54 / 67
友人の話
しおりを挟む
お茶やお菓子を出し終わったメイド達もすぐに退室したので、部屋には私たち四人だけになった。
「改めてお礼を言わせて頂きますわ。今日は私のために時間を作って下さってありがとうございます。
私の知らないところで、沢山心配をして下さったのですね。申し訳ありませんでした。
残念ながら私の記憶はまだ戻らず、記憶を失う前の私がどのように生きていたのかや、ヴィオラやバトラー侯爵家の家族、王太子殿下とどのような関係でいたのかが分からないのです。
それで私と仲の良かったという夫人方から、沢山お話を聞かせて頂きたいと思いましたの」
「シールズ公爵夫人。どうか私たちのことは、名前で呼んで頂けませんか?
私達は呼び捨てで呼び合う仲だったのです。
私のことは前のようにスカーレットと呼んで下さったら嬉しく思いますわ」
呼び捨てで呼び合うほど仲の良かった友人だったとは驚きだわ。
でも、彼女たちは嘘をついているようには見えない。バトラー侯爵家の人間やヴィーとは違う気がした。
「呼び捨てで呼び合う仲だったのですか?
分かりました。では私のことはアリエルとお呼び下さい」
「私のことはライリーと呼んで下さっていましたので、これからもそのようにお呼び下さい。
私たちだけの時は敬語もやめてもいいですか?」
「ええ。勿論よ」
「私のことはクレアとお呼び下さい。
しかし、公爵夫人になったアリエルを人前では呼び捨てには出来ませんね。ふふ!」
友人達と笑い合い、その場の雰囲気が和やかになるのが分かった。記憶はなくても、私は彼女たちと仲が良かったのだと感じる。
軽く雑談を楽しんだ後、スカーレットが険しい表情になって口を開く。
「アリエル。貴女が急な病で倒れ、殿下と婚約解消になったと聞いた時、私たちはあの女を疑ったのよ。
でもいくら養女とはいえ、名門侯爵家の御令嬢であるあの女を表立ってそんな風には言えなかったの」
それまで笑顔でおしゃべりをしていたクレアやライリーまで……
「私達だけではないわ。王太子殿下の婚約者であるアリエルを僻んでいた貴族派の令嬢方もあの女を疑っていたわね」
敵対する派閥の令嬢まで疑っていたなんて……
「クレア。どうして貴族派の令嬢方までヴィーを疑っていたの?」
「王太子殿下に憧れていた令嬢達はあの女が殿下に恋をしていたことに気付いていたと思うのよ。自分と同じ恋をする目で殿下を見つめていたら分かるじゃない。
それに……、仲の良かった義姉が病で倒れ殿下と婚約解消になれば、普通なら落ち込むと思うの。
でもあの女は、落ち込んだようにはしていたけど、自分が殿下の婚約者候補の筆頭になれて喜んでいたことを隠し切れていなかったわ。
貴族派の令嬢たちは、そんなところをよく見ていたのだと思う。だから令嬢達の間で、アリエルは病ではなくあの女に毒でも盛られたのではと噂になっていたのよね」
だからヴィーの様子が変だったのね。公爵家に来た時なんて、余裕がなさそうだったしイライラしていたもの。
「バトラー侯爵家には何度も手紙を書いたのよ。
でも、アリエルは寝込んでいて手紙を書くことは出来ないから返事を出せないと丁寧に謝罪受けたら、それ以上のことは出来なかったの」
「クレア、沢山心配をかけたわね……
本当にごめんなさい」
その後、三人はヴィーのことを色々教えてくれた。
記憶喪失になる前の私は、ヴィーが殿下に恋をしていたことに気付いていて、後ろめたい気持ちを持っていたのではないかということだった。
そして王太子殿下と私の関係については、三人とも私と殿下は仲が良かったと言っている。
殿下は私を愛していたし、私も殿下を愛していたと。
私と婚約解消になった後の殿下は、落ち込んで別人のようになってしまったらしい。
「殿下はアシュベリー国の王女殿下と結婚した後、すぐに側妃を迎えるだろうと噂になっていて、水面下では側妃狙いの令嬢方の争いが始まっているみたいよ。
だから殿下は、この前のパーティーでは令嬢とはダンスを踊らず既婚者のアリエルをダンスに誘ったのかしら?
でも、殿下のあの様子だとアリエルに未練があるのがバレバレね。
アリエルはどうするつもりなの?」
スカーレットはこの前のパーティーでの私達をよく見ていたようだ。
「私はもう結婚しているから、殿下には臣下の一人としてお支えしていく考えでいるわ。
今の生活が平和で幸せなのよ」
「そうね。もうアリエルにはシールズ公爵様という素晴らしい旦那様がいるもの。
シールズ公爵様は、社交の場でアリエルが嬢達から絡まれているのを何度も助けて下さったわよね。
お優しい方のようだしアリエルも公爵様を信頼していたようだったから、殿下と婚約解消になったのは気の毒だったけど、公爵様と結婚すると聞いて安心していたのよ」
スカーレットの話を聞いて耳を疑いたくなった。
記憶喪失になる前の私は旦那様を信頼していた……?
「改めてお礼を言わせて頂きますわ。今日は私のために時間を作って下さってありがとうございます。
私の知らないところで、沢山心配をして下さったのですね。申し訳ありませんでした。
残念ながら私の記憶はまだ戻らず、記憶を失う前の私がどのように生きていたのかや、ヴィオラやバトラー侯爵家の家族、王太子殿下とどのような関係でいたのかが分からないのです。
それで私と仲の良かったという夫人方から、沢山お話を聞かせて頂きたいと思いましたの」
「シールズ公爵夫人。どうか私たちのことは、名前で呼んで頂けませんか?
