私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります

せいめ

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王妃殿下のお茶会

 旦那様から愛を伝えられて複雑な気持ちになっていた私は、表向きは普通にして過ごしていた。
 時々、ふと旦那様から言われたことを思い出してしまい、胸の中がズキズキと痛むことがある。
 この気持ちは何だろう……

 気がつくと日々は過ぎていき、王妃殿下のお茶会の日を迎えていた。

「アリエル、久しぶりね。
 しばらく臥せっていたと聞いていたから心配していたのよ。
 でも、この前の陛下のパーティーで美しく踊るアリエルを見たら、ぜひお茶会に招待してゆっくり話がしたいと思ったの。来てくれて嬉しいわ」

 年齢不詳の華やかな美女が私にニッコリ微笑んでいる。この方が我が国の王妃殿下……

「王妃殿下。本日はご招待いただき……」

「アリエル、今日は私達だけのお茶会なの。
 堅苦しい挨拶は必要ないわ。早く座ってちょうだいな。
 今日はアリエルの好きなものを沢山用意したのよ」

 王妃殿下は私に気さくに声を掛け、椅子に座るように促してくれる。

「ありがとうございます。失礼致します」

 私が椅子に座ると、お茶やスイーツなど、テーブルがいっぱいになるほど運ばれてきた。

「アリエルが好きだった紅茶を取り寄せたわ。
 ジリン国の新茶よ。沢山取り寄せたから、お土産に持って帰りなさいね」

「王妃殿下、ありがとうございます」

 記憶喪失になる前の私が好きだった紅茶やスイーツを王妃殿下は覚えていてくれたようだ。
 今、テーブルに並んでいる物がかつての私が好きだった食べ物らしい。自分自身のことなのに、何も知らなすぎて不思議な気分になる。

 旦那様は私と王妃殿下が良好な関係だったと話していたけど、王妃殿下や侍女たちの雰囲気を見るとそれは本当のようだった。私への態度が柔らかいし、みんな優しい目で私を見ているように感じる。
 私が覚えていないだけで、前もこうやってお茶をご一緒させていただいたのかもしれない。

 王妃殿下は、沢山あるスイーツの中から、特に私が好きだったというスイーツを数種類お皿に取り分けてくれる。
 そして王妃殿下の私生活の話をしてくれて、その場を和ませてくれた。

「アリエル、貴女は本当に記憶喪失なのね……
 ここで何度もお茶会をしたのに、あなたはこの場所を覚えていないようだし、私に対しても初対面の人物に向けるような目で見ているから、何だか寂しく感じてしまったわ」

「申し訳ありません……」

「謝らなくていいのよ。貴女は何も悪くないの。
 貴女を守ることも助けることも出来なかった私達の方が悪いわ。
 ところでアリエル……、貴女は今、幸せにしているの?
 シールズ公爵は貴女を大切にしてくれているのかしら?」

 聞かれると思っていた……

「王妃殿下。私は今の生活に満足しております。
 毒から目覚めたばかりの頃は、自分がなぜ生きているのか分からずに不幸だと思っていましたが、今は夫が私を大切にしてくれてますので、毎日幸せだと思っておりますわ。
 夫と結婚出来て良かったと思っておりますし、このようなご縁を繋いで下さった国王陛下には感謝しております」

 旦那様と離縁したくない私は、この結婚が幸せだということをアピールすることに決めていた。

「それは本当に思っていることなの?
 貴女さえ望めば離縁が出来るように私が協力するわよ。
 バトラー侯爵と夫人は、いつでも帰って来ていいと話していたし、バトラー侯爵家に戻るのが嫌なら、私の実家で貴女を引き取ってもらうことも出来るわ。
 今日もこのままバトラー侯爵家に帰ってもいいのよ?」

 王妃様の実家って、確か公爵家よね?
 バトラー侯爵家に戻りたくないけど、王妃様の実家にも行きたくない。
 丁重にお断りしないと……
 
「王妃殿下のご配慮に感謝致します。
 しかし私は大丈夫ですわ。シールズ公爵家にこのまま居たいと思っています。
 夫と離縁はしたくありません」

「……それは本当かしら?
 無理をしてるのではなくて?」

「無理はしておりません。
 今の穏やかな毎日を気に入っているのです」

 すると王妃殿下がため息をついている。

「本人が離縁を望まないのなら、周りが何を言っても無理よね……」

「王妃殿下……?」

「アリエル。貴女の元婚約者である私の息子は、まだ貴女を諦めることが出来てないのよ。
 この後、あの子と話をしてあげて欲しいの」

「話ですか?」

「そうなの。ここに来ることになっているから、貴女の気持ちを話してあげて」

 王太子殿下がここに来ると聞いて、嫌な予感がしてきた。


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