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恩を売る
寝坊したその日は、旦那様が仕事から早く帰ってきてくれた。
二人でお茶を飲んでいると、旦那様から王女殿下のことを聞かされる。
「アリエル、王女殿下は口を閉ざしていてまだ話が聞けていないんだ。
しかし王女殿下の侍女からは話は聞けた。どうやら侍女はそれが毒だとは知らなかったらしい。
茶会の前に王女殿下から、甘味料だからお代わりの紅茶の味を変えるために使って欲しいと言われて、小瓶に入った液体を渡されていたようだ」
「得体の知れないものを渡されたら、普通は毒を疑うと思うのですが……」
「その侍女も初めは疑ったらしいのだが、その様子を見た王女殿下は侍女の前でその液体を舐めて見せたらしい。
『甘くて美味しいのよ』と言っていたようだ」
信じられない話だった。
「でもあの紅茶には確かに毒が入っていましたわ。
ネズミは苦しんでいたのですから」
「その侍女の話を聞いて毒を調べたのだが、どうやらあの毒は紅茶に入れることによって毒になるらしい。
我が国にはない毒だから、薬師や医師などが詳しく調べているようだ。
普通に持っているだけなら毒だとは分かりにくい物だ。厄介な物を持ち込んでくれたよ。
王宮に毒物を持ち込むことは禁止されているし、公爵夫人であるアリエルに毒を盛ったことは許されない。
国王陛下はアシュベリー国の大使を呼びつけて強く抗議してくれた」
大使に抗議したということは、アシュベリー国に王女殿下のしたことが知らされてしまう。
「旦那様。アシュベリー国の大使に抗議したということは、王女殿下のしたことは公にされてしまったのでしょうか?」
「まだ公にはしていない。
今回のことは、王女との婚約を望んだ王太子殿下とアシュベリー国の王家の醜聞になってしまうから、公表することについてはまだ決めていないんだ」
「王女殿下はこの後、どうなってしまうのでしょう?
もし婚約が破棄されたら帰る場所はあるのですか?」
「アリエル、罪を犯した者が帰る場所はないだろう。
あの王女はアシュベリー国でも冷遇されていたのだから、帰国の途中で事故に遭ったことにして消されるかもしれないし、毒でも盛られて病で死んだことにされるかもしれないな。
どちらにしても、殿下との婚約を継続することは無理だ。私はあの王女を許せない……」
旦那様の声は一層低くなり、怒りを滲ませているのが分かる。
「旦那様が怒る気持ちは分かりますが、私は王女殿下を恨む気にはなれませんわ。冷遇されていた王女殿下の置かれた立場を思うと胸が痛むのです。
私はいずれ国王に即位する王太子殿下と旦那様の関係がこれ以上悪くなることを望みませんし、我が国と大国であるアシュベリー国との関係が悪くなることも望みません。
私は無事だったのですから、一時的な感情に流されることなく冷静な判断をして欲しいと思っております」
「アリエルは怒ってないのか? 殺されそうになったのだぞ?
大切な君が狙われて、この私が冷静な判断など出来るはずがないんだ」
旦那様が感情的になっている。こんな姿を見るのは初めてかもしれない。
「私は怒りよりもショックの方が大きいですわ。
しかし言葉は悪いですが、王太子殿下もアシュベリー国も、初めから王女殿下を形だけの正妃にするつもりでいたのですよね?
でしたら今回のことは目をつぶり、このまま婚姻すればいいのでは?
今回の事件が公になることで困るのは、王太子殿下とアシュベリー国です。私が王女殿下の罪を問うことを望まないと訴えることで、殿下とアシュベリー国に恩を売ることは出来ませんか?」
「私は反対だ! 殿下が君を側妃に迎えたいなどと言って、王女にアリエルのことを話したりするから君が狙われたんだ。
また狙われるかもしれない……。君を心配する私の気持ちも考えてくれ」
旦那様の表情は苦痛そうに歪んでいる。
感情を露わにするほど私のことを心配してくれているようだ。
でも私は、王女殿下がこれ以上不幸になるのは嫌だった。
「王女殿下の社交を最低限にして、離宮できちんと監視すれば問題ありませんわ。軟禁生活のようになってしまいますが、アシュベリー国から命を狙われるよりはマシかと思うのです。王女殿下にはこの国で生きてもらうことで、罪を償ってもらいましょう。
私の正直な気持ちとしては王女殿下は怖いですが、王女殿下が私に接触することを禁止にしてくれれば問題ありませんわ」
「アリエルの言い分は分かるが……」
「旦那様、王女殿下は好きでこのようなことをした訳ではないと思うのです。
私だってあのままバトラー侯爵家で家族に冷遇され、ヴィーから嫌がらせを受け続けていたら、どうなっていたかは分かりませんわ。両親やヴィーを恨んで、心が壊れていたかもしれないのです。
それに……、これからもずっと旦那様が私の側にいて守ってくれますよね?」
「私はずっとアリエルを守るよ。それは約束する。
しかし君の命を狙われて、今はあの王女を冷静には見れない。
……少し考えさせてくれないか?」
