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旦那様の気持ち
「アリエル。私はサインしたから後は君がサインするだけだ」
笑顔でペンを渡してくる旦那様。思わず弁護士の先生を見つめてしまう。
「奥様。公爵閣下にこのような契約書を作らせるなんて、本当に愛されてますね」
弁護士の先生は私達を見てニコニコしている。
そんな表情で見られるほど、私達は仲が良さそうに見えたのかしら。
「先生、このような契約書は本当に必要なのでしょうか?」
「珍しいものではありませんよ。ただ、他の方々は結婚する前に契約を交わすことが多いですが……」
「アリエル。ほら、サインを!」
「奥様。これは奥様には利益しかない契約です。
公爵閣下の深い愛情の表れでもあると思います。
サインされてはいかがでしょうか?」
「……分かりました」
とても迷ったが、結局私は契約書にサインをしてしまった。
弁護士の先生が帰った後、私は旦那様と二人きりでお茶をしている。
「旦那様、本当に良かったのでしょうか?」
「こんなことで君からすぐに信頼してもらえるとは思っていない。
しかし、今の私に出来ることはこれくらいしかないんだ……」
すると旦那様は無言で立ち上がり、私の前で跪くと、真っ直ぐに見つめて手を握ってくる。
そして……
「アリエル。あのような形での結婚だったから、私は君にきちんとプロポーズが出来なかった。
だから……、今から君に私の気持ちを聞いて欲しい」
「旦那様の気持ちですか?」
「そうだ。……私は幼馴染の妹だったアリエルがずっと好きだった。
しかし君は殿下の婚約者になってしまったから、私は仕方なく諦めることにした。
だが、殿下と君が婚約解消になったと聞いた私は、適当な理由をつけて国王陛下に君と婚約させて欲しいと頼んだ。そのことがあって、私達の結婚は表向きは王命ということになっている。
自分では自覚していなかったが、私はずっと君を愛していた。
君に酷い態度をとった過去は消えないと思うが、これから私の一生をかけて償っていきたい。
アリエルだけを愛している。私と本当の家族になってくれないか?」
旦那様の告白を聞き、胸がまたドクドクしてきた。
王命だと言われていたこの結婚は、旦那様が望んでくれたものだなんて信じられなかった。
それなら、どうしてそのことを婚約した時に言ってくれなかったのかしら?
あの時、旦那様は私を嫌っているようにしか見えなかったから何も期待をしていなかったけれど、それなりに傷付いた。今更こんなことを言われて、多少の怒りと悲しみのようなものを感じる。
でも……、正直に打ち明けてくれたことは嬉しい。
今の私は心の中に色々な感情が入り混ざっているけど、旦那様と家族になりたいと思ってしまった。
「旦那様……、正直に話して下さったことは嬉しく思います。
しかし婚約した頃の旦那様の態度に傷付いた私としては、怒りや悲しみもあるのです。
あの辛かった日々のことや、家族や旦那様に冷遇されたことは忘れることは出来ないでしょう。
でも、このままの自分でいることは嫌だと思っています。
私と真剣に向き合ってくれる旦那様と一緒に前に進んでいきたいですわ。
愛するという感情はよく分かりませんが、私も旦那様と本当の家族になりたいです」
「アリエル……、ありがとう。
君からの愛は求めない。私と一緒に前に進みたいと思ってくれるだけで私は嬉しいんだ。
これからは君と二人で幸せになりたいと思っている。一生、大切にするよ」
「はい……。よろしくお願い致します」
私の返事を聞いて、安堵の表情を浮かべた旦那様の手は温かかった。
その日から、旦那様と一緒の寝室を使うことになる。
夫婦なのだから、邸にいる時は一緒にいたいという旦那様の希望だった。
その日の夜……
「奥様、今日から旦那様と一緒に休まれるのですから、ナイトドレスはいつもより凝ったデザインの物にしましょうね」
「アンナ、いつものでいいわよ」
「いえ。もうご用意してしまいましたので」
湯浴みの後に着せられたナイトドレスは……
「アンナ、このナイトドレスでは冷えそうだわ」
「旦那様に温めて貰えば大丈夫です」
「……」
自信満々にそんなことを言わなくても……
寝室に行くと、すでに旦那様が待っていてくれた。
この部屋に来るのは、あの初夜の日以来だ。あの時とは違った緊張感のようなものがある。
「アリエル。私は初夜の時に、君を深く傷付けたことを後悔しているんだ。だから今すぐ無理に君を抱くつもりはない。
アリエルが私を本当に受け入れてくれるまで待つつもりだ。
今はこうやって夜も一緒にいられることが何よりも嬉しいからな」
「旦那様、そこまで気遣って下さってありがと……クション! ……申し訳ありません」
話の途中でくしゃみが出てしまったわ。恥ずかしい……
「アリエル、寒そうなドレスで冷えたのではないか?
