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下品な人達
食事の後、男性方は仕事の話をするからと別室に移動し、私たち女性も部屋を移動してお茶をすることになった。
言い方は悪いが、今日招待されている人たちはみんな地方の弱小貴族ばかりで、滅多に王都には出て来ることがないらしく、私が初めてお会いする人達らしい。(記憶を失っている私に旦那様が教えてくれた)
アンナからは、みんな私に取り入ってやろうと下心を持って近づいてくるだろうから、注意した方がいいと煩く言われている。
地方の弱小貴族だった私が言うのですから間違いないです……と力強く話すアンナは相変わらず面白い。
しかし地方貴族とは言っても、ここにいる夫人方はみんな私よりも年上で、私の両親と同年代に見える。この中で私と年の近い人は夫人と一緒にやってきた令嬢たちくらい。
夫人方は身分が上の私にへつらうような態度を見せているが、私がまだ若い娘だからと軽視しているような態度が見え隠れしている。
私を試しているのかもしれないわね……
夫人方のつまらない話に適当に相槌を打っていると、私が大人しい性格だと思ったのか、一部の夫人方の小賢しい本性が出てくるのが分かった。
そんな中、ある夫人が口を開く。
「公爵夫人は体調を崩しやすいとお聞きしましたわ。
前に毒を盛られたことがあると聞いて、心を痛めておりましたのよ。
体の弱い夫人が公爵家の執務をこなしながら、跡取りを産まなくてはならないなんて……
それに、公爵閣下はまだお若いから夜の方も大変でしょうね」
クスクス……
あの方は確かスローン子爵夫人だったかしら。
閨の話をしてくるなんて下品だし、その話を聞いて笑っている夫人たちもどうしようもないわ。
呆れて言葉を失っていると、スローン子爵夫人は私には何を言っても言い返せないから大丈夫だと判断したらしい。
「もしよければ、うちの娘を公爵閣下の愛妾にしてはいかがでしょう?
体は丈夫ですし、公爵閣下とはお互いよく知る者同士です。幼い頃は仲良く遊ぶ仲だったので公爵閣下を上手くお支えできると思います。
夫人の邪魔は絶対に致しませんわ!」
夫人の隣に座っている令嬢はニコッと私に笑顔を向ける。令嬢も愛妾になることを希望しているらしい。
ハァー。アンナは流石だわ。地方の弱小貴族は平気で娘を愛妾に勧めてくる者もいるから気をつけろって言っていたわね。アンナには後でご褒美をあげましょうか……
「スローン子爵夫人の考えは理解いたしました」
「まあ! 夫人は認めてくださるのですか?」
私の言葉を聞いた夫人の声のトーンが上がる。
考えを理解したと言っただけで、認めるとは一言も言っていないのに……
夫人はそんな私の考えも知らずに、話してみるものだわとでも言いたげな顔で令嬢と視線を合わせている。
その小賢しい親子を見て私は声を上げた。
「アンナ、旦那様を今すぐに呼んでくれるかしら?」
「奥様、畏まりました」
その瞬間、『えっ?』という声が上がる。男性たちで大切な仕事の話をしている時に、旦那様を呼ぶなんて非常識だと思ったのだろう。しかし旦那様からは何かあればすぐに駆けつけると言われていたから、遠慮なく呼ぶことにした。
「アリエル、どうしたんだ?」
何も知らずに呼ばれてきた旦那様は、私に優しく声を掛けてくれる。
「旦那様。私は体の弱い欠陥品の妻だと思われていたようです」
「アリエル、何を言っているんだ?
そんな風に思うわけないだろう!」
「毒を盛られ、体調を崩しやすい私が公爵夫人としての務めを果たすのは大変だろうと言われましたわ。
まだお若い旦那様をお慰めするために、スローン子爵令嬢が旦那様の愛妾になりたいそうです。
シールズ公爵家の親戚の方々に、私は公爵夫人として認められていないようですわ。
公爵家の親族から認められない私は妻失格です……
私はこの結婚を命じた国王陛下に謝罪の手紙を書きたいと思っております」
「私はそんなつもりで言ったのではありませんわ!」
顔色を悪くしたスローン子爵夫人が、声を張り上げて否定している。
旦那様はその話を聞いた瞬間、スローン子爵夫人と令嬢を睨みつけていた。
旦那様の冷たい顔は結婚する前に沢山見てきたけど、怒った顔を見たのは初めてのことだった。
「ひっ!」
「大切な妻を侮辱しただけでなく、新婚である私たちに愛妾を持つことを勧めただと?
