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後見人
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バトラー侯爵家の両親と兄が来てから、更に一週間くらい経過した。
久しぶりに早く帰ってきた旦那様から話がしたいと呼ばれる。
「アリエル、バトラー侯爵家から謝意と謝罪の文を頂いたよ。
君を助けたことへの感謝と、私達の気持ちを無視して離縁を勧めたことを謝罪したいという内容だった」
「バトラー侯爵家は旦那様に対して、失礼極まりないことをしましたわ。
私の実家だからと気を遣って、謝罪を受け入れなくてもいいのです」
「君が家族を許せないことは分かる。しかし夫としては、大切な妻の親兄弟とは仲良くしたいと思ってしまうんだ。
今後は私達の結婚生活に口を出すことはしないし、離縁を勧めたりしないそうだ。私達夫婦の幸せを願いたいと書いてあって、私は君の家族に認められたような気持ちになって嬉しくなってしまった……」
旦那様はお優しい方だから、そんな上辺だけの謝罪を簡単に受け入れてしまうのね……
「私の家族が旦那様を認める以前に、これは王命での結婚でしたし、旦那様は私の兄の幼馴染でうちの家族とは昔からの付き合いでしたよね?
そんなことは気にされる必要はないかと思いますわ」
「私は君や君の家族から、夫として認めれたかったんだ。
君と殿下の過去のことがあるから尚更……」
元婚約者である殿下とバトラー侯爵家が親密にしていたから、旦那様は傷付いていたということらしい。
「家族が何を言ってきたとしても、私は旦那様を選んでいるのです。私は旦那様の妻でいられて幸せだと思っております」
「アリエルがそう言ってくれるのはとても嬉しい。
愛してる……」
部屋で二人きりだからなのか、旦那様は遠慮なく私を抱きしめてきて、口づけをしてくる。
普段の旦那様は整いすぎて近寄り難く、真面目な雰囲気に見える人なのに、私生活で妻にここまで甘えて纏わりつく人だなんて、誰もが信じられないと思うだろう。
私を抱きしめたまま、旦那様は話を続ける。
「アリエル。あの王女は自分の祖国と殿下達を恨んでいるようだ。君の命を奪えば、アシュベリー国も殿下も、私達も困ると考えて復讐のつもりで毒を盛ったらしい。
君に危害を加えようとしたあの王女を、私は一生許すことは出来ないだろう……
だが冷静になって考えると、君が私と殿下の関係のことや、我が国とアシュベリー国の関係を心配してくれているのは有り難く感じたし嬉しくもあった。
アリエルの考えは、私から国王陛下や王太子殿下に伝えさせてもらった。二人とも君に感謝していたよ。
アシュベリー国も大使を通して謝罪してきた。あの国に恩を売ることが出来たことを陛下は喜んでおられる」
「では、王女殿下は……」
「毒の件は公にせず、このまま表面的は何事もなかったことにして殿下と結婚することになる。
しかし、今回のことで陛下や殿下達の信頼を失った王女は、形だけの正妃としてすぐに離宮に移され、軟禁に近い状態で一生監視されるだろう。
王族派のバトラー侯爵家が王女の後見として監視役をしてくれるということを陛下と殿下は喜んでいた。王女に変な貴族が近付くことが出来なくなるし、殿下の側妃を狙う、異なる派閥の令嬢達を牽制できるからな。
これもアリエルがバトラー侯爵家に頼んでくれたんだろう?」
「母が困ったことがあれば、私の力になりたいと話しておりましたので、王女殿下の後見人をお願いしましたが、引き受けてくれたなら良かったです。
王女殿下は、あの時に私と一緒に毒入り紅茶を飲んで死ぬつもりだったのだと思います。
ですが、簡単に死なれては困りますわ。私だって死にたいと思っても、死ぬことを許されなかったのですから……」
