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閑話 シールズ公爵
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アリエルの濡れ衣を晴らすことができた私は、彼女が少しでも前向きになれればいいと思っていた。
今後は夫婦仲良く、二人で穏やかに生きていきたいと思っていたのだが……
「公爵閣下。奥様はいつもの教会に出掛けたのですが、そこに王太子殿下が来られまして、二人きりで何かを話されていました。
その後の奥様ですが、体調が悪そうになさっておりました」
王宮で執務をしていると、アリエルに付けていた護衛が来て、殿下が彼女に接触してきたことを報告してくる。
実のところ、殿下からはアリエルと面会がしたいと言われていたが、私は彼女の体調不良を理由にずっと断っていた。
殿下はアリエルが教会に行っていることを知り、無理に接触したのだろう。
心配になった私は仕事を早退して、すぐにアリエルの所に向かうことにした。
慌てて帰った私を見たアリエルはとても驚いた顔をしていたが、私が心配して帰ってきたことを話すと、殿下と何を話したのかを私に教えてくれたのだった。
殿下はアリエルに、離縁を望むのなら何とかしてやろうと話していたらしい。
せっかく掴んだ穏やかな日々を壊そうとする殿下には失望した。怒りが込み上げてくるのを何とか我慢する。
だがアリエルは、殿下の存在をあまり気にしていないような口調で、私との離縁を望んでいないと言ってくれる。
アリエルは私と同じ気持ちでいてくれたのかと思うと嬉しい気持ちになれた。しかし、その後に彼女が口にした言葉に唖然とする。
アリエルが離縁したくないのは、バトラー侯爵家に帰りたくないという理由のようだ。
そして……
「旦那様が離縁を望むのなら私は出て行きますが、私が妻でいることを許して下さるなら、お飾りの妻でいいのでここに置いて下さい」
アリエルは自分をお飾りの妻だと言い、王命で仕方なく結婚した愛のない夫婦だと考えているようだ。
そんな彼女に私は、お飾りの妻だと思ったことは一度もないこと、大切な妻だと思っていることを必死に伝えるのだが、彼女は私を信用していないのか反応が今一つだった。
記憶喪失になった彼女にとっての私は、婚約者の頃には冷遇し、初夜の時には酷い態度をとった最低な男でしかない。そんな私を夫として受け入れることは難しいのかもしれないと思った。
翌日、私は王太子殿下の執務室に来ている。
「シールズ公爵、来ると思っていた……
昨日は偶然立ち寄った教会で夫人に会ったよ。
記憶喪失とは本当のようだな。彼女は私を怯えた目で見ていた。
あんなに愛し合った、かつての婚約者である私のことを忘れてしまうなんて……
愛し合う私達を引き裂いたあの死んだ男と、アリーの義妹だった悪女を呪いたくなったよ」
殿下は笑顔で話をしているように見えて、目は笑っていなかった。
「殿下、妻を心配して下さるのは大変有り難く思います。しかしアリエルは私の妻です。彼女のことは私にお任せ下さい。
たとえ以前の彼女が殿下と愛し合ったとしても、今は私の妻なのですから」
「公爵は意外なことを言うな。
アリーと婚約中の公爵は、彼女とまともな会話すらしていなかったと聞いているぞ。婚約者だからと仕方なく数回会っただけで、ぞんざいに扱っていたとな。
まあ、アリーのいわれのない罪を晴らしてくれたことには感謝しているが……
公爵は、バトラー侯爵家なら家柄が釣り合うし、アリーがいい縁談避けになってくれるからと結婚しただけだろう?