スローン子爵家は、国王陛下の決めた婚姻に横槍を入れるのだな。このことは私から陛下に報告させてもらう。
スローン子爵家とは今日をもって、親族の縁を切ることにする。今すぐここから立ち去るように!」
「誤解でございます。夫人は勘違いさなっていますわ!」
「私は妻を信じている。妻を侮辱されて黙っていることは出来ない。
早く出て行くといい! 出ていかぬなら、騎士を呼ぶ」
旦那様は夫として妻を庇ってくれたようだ。
下品な会話は控えるようにと注意をしてくれることを期待して呼んだのに、ここまで怒りをあらわにして抗議してくれるなんて……。なんだか嬉しい気持ちになってしまった。
スローン子爵夫人と令嬢が帰った後のお茶会は、つまらない話をしてくる者がいなくなったので、穏やかな気持ちで過ごすことが出来た。
これで今後は親族の人たちに侮られないでしょう。
旦那様には感謝しないといけないわね。
言い方は悪いが、今日招待されている人たちはみんな地方の弱小貴族ばかりで、滅多に王都には出て来ることがないらしく、私が初めてお会いする人達らしい。(記憶を失っている私に旦那様が教えてくれた)
アンナからは、みんな私に取り入ってやろうと下心を持って近づいてくるだろうから、注意した方がいいと煩く言われている。
地方の弱小貴族だった私が言うのですから間違いないです……と力強く話すアンナは相変わらず面白い。
しかし地方貴族とは言っても、ここにいる夫人方はみんな私よりも年上で、私の両親と同年代に見える。この中で私と年の近い人は夫人と一緒にやってきた令嬢たちくらい。
夫人方は身分が上の私にへつらうような態度を見せているが、私がまだ若い娘だからと軽視しているような態度が見え隠れしている。
私を試しているのかもしれないわね……
夫人方のつまらない話に適当に相槌を打っていると、私が大人しい性格だと思ったのか、一部の夫人方の小賢しい本性が出てくるのが分かった。
そんな中、ある夫人が口を開く。
「公爵夫人は体調を崩しやすいとお聞きしましたわ。
前に毒を盛られたことがあると聞いて、心を痛めておりましたのよ。
体の弱い夫人が公爵家の執務をこなしながら、跡取りを産まなくてはならないなんて……
それに、公爵閣下はまだお若いから夜の方も大変でしょうね」
クスクス……
あの方は確かスローン子爵夫人だったかしら。
閨の話をしてくるなんて下品だし、その話を聞いて笑っている夫人たちもどうしようもないわ。
呆れて言葉を失っていると、スローン子爵夫人は私には何を言っても言い返せないから大丈夫だと判断したらしい。
「もしよければ、うちの娘を公爵閣下の愛妾にしてはいかがでしょう?
体は丈夫ですし、公爵閣下とはお互いよく知る者同士です。幼い頃は仲良く遊ぶ仲だったので公爵閣下を上手くお支えできると思います。
夫人の邪魔は絶対に致しませんわ!」
夫人の隣に座っている令嬢はニコッと私に笑顔を向ける。令嬢も愛妾になることを希望しているらしい。
ハァー。アンナは流石だわ。地方の弱小貴族は平気で娘を愛妾に勧めてくる者もいるから気をつけろって言っていたわね。アンナには後でご褒美をあげましょうか……
「スローン子爵夫人の考えは理解いたしました」
「まあ! 夫人は認めてくださるのですか?」
私の言葉を聞いた夫人の声のトーンが上がる。
考えを理解したと言っただけで、認めるとは一言も言っていないのに……
夫人はそんな私の考えも知らずに、話してみるものだわとでも言いたげな顔で令嬢と視線を合わせている。
その小賢しい親子を見て私は声を上げた。
「アンナ、旦那様を今すぐに呼んでくれるかしら?」
「奥様、畏まりました」
その瞬間、『えっ?』という声が上がる。男性たちで大切な仕事の話をしている時に、旦那様を呼ぶなんて非常識だと思ったのだろう。しかし旦那様からは何かあればすぐに駆けつけると言われていたから、遠慮なく呼ぶことにした。
「アリエル、どうしたんだ?」
何も知らずに呼ばれてきた旦那様は、私に優しく声を掛けてくれる。
「旦那様。私は体の弱い欠陥品の妻だと思われていたようです」
「アリエル、何を言っているんだ?
そんな風に思うわけないだろう!」
「毒を盛られ、体調を崩しやすい私が公爵夫人としての務めを果たすのは大変だろうと言われましたわ。
まだお若い旦那様をお慰めするために、スローン子爵令嬢が旦那様の愛妾になりたいそうです。
シールズ公爵家の親戚の方々に、私は公爵夫人として認められていないようですわ。
公爵家の親族から認められない私は妻失格です……
私はこの結婚を命じた国王陛下に謝罪の手紙を書きたいと思っております」
「私はそんなつもりで言ったのではありませんわ!」
顔色を悪くしたスローン子爵夫人が、声を張り上げて否定している。
旦那様はその話を聞いた瞬間、スローン子爵夫人と令嬢を睨みつけていた。
旦那様の冷たい顔は結婚する前に沢山見てきたけど、怒った顔を見たのは初めてのことだった。
「ひっ!」
「大切な妻を侮辱しただけでなく、新婚である私たちに愛妾を持つことを勧めただと?
スローン子爵家は、国王陛下の決めた婚姻に横槍を入れるのだな。このことは私から陛下に報告させてもらう。
スローン子爵家とは今日をもって、親族の縁を切ることにする。今すぐここから立ち去るように!」
「誤解でございます。夫人は勘違いさなっていますわ!」
「私は妻を信じている。妻を侮辱されて黙っていることは出来ない。
早く出て行くといい! 出ていかぬなら、騎士を呼ぶ」
旦那様は夫として妻を庇ってくれたようだ。
下品な会話は控えるようにと注意をしてくれることを期待して呼んだのに、ここまで怒りをあらわにして抗議してくれるなんて……。なんだか嬉しい気持ちになってしまった。
スローン子爵夫人と令嬢が帰った後のお茶会は、つまらない話をしてくる者がいなくなったので、穏やかな気持ちで過ごすことが出来た。
これで今後は親族の人たちに侮られないでしょう。
旦那様には感謝しないといけないわね。
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