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久しぶりの外出
旦那様から許可をもらった私は、さっそく孤児院へ出かけることにした。
記憶喪失になった後は実家の侯爵家から出なかったし、結婚した後は邸の近くにある教会に出掛けるくらいだったので、馬車で三十分の距離にある孤児院へ行くことは、私にとってちょっとした旅行や冒険に行くような感じだった。
「アンナ。王都の街並みは綺麗だったのね!」
「ええ。私も久しぶりに王都に来た時はそう思いましたわ。私の実家も嫁ぎ先も田舎でしたし、王都にタウンハウスを持てるような裕福な家ではありませんでしたから。
この辺りは特に整備されていて美しいと思います」
馬車の窓から見える風景を眺めながらアンナとのお喋りを楽しんでいると、いつの間にか孤児院に到着していた。
先触れを出していたからか、孤児院の入口にはシスターや職員らしき人物たちが待っているのが見える。
「シールズ公爵夫人。本日は孤児院に来て下さってありがとうございます。
また、先日は沢山のご寄付を頂きましたことを深く感謝しております」
挨拶してくれたのは、この孤児院の院長をしているという五十代くらいのシスターだった。
「シスター、ご機嫌よう。
今日は突然お邪魔してごめんなさい。子供たちからの手紙が嬉しくて来てしまいましたわ」
「それを聞いたら子供たちはとても喜びますわ!
子供たちの勉強の励みになるでしょう」
さっそくシスターは、孤児院の中を案内してくれる。建物は新しくはないが、掃除が行き届いて明るい雰囲気だった。
シスターといると色々な子供たちが話しかけてくれる。このシスターは子供たちにとても好かれているようだ。そうでなければ、こんな風に子供たちから寄ってくるはずがない。
「公爵夫人から頂いた寄付金で、新しいテーブルや椅子、カーテンを買いました。
子供たちの服やノート、薬なども購入できましたわ。本当にありがとうございます」
「それは良かったですわ。
他に必要な物はありますか?」
「いえ。沢山いただきましたわ。ありがとうございます」
「何かあれば、何でも言ってください」
「でしたら、ぜひ子供たちと交流していって欲しいのです。
子供たちはみんな公爵夫人を憧れの目で見ていますから、話しかけていただけたらみんな喜びますわ!」
「そうでしょうか?」
私なんかに憧れるはずがないのに……
「ええ。ぜひ子供たちとお喋りをして欲しいですわ」
何を話せばいいのか分からなかったけど、近くにいた女の子に挨拶をしたら、分かりやすく喜んでくれて、それを見た違う子供たちが私に話しかけてくれたりして、子供たちとのお喋りは思った以上に楽しかった。
子供ってこんなに可愛いのね。みんな元気で、見ているだけで私まで明るい気持ちになれる。
お喋りをしているとあっと言う間に時間が過ぎていき、帰る時間になっていた。
「公爵夫人、もう帰ってしまうの?」
「また遊びにきてね!」
「うわーん! 寂しいよぉ。帰らないで」
「公爵夫人。今日はありがとうございました。
子供たちはみんな喜んでいましたわ」
「シスター、また遊びに来てもいいでしょうか?」
私はこの孤児院のシスターと子供たちにまた会いたいと思ってしまった。
「勿論ですわ。いつでもお待ちしております」
それから、週に一度くらいの割合でこの孤児院に来ることが私の楽しみになっていた。
何度か孤児院に遊びに来ていると、色々なことが見えてくる。
人手不足で職員が業務に追われていることや、子供たちの将来への不安に、子供の部屋が足りていないことなど。
職員は掃除や洗濯、食事の準備などの業務を回すのが大変だから、子供たちとじっくり会話をする時間が取れないようだ。
職員の配置を増やせればいいけど、予算の都合上、簡単に決められないのかしら?
余りにも忙しそうなので、私も何か手伝いたいと思い、無理を言って洗濯をさせてもらうことにした。
シスターやアンナからは『公爵夫人に洗濯なんて……』『ドレスが汚れてしまう』とか言われたが、私は旦那様と離縁して平民になった時のために洗濯を覚えておきたいと思ってしまったのだ。
初めてやった洗濯は、当たり前だが上手には出来なかった。水は冷たいし腰は痛くなるし、手はガサガサになってこんなに大変な仕事だということを初めて知った。
アンナも私に付き合ってくれて一緒に洗濯をしたけど、手慣れていてとても上手だった。
さすがアンナ、何でも器用にこなす凄い人なのよね。
でも体を動かして働くことは気持ちがいい。
違う日には、洗濯だけでなく掃除もやらせてもらうことにした。
「奥様。今日は洗濯をして手が荒れてしまったので、湯浴みの後に手をマッサージしてお手入れをします。
ハンドクリームも取り寄せましょうか?」
「ハンドクリームだけど、私の分だけでなく公爵家の使用人たちの分と、孤児院で働く職員の分も取り寄せてもらえるかしら? 勿論、アンナの分もよ。
孤児院に行ってみて気付いたわ。みんなが働いてくれるから、私は何不自由なく暮らせているのよね。
アンナ、いつもありがとう」
「奥様からそんな嬉しい言葉を掛けていただけるなんて……
ありがとうございます。みんな喜びますわ!」
アンナは急ぎでハンドクリームを取り寄せてくれて、公爵家の使用人たちに配ってくれた。
* いつもありがとうございます!