私達は呼び捨てで呼び合う仲だったのです。
私のことは前のようにスカーレットと呼んで下さったら嬉しく思いますわ」
呼び捨てで呼び合うほど仲の良かった友人だったとは驚きだわ。
でも、彼女たちは嘘をついているようには見えない。バトラー侯爵家の人間やヴィーとは違う気がした。
「呼び捨てで呼び合う仲だったのですか?
分かりました。では私のことはアリエルとお呼び下さい」
「私のことはライリーと呼んで下さっていましたので、これからもそのようにお呼び下さい。
私たちだけの時は敬語もやめてもいいですか?」
「ええ。勿論よ」
「私のことはクレアとお呼び下さい。
しかし、公爵夫人になったアリエルを人前では呼び捨てには出来ませんね。ふふ!」
友人達と笑い合い、その場の雰囲気が和やかになるのが分かった。記憶はなくても、私は彼女たちと仲が良かったのだと感じる。
軽く雑談を楽しんだ後、スカーレットが険しい表情になって口を開く。
「アリエル。貴女が急な病で倒れ、殿下と婚約解消になったと聞いた時、私たちはあの女を疑ったのよ。
でもいくら養女とはいえ、名門侯爵家の御令嬢であるあの女を表立ってそんな風には言えなかったの」
それまで笑顔でおしゃべりをしていたクレアやライリーまで……
「私達だけではないわ。王太子殿下の婚約者であるアリエルを僻んでいた貴族派の令嬢方もあの女を疑っていたわね」
敵対する派閥の令嬢まで疑っていたなんて……
「クレア。どうして貴族派の令嬢方までヴィーを疑っていたの?」
「王太子殿下に憧れていた令嬢達はあの女が殿下に恋をしていたことに気付いていたと思うのよ。自分と同じ恋をする目で殿下を見つめていたら分かるじゃない。
それに……、仲の良かった義姉が病で倒れ殿下と婚約解消になれば、普通なら落ち込むと思うの。
でもあの女は、落ち込んだようにはしていたけど、自分が殿下の婚約者候補の筆頭になれて喜んでいたことを隠し切れていなかったわ。
貴族派の令嬢たちは、そんなところをよく見ていたのだと思う。だから令嬢達の間で、アリエルは病ではなくあの女に毒でも盛られたのではと噂になっていたのよね」
だからヴィーの様子が変だったのね。公爵家に来た時なんて、余裕がなさそうだったしイライラしていたもの。
「バトラー侯爵家には何度も手紙を書いたのよ。
でも、アリエルは寝込んでいて手紙を書くことは出来ないから返事を出せないと丁寧に謝罪受けたら、それ以上のことは出来なかったの」
「クレア、沢山心配をかけたわね……
本当にごめんなさい」
その後、三人はヴィーのことを色々教えてくれた。
記憶喪失になる前の私は、ヴィーが殿下に恋をしていたことに気付いていて、後ろめたい気持ちを持っていたのではないかということだった。
そして王太子殿下と私の関係については、三人とも私と殿下は仲が良かったと言っている。
殿下は私を愛していたし、私も殿下を愛していたと。
私と婚約解消になった後の殿下は、落ち込んで別人のようになってしまったらしい。
「殿下はアシュベリー国の王女殿下と結婚した後、すぐに側妃を迎えるだろうと噂になっていて、水面下では側妃狙いの令嬢方の争いが始まっているみたいよ。
だから殿下は、この前のパーティーでは令嬢とはダンスを踊らず既婚者のアリエルをダンスに誘ったのかしら?
でも、殿下のあの様子だとアリエルに未練があるのがバレバレね。
アリエルはどうするつもりなの?」
スカーレットはこの前のパーティーでの私達をよく見ていたようだ。
「私はもう結婚しているから、殿下には臣下の一人としてお支えしていく考えでいるわ。
今の生活が平和で幸せなのよ」
「そうね。もうアリエルにはシールズ公爵様という素晴らしい旦那様がいるもの。
シールズ公爵様は、社交の場でアリエルが嬢達から絡まれているのを何度も助けて下さったわよね。
お優しい方のようだしアリエルも公爵様を信頼していたようだったから、殿下と婚約解消になったのは気の毒だったけど、公爵様と結婚すると聞いて安心していたのよ」
スカーレットの話を聞いて耳を疑いたくなった。
記憶喪失になる前の私は旦那様を信頼していた……?
788
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ
棗
恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。
王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。
長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。
婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。
ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。
濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。
※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています
いいえ、望んでいません
わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」
結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。
だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。
なぜなら彼女は―――
『悪女と呼ばれた令嬢は、親友の幸せのために婚約者を捨てた』
由香
恋愛
婚約者である王太子を、親友のために手放した令嬢リュシエンヌ。
彼女はすべての非難を一身に受け、「悪女」と呼ばれる道を選ぶ。
真実を語らぬまま、親友である騎士カイルとも距離を置き、
ただ一人、守るべきものを守り抜いた。
それは、愛する人の未来のための選択。
誤解と孤独の果てで、彼女が手にした本当の結末とは――。
悪女と呼ばれた令嬢が、自ら選び取る静かな幸福の物語。
【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう
楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。
目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。
「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」
さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。
アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。
「これは、焼却処分が妥当ですわね」
だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる