私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります

せいめ

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孤児院からの手紙

 バトラー侯爵家からは相変わらず贈り物が送られてきており、その都度、買取り専門の商人を呼んで引き取ってもらうようにしていたら、かなりの金額になっていた。
 この金額を私が溜め込んでいるとバレたら、周りからどのように思われるか分からないので、自分でとっておく現金を少なめにして、殆どを公爵家の近くの孤児院や教会、修道院に寄付をするようにした。
 するとある日、寄付をしていた孤児院から手紙が届く。その中には孤児院長からのお礼の手紙と一緒に、子供たちが書いた手紙まで入っていた。

〝寄付をしてくれてありがとうございました。
 いつか公爵夫人にお会いできることを楽しみにしています。〟

 慣れない文字を一生懸命に書いてくれたことが伝わる文面で、心が温かくなる。
 その手紙がきっかけとなり、その孤児院がどのような所なのか見てみたいと思った。
 旦那様に行ってもいいか聞いてみようかしら。さっそく、今日の夕食の時にでも話してみましょう。

 旦那様には、夫婦だから体調が悪い時以外の夕食は一緒に食べたいと言われたこともあり、最近は毎日のように夕食時に顔を合わせるようになっていた。

「旦那様にお願いがあります。
 行きたい所があるのですが、外出を許可していただけませんか?」

「アリエルが行きたい所とは教会か?
 一人で行くのは心配だ。私が休みの日に二人で一緒に行かないか?」

 前に教会で王太子殿下に会って気まずい思いをしたから、旦那様は私一人で教会に行くことに反対しているのね。
 心配しなくても、もうあの教会には一人で行かないわよ。

「いえ。孤児院を見に行きたいのです。
 護衛をつけて下さるなら、私一人で大丈夫ですわ」

「そういえば、孤児院から礼状が届いていた。
 バトラー侯爵家からの贈り物を全部寄付しているらしいが、君のために贈ってくれた物なのに良かったのか?」

「ええ。必要な物は旦那様がたくさんプレゼントしてくださるので、私はそれだけで満足しておりますの。
 バトラー侯爵家からの物まで使い切れないので、せっかくなら社会の役に立つようにと寄付をすることにしましたわ」

「そうか、素晴らしい考えだ。では護衛を付けるから気を付けて行ってきなさい」

「旦那様、ありがとうございます」

 やはり、表向きは寄付ということにしていて良かったわ。
 銀行の貸し金庫に現金を貯めていることは内緒にしておきましょう。いつ離縁されてもいいように、お金だけは大事に貯めないといけないもの。
 顔も知らない国王陛下には、私のお金が貯まるまでは退位しないで元気でいて欲しいわね。

 あ……、今気づいたけど離縁後に実家に戻らない私は平民になるのよね。
 大変だわ! 平民として生きていけるように、今から色々調べておかないと。こんなボーっとしていられないわ。

「……アリエル? ……どうした?」

 離縁後のことを考え込んでしまって、私は旦那様の話を上の空で聞いていたようだ。
 こんな時は笑って誤魔化そうかしら。アンナが私の笑顔をよく褒めてくれるから、前よりも笑顔を作ることが苦痛ではなくなってきたのよね。

「いえ。何でもありませんわ。失礼しました」

「……っ!」

「旦那様、どうされました?」

「すまない。結婚してからアリエルが私に笑いかけてくれたのは初めてだったから、つい嬉しくて……」

 そうだったかしら? 精神的に余裕がなかったから全く気付かなかったわ。
 旦那様が冷たくて信用できない人だからと、私も旦那様に対して無愛想になっていたのね。しばらくはこの人の妻でいるのだし、もう少し愛想良くしようかしら。アンナは実家で『女は愛嬌』とか言われて育ったって言ってたわ。

「旦那様……、私は今まで旦那様に対して冷淡な態度をとっていたと思います。大変申し訳ありませんでした。
 これからは心を入れ替えたいと思っております。
 本当に申し訳ありませんでした」

 離縁する時に、旦那様から酷い仕打ちをされたくないから、今は愛想良く従順な妻をしていましょう。

「アリエル……、君は何も悪くない。私が悪いんだ。
 それなのに、君から歩み寄る言葉を掛けてくれるなんて……
 やはりアリエルはあの頃と変わってない。
 私の方こそ、君から愛される夫になれるように心を入れ替えるよ」

 旦那様は真っ直ぐに私を見つめている……

 でも、私の心には何も響いてこなかった。
 この人も自分の都合の良いように私の話を解釈しているのね。
 結婚初夜に『私は君を愛することはないだろう』と言われたのだから、私も貴方を愛するはずがないのよ。
 
 
 

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