早くベッドに入ろう。
君は前から風邪を引きやすかったからな」
「はい。申し訳ありません……」
その夜、旦那様は私が寒くならないようにと抱きしめて寝てくれた。
旦那様の優しさを感じられて嬉しかったけど、なかなか眠れなかった……
笑顔でペンを渡してくる旦那様。思わず弁護士の先生を見つめてしまう。
「奥様。公爵閣下にこのような契約書を作らせるなんて、本当に愛されてますね」
弁護士の先生は私達を見てニコニコしている。
そんな表情で見られるほど、私達は仲が良さそうに見えたのかしら。
「先生、このような契約書は本当に必要なのでしょうか?」
「珍しいものではありませんよ。ただ、他の方々は結婚する前に契約を交わすことが多いですが……」
「アリエル。ほら、サインを!」
「奥様。これは奥様には利益しかない契約です。
公爵閣下の深い愛情の表れでもあると思います。
サインされてはいかがでしょうか?」
「……分かりました」
とても迷ったが、結局私は契約書にサインをしてしまった。
弁護士の先生が帰った後、私は旦那様と二人きりでお茶をしている。
「旦那様、本当に良かったのでしょうか?」
「こんなことで君からすぐに信頼してもらえるとは思っていない。
しかし、今の私に出来ることはこれくらいしかないんだ……」
すると旦那様は無言で立ち上がり、私の前で跪くと、真っ直ぐに見つめて手を握ってくる。
そして……
「アリエル。あのような形での結婚だったから、私は君にきちんとプロポーズが出来なかった。
だから……、今から君に私の気持ちを聞いて欲しい」
「旦那様の気持ちですか?」
「そうだ。……私は幼馴染の妹だったアリエルがずっと好きだった。
しかし君は殿下の婚約者になってしまったから、私は仕方なく諦めることにした。
だが、殿下と君が婚約解消になったと聞いた私は、適当な理由をつけて国王陛下に君と婚約させて欲しいと頼んだ。そのことがあって、私達の結婚は表向きは王命ということになっている。
自分では自覚していなかったが、私はずっと君を愛していた。
君に酷い態度をとった過去は消えないと思うが、これから私の一生をかけて償っていきたい。
アリエルだけを愛している。私と本当の家族になってくれないか?」
旦那様の告白を聞き、胸がまたドクドクしてきた。
王命だと言われていたこの結婚は、旦那様が望んでくれたものだなんて信じられなかった。
それなら、どうしてそのことを婚約した時に言ってくれなかったのかしら?
あの時、旦那様は私を嫌っているようにしか見えなかったから何も期待をしていなかったけれど、それなりに傷付いた。今更こんなことを言われて、多少の怒りと悲しみのようなものを感じる。
でも……、正直に打ち明けてくれたことは嬉しい。
今の私は心の中に色々な感情が入り混ざっているけど、旦那様と家族になりたいと思ってしまった。
「旦那様……、正直に話して下さったことは嬉しく思います。
しかし婚約した頃の旦那様の態度に傷付いた私としては、怒りや悲しみもあるのです。
あの辛かった日々のことや、家族や旦那様に冷遇されたことは忘れることは出来ないでしょう。
でも、このままの自分でいることは嫌だと思っています。
私と真剣に向き合ってくれる旦那様と一緒に前に進んでいきたいですわ。
愛するという感情はよく分かりませんが、私も旦那様と本当の家族になりたいです」
「アリエル……、ありがとう。
君からの愛は求めない。私と一緒に前に進みたいと思ってくれるだけで私は嬉しいんだ。
これからは君と二人で幸せになりたいと思っている。一生、大切にするよ」
「はい……。よろしくお願い致します」
私の返事を聞いて、安堵の表情を浮かべた旦那様の手は温かかった。
その日から、旦那様と一緒の寝室を使うことになる。
夫婦なのだから、邸にいる時は一緒にいたいという旦那様の希望だった。
その日の夜……
「奥様、今日から旦那様と一緒に休まれるのですから、ナイトドレスはいつもより凝ったデザインの物にしましょうね」
「アンナ、いつものでいいわよ」
「いえ。もうご用意してしまいましたので」
湯浴みの後に着せられたナイトドレスは……
「アンナ、このナイトドレスでは冷えそうだわ」
「旦那様に温めて貰えば大丈夫です」
「……」
自信満々にそんなことを言わなくても……
寝室に行くと、すでに旦那様が待っていてくれた。
この部屋に来るのは、あの初夜の日以来だ。あの時とは違った緊張感のようなものがある。
「アリエル。私は初夜の時に、君を深く傷付けたことを後悔しているんだ。だから今すぐ無理に君を抱くつもりはない。
アリエルが私を本当に受け入れてくれるまで待つつもりだ。
今はこうやって夜も一緒にいられることが何よりも嬉しいからな」
「旦那様、そこまで気遣って下さってありがと……クション! ……申し訳ありません」
話の途中でくしゃみが出てしまったわ。恥ずかしい……
「アリエル、寒そうなドレスで冷えたのではないか?
早くベッドに入ろう。
君は前から風邪を引きやすかったからな」
「はい。申し訳ありません……」
その夜、旦那様は私が寒くならないようにと抱きしめて寝てくれた。
旦那様の優しさを感じられて嬉しかったけど、なかなか眠れなかった……
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