それなら……、私に返してもらえないか? 私はアリーを愛しているんだ。
公爵には、別にいい令嬢を探してやろう。
私にはアリーだけなんだ」
確かに私はアリエルをぞんざいに扱った。その結果、彼女からは未だに信頼を得てないし、私を見る目はどこか冷めている。
しかし殿下だって、あの悪女に騙されて何も出来なかったではないか。
私の妻なのに、わざとらしく『アリー』と愛称で呼ぶのも許せなかった。
「殿下、私の妻を愛称で呼ぶのはやめて頂きたい。
アリエルと殿下が主君と臣下以上の関係であると思われ、悪く言われるのは力のない私の妻の方なのです。
私もアリエルも離縁は望んでおりません。
昨日、アリエルは殿下と話をしたことを夫である私に報告してくれましたよ。アリエルは離縁はしたくないとハッキリ言っておりました。
離縁を望まぬ夫婦を、無理に引き裂くようなことはなさらぬようお願い致します。どうかご理解下さい」
「今はそうでも、彼女の記憶が戻ったら分からないぞ。
それに、昨日会った彼女は幸せそうには見えなかった。
仮初の夫婦生活を楽しむがいい……」
「……っ! 失礼します」
今後は夫婦仲良く、二人で穏やかに生きていきたいと思っていたのだが……
「公爵閣下。奥様はいつもの教会に出掛けたのですが、そこに王太子殿下が来られまして、二人きりで何かを話されていました。
その後の奥様ですが、体調が悪そうになさっておりました」
王宮で執務をしていると、アリエルに付けていた護衛が来て、殿下が彼女に接触してきたことを報告してくる。
実のところ、殿下からはアリエルと面会がしたいと言われていたが、私は彼女の体調不良を理由にずっと断っていた。
殿下はアリエルが教会に行っていることを知り、無理に接触したのだろう。
心配になった私は仕事を早退して、すぐにアリエルの所に向かうことにした。
慌てて帰った私を見たアリエルはとても驚いた顔をしていたが、私が心配して帰ってきたことを話すと、殿下と何を話したのかを私に教えてくれたのだった。
殿下はアリエルに、離縁を望むのなら何とかしてやろうと話していたらしい。
せっかく掴んだ穏やかな日々を壊そうとする殿下には失望した。怒りが込み上げてくるのを何とか我慢する。
だがアリエルは、殿下の存在をあまり気にしていないような口調で、私との離縁を望んでいないと言ってくれる。
アリエルは私と同じ気持ちでいてくれたのかと思うと嬉しい気持ちになれた。しかし、その後に彼女が口にした言葉に唖然とする。
アリエルが離縁したくないのは、バトラー侯爵家に帰りたくないという理由のようだ。
そして……
「旦那様が離縁を望むのなら私は出て行きますが、私が妻でいることを許して下さるなら、お飾りの妻でいいのでここに置いて下さい」
アリエルは自分をお飾りの妻だと言い、王命で仕方なく結婚した愛のない夫婦だと考えているようだ。
そんな彼女に私は、お飾りの妻だと思ったことは一度もないこと、大切な妻だと思っていることを必死に伝えるのだが、彼女は私を信用していないのか反応が今一つだった。
記憶喪失になった彼女にとっての私は、婚約者の頃には冷遇し、初夜の時には酷い態度をとった最低な男でしかない。そんな私を夫として受け入れることは難しいのかもしれないと思った。
翌日、私は王太子殿下の執務室に来ている。
「シールズ公爵、来ると思っていた……
昨日は偶然立ち寄った教会で夫人に会ったよ。
記憶喪失とは本当のようだな。彼女は私を怯えた目で見ていた。
あんなに愛し合った、かつての婚約者である私のことを忘れてしまうなんて……
愛し合う私達を引き裂いたあの死んだ男と、アリーの義妹だった悪女を呪いたくなったよ」
殿下は笑顔で話をしているように見えて、目は笑っていなかった。
「殿下、妻を心配して下さるのは大変有り難く思います。しかしアリエルは私の妻です。彼女のことは私にお任せ下さい。
たとえ以前の彼女が殿下と愛し合ったとしても、今は私の妻なのですから」
「公爵は意外なことを言うな。
アリーと婚約中の公爵は、彼女とまともな会話すらしていなかったと聞いているぞ。婚約者だからと仕方なく数回会っただけで、ぞんざいに扱っていたとな。
まあ、アリーのいわれのない罪を晴らしてくれたことには感謝しているが……
公爵は、バトラー侯爵家なら家柄が釣り合うし、アリーがいい縁談避けになってくれるからと結婚しただけだろう?
それなら……、私に返してもらえないか? 私はアリーを愛しているんだ。
公爵には、別にいい令嬢を探してやろう。
私にはアリーだけなんだ」
確かに私はアリエルをぞんざいに扱った。その結果、彼女からは未だに信頼を得てないし、私を見る目はどこか冷めている。
しかし殿下だって、あの悪女に騙されて何も出来なかったではないか。
私の妻なのに、わざとらしく『アリー』と愛称で呼ぶのも許せなかった。
「殿下、私の妻を愛称で呼ぶのはやめて頂きたい。
アリエルと殿下が主君と臣下以上の関係であると思われ、悪く言われるのは力のない私の妻の方なのです。
私もアリエルも離縁は望んでおりません。
昨日、アリエルは殿下と話をしたことを夫である私に報告してくれましたよ。アリエルは離縁はしたくないとハッキリ言っておりました。
離縁を望まぬ夫婦を、無理に引き裂くようなことはなさらぬようお願い致します。どうかご理解下さい」
「今はそうでも、彼女の記憶が戻ったら分からないぞ。
それに、昨日会った彼女は幸せそうには見えなかった。
仮初の夫婦生活を楽しむがいい……」
「……っ! 失礼します」
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