「よろしくお願いします」
二人でお茶を飲んでいると、旦那様から王女殿下のことを聞かされる。
「アリエル、王女殿下は口を閉ざしていてまだ話が聞けていないんだ。
しかし王女殿下の侍女からは話は聞けた。どうやら侍女はそれが毒だとは知らなかったらしい。
茶会の前に王女殿下から、甘味料だからお代わりの紅茶の味を変えるために使って欲しいと言われて、小瓶に入った液体を渡されていたようだ」
「得体の知れないものを渡されたら、普通は毒を疑うと思うのですが……」
「その侍女も初めは疑ったらしいのだが、その様子を見た王女殿下は侍女の前でその液体を舐めて見せたらしい。
『甘くて美味しいのよ』と言っていたようだ」
信じられない話だった。
「でもあの紅茶には確かに毒が入っていましたわ。
ネズミは苦しんでいたのですから」
「その侍女の話を聞いて毒を調べたのだが、どうやらあの毒は紅茶に入れることによって毒になるらしい。
我が国にはない毒だから、薬師や医師などが詳しく調べているようだ。
普通に持っているだけなら毒だとは分かりにくい物だ。厄介な物を持ち込んでくれたよ。
王宮に毒物を持ち込むことは禁止されているし、公爵夫人であるアリエルに毒を盛ったことは許されない。
国王陛下はアシュベリー国の大使を呼びつけて強く抗議してくれた」
大使に抗議したということは、アシュベリー国に王女殿下のしたことが知らされてしまう。
「旦那様。アシュベリー国の大使に抗議したということは、王女殿下のしたことは公にされてしまったのでしょうか?」
「まだ公にはしていない。
今回のことは、王女との婚約を望んだ王太子殿下とアシュベリー国の王家の醜聞になってしまうから、公表することについてはまだ決めていないんだ」
「王女殿下はこの後、どうなってしまうのでしょう?
もし婚約が破棄されたら帰る場所はあるのですか?」
「アリエル、罪を犯した者が帰る場所はないだろう。
あの王女はアシュベリー国でも冷遇されていたのだから、帰国の途中で事故に遭ったことにして消されるかもしれないし、毒でも盛られて病で死んだことにされるかもしれないな。
どちらにしても、殿下との婚約を継続することは無理だ。私はあの王女を許せない……」
旦那様の声は一層低くなり、怒りを滲ませているのが分かる。
「旦那様が怒る気持ちは分かりますが、私は王女殿下を恨む気にはなれませんわ。冷遇されていた王女殿下の置かれた立場を思うと胸が痛むのです。
私はいずれ国王に即位する王太子殿下と旦那様の関係がこれ以上悪くなることを望みませんし、我が国と大国であるアシュベリー国との関係が悪くなることも望みません。
私は無事だったのですから、一時的な感情に流されることなく冷静な判断をして欲しいと思っております」
「アリエルは怒ってないのか? 殺されそうになったのだぞ?
大切な君が狙われて、この私が冷静な判断など出来るはずがないんだ」
旦那様が感情的になっている。こんな姿を見るのは初めてかもしれない。
「私は怒りよりもショックの方が大きいですわ。
しかし言葉は悪いですが、王太子殿下もアシュベリー国も、初めから王女殿下を形だけの正妃にするつもりでいたのですよね?
でしたら今回のことは目をつぶり、このまま婚姻すればいいのでは?
今回の事件が公になることで困るのは、王太子殿下とアシュベリー国です。私が王女殿下の罪を問うことを望まないと訴えることで、殿下とアシュベリー国に恩を売ることは出来ませんか?」
「私は反対だ! 殿下が君を側妃に迎えたいなどと言って、王女にアリエルのことを話したりするから君が狙われたんだ。
また狙われるかもしれない……。君を心配する私の気持ちも考えてくれ」
旦那様の表情は苦痛そうに歪んでいる。
感情を露わにするほど私のことを心配してくれているようだ。
でも私は、王女殿下がこれ以上不幸になるのは嫌だった。
「王女殿下の社交を最低限にして、離宮できちんと監視すれば問題ありませんわ。軟禁生活のようになってしまいますが、アシュベリー国から命を狙われるよりはマシかと思うのです。王女殿下にはこの国で生きてもらうことで、罪を償ってもらいましょう。
私の正直な気持ちとしては王女殿下は怖いですが、王女殿下が私に接触することを禁止にしてくれれば問題ありませんわ」
「アリエルの言い分は分かるが……」
「旦那様、王女殿下は好きでこのようなことをした訳ではないと思うのです。
私だってあのままバトラー侯爵家で家族に冷遇され、ヴィーから嫌がらせを受け続けていたら、どうなっていたかは分かりませんわ。両親やヴィーを恨んで、心が壊れていたかもしれないのです。
それに……、これからもずっと旦那様が私の側にいて守ってくれますよね?」
「私はずっとアリエルを守るよ。それは約束する。
しかし君の命を狙われて、今はあの王女を冷静には見れない。
……少し考えさせてくれないか?」
「よろしくお願いします」
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