた顔をしたエリックが迎えてくれる。
「エリック……、大丈夫か?」
「オーウェン、心配して来てくれたんだな。悪いな……
アリーは命を取り留めたがまだ意識が戻らないし、危険な状態らしい。ヘクターは助からなかった。
アリーが目覚めた時に、自分だけ助かったと知ったら……」
ヘクターはアリエルと仲の良かった従者だ。
アリエルが幼い頃からずっと側にいて、真面目で見目のいい従者だったことを覚えている。
「エリック。アリエルは本当に心中だったのか?
殿下と仲の良かったアリエルがそんなことをするとは思えない。」
「アリーは、ずっとヘクターとの恋で悩んでいたらしい。
ヘクターが好きだから、殿下との婚約は断りたかったと話していたようだ。
アリーと仲の良かったヴィオラが打ち明けてくれたよ。」
「ヴィオラ嬢が?」
「ああ……。ヘクターはアリーが体が弱かった頃からずっと側にいて、献身的に支えていた。アリーがヘクターを好きになってもおかしくはない。
それに、アリーは殿下との婚約には前向きではなかったのに、私達家族が強く勧めてしまった。
……アリーが心中したのは私達のせいだ。
私が望まない結婚をしなくてはならないのは、全て家族のせいだとまで話していたようだ。」
アリエルが? ショックだった……
「……エリック、しっかりしろ。」
「私はアリーに合わせる顔がない。
どうすればいいのか……」
エリックと会った日の後日、アリエルが目覚めたと報告を受ける。
その時には、すでに殿下とアリエルの婚約は解消されていた。表向きには急な病気で倒れたということにして。
そして、新しい婚約者候補としてアリエルの義妹のヴィオラ嬢が決まる。バトラー侯爵家の後ろ盾を必要とする王家と、王家との繋がりを望むバトラー侯爵家の利害関係の一致だった。
婚約者ではなく婚約者候補という形になったのは、ヴィオラ嬢は子爵家出身で、高位貴族の令嬢としての教育をあまり受けていないということを王妃殿下が心配したからだった。
王太子妃教育は、高度な教育を受けて育ってきた高位貴族の令嬢ですら大変だという。ヴィオラ嬢の教育の進み具合を見てから、正式に婚約を結びたいという考えらしい。
そこに王太子殿下個人の希望は入っていない。アリエルに裏切られた殿下はずっと塞ぎ込んでいると聞く。
ある日、私は陛下にあることを依頼することにした。
「……オーウェン。それは本気で言っているのか?」
「はい、本気です。アリエル・バトラー侯爵令嬢と婚約したいのです。
彼女は少しずつ回復しているようですが、殿下の元婚約者という立場である彼女の処遇を決めるのは難しいでしょう。領地に生涯軟禁されるのか、バトラー侯爵家の分家にでも嫁がされることになるのか……
それなら、私が彼女と婚約したいと思います。
彼女は優秀で、王太子妃教育を殆ど終わらせていたと聞きます。公爵夫人として問題ないかと。」
「……しかし、彼女は記憶を失っていると聞いているぞ。
公爵夫人が務まるのか?」
「私もそろそろ相手を決めなくてはいけないので、彼女は都合がいいのです。
他に惹かれる令嬢もいませんし、記憶を失っていても、バトラー侯爵家の令嬢で家格的にも問題はないので。
もし彼女の記憶が戻り、王太子妃教育で知った王家の秘密を思い出したとしても、私が夫でしたら何の問題もないかと。」
「……分かった。私からバトラー侯爵に話をしよう。」
「陛下。ありがとうございます。」
自分でも、どうしてここまでアリエルを望んだのか分からない。
彼女に対しての未練はなかったはずだし、記憶喪失になった彼女は別人のようになってしまったと聞いている。しかも彼女は、自分の愛を貫くために家族や王家を裏切ったのだ。
だが、エリックからアリエルの体調が戻ったらすぐに領地に連れて行くという話を聞いた私は、居ても立っても居られなくなってしまった。
陛下はすぐにバトラー侯爵に話をしてくれ、私達は表向きは王命で婚約するということになる。
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