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拘束
突然入ってきた旦那様や近衛騎士達に驚き、声すら出せずにいると、旦那様は人目を憚らず私を抱きしめてきた。
「アリエル、無事で良かった……」
「旦那様、何があったのです?
この場でこれは……」
私が人前で抱きしめられて恥ずかしいことを伝えようとしたその時……
「シールズ公爵様。私を近衛騎士に拘束させておきながら、ご自分は見せつけるように夫人を抱きしめて、一体どういうつもりですの?
まだ私はアシュベリー国の王女という身分ですのよ。今すぐ大使を呼んでちょうだい。
近衛騎士団長も、私にこんなことをして許されると思わないで!」
王女殿下は旦那様と近衛騎士団長を睨みつけている。
「王女殿下、そちらの紅茶のポットに貴女の侍女が何かを入れていたのを確認しましてね……」
「シールズ公爵様は知らないと思いますが、アシュベリー国では紅茶のポットに甘味料を入れて甘くしてからお出しする習慣がありますのよ。
それに私は、紅茶には銀のスプーンを使うようにしているのだけど何の反応もなかったわ」
「……では、確認させて頂きます」
旦那様が合図をすると、使用人がネズミの入ったカゴを持ってくる。
「倉庫に仕掛けているネズミ捕りのカゴを急遽持ってきてもらいました」
旦那様はそう言うとティーカップを持ち、カゴの中に入っているネズミに向かってバシャっと紅茶をかける。
そして……
「王女殿下、ネズミが苦しんでいるように見えませんか?
動かないでください! ここで王女殿下に毒入り紅茶を飲まれて自害でもされたら、それこそ外交問題になってしまいますので」
「……」
旦那様は淡々と話しているが、言葉に怒りが込められているのが伝わってくる。
「シールズ公爵閣下、ここからは私達が取り調べを致します。
王女殿下と侍女殿。お話を聞かせて頂きますので、ご同行願います」
近衛騎士団長は、悔しさを滲ませる王女殿下と顔色を悪くする侍女を拘束して行ってしまった。
旦那様はその後、残っていた使用人達に合図を送って人払いをさせる。
「アリエル、間に合わないかったらどうしようかと思った……」
そう言うと、旦那様はまた私をギュッと抱きしめてくるのだった。
抱きしめられたら恥ずかしいはずなのに、今の私は恥ずかしさよりも安堵の方が強く感じている。
私は無意識に旦那様の背中に腕を伸ばし、抱きしめ返していた。
「旦那様は王女殿下の企みに気付いて助けに来て下さったのですね……
ありがとうございました」
「遅くなってしまって悪かった。
王宮内で私の立場では、王女殿下を捕縛することは出来ないんだ。それで陛下に事情を説明して近衛騎士に動いてもらうことにしたが、手間がかかってしまった。
王女がアリエルに何かをするなら、今日の茶会で動くだろうと思って見張らせていたんだが、まさか毒を使うとは思っていなかったから焦ったぞ。
君が無事で良かった……」
そのまましばらく無言で抱きしめ合っていると、ドアが乱暴に開けられる音がした。
驚いてビクッとする私を、旦那様は隠すようにして抱きしめている。
「アリー! 大丈夫か?」
入って来た人物の顔は見えなかったが、声を聞いてすぐに誰なのかが分かった。
「これは王太子殿下……、どうしてこちらに?」
旦那様の声は凍りつきそうな程に冷たい。
「アリーが毒を盛られたと聞いて急いで来た。
大丈夫か? 顔を見せて欲しい!」
殿下の口調からは余裕の無さを感じ、その言葉の直後に旦那様の腕に力が入る。
「妻は未来の王太子妃となられるお方に命を狙われたことで、大変ショックを受けております。
しかし幸いなことに未遂に終わりましたので、ご心配には及びません。
殿下は私の妻ではなく、ご自分の婚約者である王女殿下に向き合うべきでは?
王女殿下が何を思って妻の命を狙ったのかは分かりませんが、殿下が国王陛下や王妃殿下の反対を押し切ってまで望んだ婚約者なのですから、最後まで責任を持って頂きたいと思っております」
「シールズ公爵、夫人……、申し訳なかった。
私が責任を持って調査する。後日、改めて謝罪する場を設けさせてくれ」
消え入りそうな声で謝罪をした殿下は、そのまま部屋から出て行ったようだ。
「……アリエル、すぐに帰ろう。
私が送っていく。歩けるか?」
「私は大丈夫ですわ。
旦那様は仕事中ですから、私は一人で帰ります」
「仕事はどうにでもなる。
私が心配で送って行きたいんだ。すぐに出発しよう」
旦那様は優しく微笑むと、私の手を繋いで歩き出すのであった。
「アリエル、無事で良かった……」
「旦那様、何があったのです?
