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閑話 シールズ公爵
殿下と話をした後日、私はアリエルの兄のエリックと会う約束をしていた。
殿下がアリエルに接触した日、『殿下は私たちの離縁についてバトラー侯爵家と何かを話しているのかもしれません』と彼女が言っていたことが気になっていたからだ。
エリックとは時々、王宮で顔を合わせることはあったが、こうやって呼び出して二人で話をするのは久しぶりのことだった。
「オーウェン、今日はどうした?
アリエルに何かあったか?」
「エリック、王太子殿下がアリエルに無理に接触してきたようだ。
それで離縁の話をしてきたらしい。
お前、そのことで何か知っていることはあるか?」
私がその話を振ると、エリックの表情がこわばるのが分かった。
「その話か……
実は、少し前に殿下と話をする機会があったんだが……、殿下はまだアリエルを愛しているとおっしゃっていた。
記憶を失う前のアリーも殿下を愛していたらしい。もし許されるなら、私達は殿下とアリーには元に戻って欲しいと思っている。
殿下が言うには、今のアリーは正妃は無理だが側妃としてなら迎えることができるようだ」
やはりアリエルの言う通り、殿下とバトラー侯爵家は繋がっていたらしい。
「私達家族は、アリーには心から愛してくれる人の伴侶になって欲しいと思っている。
オーウェンは……、ただ王命で結婚しただけだろう?
私達は王命だからと都合よくアリーを押しつけてしまったことを申し訳なく思っている。でも、この結婚に愛はないよな? だったら離縁を考えてくれないか?
アリーの記憶が戻って、殿下を愛していたことを思い出した時、オーウェンだってつらいと思うんだ。
答えは今すぐでなくても構わない。幼馴染のお前を振り回すようなことを言って申し訳ない……」
その後、エリックと何を話したのかの記憶が曖昧だった。
殿下だけでなく、アリエルの実家のバトラー侯爵家も離縁を望んでいるということを知り、胸が抉られたように痛む。
王命という力を都合よく利用して結婚したことで、こんな簡単に離縁を頼まれるほど、気薄な夫婦関係に見られているということか……
あんな形での始まりだったとはいえ、これからはアリエルの夫として妻を大切にしていこうと決めたのに。
しかし、エリックの話を聞いてショックは受けたものの、離縁をしたいとは思わなかった。
アリエルが離縁を望んでいないのだから、私は夫として彼女を守っていきたい。
この話はすぐに国王陛下に報告し、私達は離縁を望んでいないことを伝えておいた。陛下は当事者が望まない離縁の話を進めることは絶対にしないと言ってくれる。
今の私に出来ることは、アリエルとの関係を改善していくこと。彼女から夫として認めてもらえるように努力していこう。
そんな私は陛下から長期の休みをもらえることになり、アリエルと一緒に領地に行くことになる。
二人で出掛けることも、長時間を二人一緒に過ごすことも初めてのことで少し緊張してしまったが、彼女と一緒に過ごす時間は心地の良いものだった。
長時間の馬車の移動でアリエルが馬車酔いをしてしまったり、普段は別々に寝ていた私達の寝室が一緒だったりと思いがけない出来事はあったが、彼女と二人で領地で過ごせたことはとても嬉しかった。
しかし、あることがきっかけで私は激昂することになる。
それは領地の近くに住む親族に、アリエルを紹介するために開いた食事会での出来事だった。
親族とは言っても、昔からの付き合いが何となく続いてきただけの関係で、全員と仲が良いわけではない。公爵である私に取り入ってやろうと媚を売る者や、自分の娘を私の妻にと勧めてきたりする者もいたりして、不愉快な者もたくさんいる。きっとその者たちの中には、若くておっとりとした性格のアリエルを見下す者もいたりするだろうと予想はしていた。
だから、食事会の席やその後の夫人だけの茶会には、信用の出来る使用人と騎士を配置していたのだが、まさかその場で体の弱いアリエルをバカにして、新婚である私達に娘を愛妾にと勧める者がいるとは……
アリエルから事情を聞いた私は、スローン子爵夫人と令嬢にその場で親族としての縁切りを宣言した。
更にその後、別室にいた子爵には縁切りと事業の取引をやめることを告げた。
「閣下。そこまでご立腹なさるということは、よほど奥様を愛しておられるのですね」
それは子供の頃からの付き合いで、お互いをよく知る家令が何気なく言った一言だった。
この怒りは愛する妻を侮辱されたからだったのか……
あの女からアリエルが妊娠しているかもしれないと聞いた時、急いで結婚してお腹の子供を自分の子として育てたいと思ったのも、私が彼女を愛していたから……
王太子殿下がアリエルに接触したことを不愉快に感じたことも、バトラー侯爵家が私達の離縁を望んでいることを知りショックを受けたことも、私はアリエルを愛しているから……
その時になって、やっと私は彼女への気持ちに気付いたのであった。
殿下がアリエルに接触した日、『殿下は私たちの離縁についてバトラー侯爵家と何かを話しているのかもしれません』と彼女が言っていたことが気になっていたからだ。
エリックとは時々、王宮で顔を合わせることはあったが、こうやって呼び出して二人で話をするのは久しぶりのことだった。
「オーウェン、今日はどうした?
アリエルに何かあったか?」
「エリック、王太子殿下がアリエルに無理に接触してきたようだ。
それで離縁の話をしてきたらしい。
お前、そのことで何か知っていることはあるか?」
私がその話を振ると、エリックの表情がこわばるのが分かった。
「その話か……
実は、少し前に殿下と話をする機会があったんだが……、殿下はまだアリエルを愛しているとおっしゃっていた。
記憶を失う前のアリーも殿下を愛していたらしい。もし許されるなら、私達は殿下とアリーには元に戻って欲しいと思っている。
殿下が言うには、今のアリーは正妃は無理だが側妃としてなら迎えることができるようだ」
やはりアリエルの言う通り、殿下とバトラー侯爵家は繋がっていたらしい。
「私達家族は、アリーには心から愛してくれる人の伴侶になって欲しいと思っている。
オーウェンは……、ただ王命で結婚しただけだろう?
私達は王命だからと都合よくアリーを押しつけてしまったことを申し訳なく思っている。でも、この結婚に愛はないよな? だったら離縁を考えてくれないか?
アリーの記憶が戻って、殿下を愛していたことを思い出した時、オーウェンだってつらいと思うんだ。
答えは今すぐでなくても構わない。幼馴染のお前を振り回すようなことを言って申し訳ない……」
その後、エリックと何を話したのかの記憶が曖昧だった。
殿下だけでなく、アリエルの実家のバトラー侯爵家も離縁を望んでいるということを知り、胸が抉られたように痛む。
王命という力を都合よく利用して結婚したことで、こんな簡単に離縁を頼まれるほど、気薄な夫婦関係に見られているということか……
あんな形での始まりだったとはいえ、これからはアリエルの夫として妻を大切にしていこうと決めたのに。
しかし、エリックの話を聞いてショックは受けたものの、離縁をしたいとは思わなかった。
アリエルが離縁を望んでいないのだから、私は夫として彼女を守っていきたい。
この話はすぐに国王陛下に報告し、私達は離縁を望んでいないことを伝えておいた。陛下は当事者が望まない離縁の話を進めることは絶対にしないと言ってくれる。
今の私に出来ることは、アリエルとの関係を改善していくこと。彼女から夫として認めてもらえるように努力していこう。
そんな私は陛下から長期の休みをもらえることになり、アリエルと一緒に領地に行くことになる。
二人で出掛けることも、長時間を二人一緒に過ごすことも初めてのことで少し緊張してしまったが、彼女と一緒に過ごす時間は心地の良いものだった。
長時間の馬車の移動でアリエルが馬車酔いをしてしまったり、普段は別々に寝ていた私達の寝室が一緒だったりと思いがけない出来事はあったが、彼女と二人で領地で過ごせたことはとても嬉しかった。
しかし、あることがきっかけで私は激昂することになる。
それは領地の近くに住む親族に、アリエルを紹介するために開いた食事会での出来事だった。
親族とは言っても、昔からの付き合いが何となく続いてきただけの関係で、全員と仲が良いわけではない。公爵である私に取り入ってやろうと媚を売る者や、自分の娘を私の妻にと勧めてきたりする者もいたりして、不愉快な者もたくさんいる。きっとその者たちの中には、若くておっとりとした性格のアリエルを見下す者もいたりするだろうと予想はしていた。
だから、食事会の席やその後の夫人だけの茶会には、信用の出来る使用人と騎士を配置していたのだが、まさかその場で体の弱いアリエルをバカにして、新婚である私達に娘を愛妾にと勧める者がいるとは……
アリエルから事情を聞いた私は、スローン子爵夫人と令嬢にその場で親族としての縁切りを宣言した。
更にその後、別室にいた子爵には縁切りと事業の取引をやめることを告げた。
「閣下。そこまでご立腹なさるということは、よほど奥様を愛しておられるのですね」
それは子供の頃からの付き合いで、お互いをよく知る家令が何気なく言った一言だった。
この怒りは愛する妻を侮辱されたからだったのか……
あの女からアリエルが妊娠しているかもしれないと聞いた時、急いで結婚してお腹の子供を自分の子として育てたいと思ったのも、私が彼女を愛していたから……
王太子殿下がアリエルに接触したことを不愉快に感じたことも、バトラー侯爵家が私達の離縁を望んでいることを知りショックを受けたことも、私はアリエルを愛しているから……
その時になって、やっと私は彼女への気持ちに気付いたのであった。
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