記憶喪失になった後は実家の侯爵家から出なかったし、結婚した後は邸の近くにある教会に出掛けるくらいだったので、馬車で三十分の距離にある孤児院へ行くことは、私にとってちょっとした旅行や冒険に行くような感じだった。
「アンナ。王都の街並みは綺麗だったのね!」
「ええ。私も久しぶりに王都に来た時はそう思いましたわ。私の実家も嫁ぎ先も田舎でしたし、王都にタウンハウスを持てるような裕福な家ではありませんでしたから。
この辺りは特に整備されていて美しいと思います」
馬車の窓から見える風景を眺めながらアンナとのお喋りを楽しんでいると、いつの間にか孤児院に到着していた。
先触れを出していたからか、孤児院の入口にはシスターや職員らしき人物たちが待っているのが見える。
「シールズ公爵夫人。本日は孤児院に来て下さってありがとうございます。
また、先日は沢山のご寄付を頂きましたことを深く感謝しております」
挨拶してくれたのは、この孤児院の院長をしているという五十代くらいのシスターだった。
「シスター、ご機嫌よう。
今日は突然お邪魔してごめんなさい。子供たちからの手紙が嬉しくて来てしまいましたわ」
「それを聞いたら子供たちはとても喜びますわ!
子供たちの勉強の励みになるでしょう」
さっそくシスターは、孤児院の中を案内してくれる。建物は新しくはないが、掃除が行き届いて明るい雰囲気だった。
シスターといると色々な子供たちが話しかけてくれる。このシスターは子供たちにとても好かれているようだ。そうでなければ、こんな風に子供たちから寄ってくるはずがない。
「公爵夫人から頂いた寄付金で、新しいテーブルや椅子、カーテンを買いました。
子供たちの服やノート、薬なども購入できましたわ。本当にありがとうございます」
「それは良かったですわ。
他に必要な物はありますか?」
「いえ。沢山いただきましたわ。ありがとうございます」
「何かあれば、何でも言ってください」
「でしたら、ぜひ子供たちと交流していって欲しいのです。
子供たちはみんな公爵夫人を憧れの目で見ていますから、話しかけていただけたらみんな喜びますわ!」
「そうでしょうか?」
私なんかに憧れるはずがないのに……
「ええ。ぜひ子供たちとお喋りをして欲しいですわ」
何を話せばいいのか分からなかったけど、近くにいた女の子に挨拶をしたら、分かりやすく喜んでくれて、それを見た違う子供たちが私に話しかけてくれたりして、子供たちとのお喋りは思った以上に楽しかった。
子供ってこんなに可愛いのね。みんな元気で、見ているだけで私まで明るい気持ちになれる。
お喋りをしているとあっと言う間に時間が過ぎていき、帰る時間になっていた。
「公爵夫人、もう帰ってしまうの?」
「また遊びにきてね!」
「うわーん! 寂しいよぉ。帰らないで」
「公爵夫人。今日はありがとうございました。
子供たちはみんな喜んでいましたわ」
「シスター、また遊びに来てもいいでしょうか?」
私はこの孤児院のシスターと子供たちにまた会いたいと思ってしまった。
「勿論ですわ。いつでもお待ちしております」
それから、週に一度くらいの割合でこの孤児院に来ることが私の楽しみになっていた。
何度か孤児院に遊びに来ていると、色々なことが見えてくる。
人手不足で職員が業務に追われていることや、子供たちの将来への不安に、子供の部屋が足りていないことなど。
職員は掃除や洗濯、食事の準備などの業務を回すのが大変だから、子供たちとじっくり会話をする時間が取れないようだ。
職員の配置を増やせればいいけど、予算の都合上、簡単に決められないのかしら?
余りにも忙しそうなので、私も何か手伝いたいと思い、無理を言って洗濯をさせてもらうことにした。
シスターやアンナからは『公爵夫人に洗濯なんて……』『ドレスが汚れてしまう』とか言われたが、私は旦那様と離縁して平民になった時のために洗濯を覚えておきたいと思ってしまったのだ。
初めてやった洗濯は、当たり前だが上手には出来なかった。水は冷たいし腰は痛くなるし、手はガサガサになってこんなに大変な仕事だということを初めて知った。
アンナも私に付き合ってくれて一緒に洗濯をしたけど、手慣れていてとても上手だった。
さすがアンナ、何でも器用にこなす凄い人なのよね。
でも体を動かして働くことは気持ちがいい。
違う日には、洗濯だけでなく掃除もやらせてもらうことにした。
「奥様。今日は洗濯をして手が荒れてしまったので、湯浴みの後に手をマッサージしてお手入れをします。
ハンドクリームも取り寄せましょうか?」
「ハンドクリームだけど、私の分だけでなく公爵家の使用人たちの分と、孤児院で働く職員の分も取り寄せてもらえるかしら? 勿論、アンナの分もよ。
孤児院に行ってみて気付いたわ。みんなが働いてくれるから、私は何不自由なく暮らせているのよね。
アンナ、いつもありがとう」
「奥様からそんな嬉しい言葉を掛けていただけるなんて……
ありがとうございます。みんな喜びますわ!」
アンナは急ぎでハンドクリームを取り寄せてくれて、公爵家の使用人たちに配ってくれた。
* いつもありがとうございます!
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