この場でこれは……」
私が人前で抱きしめられて恥ずかしいことを伝えようとしたその時……
「シールズ公爵様。私を近衛騎士に拘束させておきながら、ご自分は見せつけるように夫人を抱きしめて、一体どういうつもりですの?
まだ私はアシュベリー国の王女という身分ですのよ。今すぐ大使を呼んでちょうだい。
近衛騎士団長も、私にこんなことをして許されると思わないで!」
王女殿下は旦那様と近衛騎士団長を睨みつけている。
「王女殿下、そちらの紅茶のポットに貴女の侍女が何かを入れていたのを確認しましてね……」
「シールズ公爵様は知らないと思いますが、アシュベリー国では紅茶のポットに甘味料を入れて甘くしてからお出しする習慣がありますのよ。
それに私は、紅茶には銀のスプーンを使うようにしているのだけど何の反応もなかったわ」
「……では、確認させて頂きます」
旦那様が合図をすると、使用人がネズミの入ったカゴを持ってくる。
「倉庫に仕掛けているネズミ捕りのカゴを急遽持ってきてもらいました」
旦那様はそう言うとティーカップを持ち、カゴの中に入っているネズミに向かってバシャっと紅茶をかける。
そして……
「王女殿下、ネズミが苦しんでいるように見えませんか?
動かないでください! ここで王女殿下に毒入り紅茶を飲まれて自害でもされたら、それこそ外交問題になってしまいますので」
「……」
旦那様は淡々と話しているが、言葉に怒りが込められているのが伝わってくる。
「シールズ公爵閣下、ここからは私達が取り調べを致します。
王女殿下と侍女殿。お話を聞かせて頂きますので、ご同行願います」
近衛騎士団長は、悔しさを滲ませる王女殿下と顔色を悪くする侍女を拘束して行ってしまった。
旦那様はその後、残っていた使用人達に合図を送って人払いをさせる。
「アリエル、間に合わないかったらどうしようかと思った……」
そう言うと、旦那様はまた私をギュッと抱きしめてくるのだった。
抱きしめられたら恥ずかしいはずなのに、今の私は恥ずかしさよりも安堵の方が強く感じている。
私は無意識に旦那様の背中に腕を伸ばし、抱きしめ返していた。
「旦那様は王女殿下の企みに気付いて助けに来て下さったのですね……
ありがとうございました」
「遅くなってしまって悪かった。
王宮内で私の立場では、王女殿下を捕縛することは出来ないんだ。それで陛下に事情を説明して近衛騎士に動いてもらうことにしたが、手間がかかってしまった。
王女がアリエルに何かをするなら、今日の茶会で動くだろうと思って見張らせていたんだが、まさか毒を使うとは思っていなかったから焦ったぞ。
君が無事で良かった……」
そのまましばらく無言で抱きしめ合っていると、ドアが乱暴に開けられる音がした。
驚いてビクッとする私を、旦那様は隠すようにして抱きしめている。
「アリー! 大丈夫か?」
入って来た人物の顔は見えなかったが、声を聞いてすぐに誰なのかが分かった。
「これは王太子殿下……、どうしてこちらに?」
旦那様の声は凍りつきそうな程に冷たい。
「アリーが毒を盛られたと聞いて急いで来た。
大丈夫か? 顔を見せて欲しい!」
殿下の口調からは余裕の無さを感じ、その言葉の直後に旦那様の腕に力が入る。
「妻は未来の王太子妃となられるお方に命を狙われたことで、大変ショックを受けております。
しかし幸いなことに未遂に終わりましたので、ご心配には及びません。
殿下は私の妻ではなく、ご自分の婚約者である王女殿下に向き合うべきでは?
王女殿下が何を思って妻の命を狙ったのかは分かりませんが、殿下が国王陛下や王妃殿下の反対を押し切ってまで望んだ婚約者なのですから、最後まで責任を持って頂きたいと思っております」
「シールズ公爵、夫人……、申し訳なかった。
私が責任を持って調査する。後日、改めて謝罪する場を設けさせてくれ」
消え入りそうな声で謝罪をした殿下は、そのまま部屋から出て行ったようだ。
「……アリエル、すぐに帰ろう。
私が送っていく。歩けるか?」
「私は大丈夫ですわ。
旦那様は仕事中ですから、私は一人で帰ります」
「仕事はどうにでもなる。
私が心配で送って行きたいんだ。すぐに出発しよう」
旦那様は優しく微笑むと、私の手を繋いで歩き出すのであった。
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