あの時、王女殿下は自分のティーカップにも毒入り紅茶を入れさせていたことがずっと心に引っかかっていた。
「アリエル、死ぬだなんて言わないでくれ……」
「今は死にたいだなんて思っていませんわ……
監視されて生きていくのは息苦しいでしょうが、罪を償うという意味で我慢してもらいましょう。
ただ私は、王女殿下の尊厳を大切にしてもらいたいと思っております。
離宮で軟禁されているからと、王女殿下にひどい仕打ちをするような使用人は置かないで欲しいですわ。
王女殿下個人だけでなく、仕える使用人のこともバトラー侯爵家にはよく監視してもらいましょう」
「分かった……。その話も私から陛下やバトラー侯爵家に伝えておく」
久しぶりに早く帰ってきた旦那様から話がしたいと呼ばれる。
「アリエル、バトラー侯爵家から謝意と謝罪の文を頂いたよ。
君を助けたことへの感謝と、私達の気持ちを無視して離縁を勧めたことを謝罪したいという内容だった」
「バトラー侯爵家は旦那様に対して、失礼極まりないことをしましたわ。
私の実家だからと気を遣って、謝罪を受け入れなくてもいいのです」
「君が家族を許せないことは分かる。しかし夫としては、大切な妻の親兄弟とは仲良くしたいと思ってしまうんだ。
今後は私達の結婚生活に口を出すことはしないし、離縁を勧めたりしないそうだ。私達夫婦の幸せを願いたいと書いてあって、私は君の家族に認められたような気持ちになって嬉しくなってしまった……」
旦那様はお優しい方だから、そんな上辺だけの謝罪を簡単に受け入れてしまうのね……
「私の家族が旦那様を認める以前に、これは王命での結婚でしたし、旦那様は私の兄の幼馴染でうちの家族とは昔からの付き合いでしたよね?
そんなことは気にされる必要はないかと思いますわ」
「私は君や君の家族から、夫として認めれたかったんだ。
君と殿下の過去のことがあるから尚更……」
元婚約者である殿下とバトラー侯爵家が親密にしていたから、旦那様は傷付いていたということらしい。
「家族が何を言ってきたとしても、私は旦那様を選んでいるのです。私は旦那様の妻でいられて幸せだと思っております」
「アリエルがそう言ってくれるのはとても嬉しい。
愛してる……」
部屋で二人きりだからなのか、旦那様は遠慮なく私を抱きしめてきて、口づけをしてくる。
普段の旦那様は整いすぎて近寄り難く、真面目な雰囲気に見える人なのに、私生活で妻にここまで甘えて纏わりつく人だなんて、誰もが信じられないと思うだろう。
私を抱きしめたまま、旦那様は話を続ける。
「アリエル。あの王女は自分の祖国と殿下達を恨んでいるようだ。君の命を奪えば、アシュベリー国も殿下も、私達も困ると考えて復讐のつもりで毒を盛ったらしい。
君に危害を加えようとしたあの王女を、私は一生許すことは出来ないだろう……
だが冷静になって考えると、君が私と殿下の関係のことや、我が国とアシュベリー国の関係を心配してくれているのは有り難く感じたし嬉しくもあった。
アリエルの考えは、私から国王陛下や王太子殿下に伝えさせてもらった。二人とも君に感謝していたよ。
アシュベリー国も大使を通して謝罪してきた。あの国に恩を売ることが出来たことを陛下は喜んでおられる」
「では、王女殿下は……」
「毒の件は公にせず、このまま表面的は何事もなかったことにして殿下と結婚することになる。
しかし、今回のことで陛下や殿下達の信頼を失った王女は、形だけの正妃としてすぐに離宮に移され、軟禁に近い状態で一生監視されるだろう。
王族派のバトラー侯爵家が王女の後見として監視役をしてくれるということを陛下と殿下は喜んでいた。王女に変な貴族が近付くことが出来なくなるし、殿下の側妃を狙う、異なる派閥の令嬢達を牽制できるからな。
これもアリエルがバトラー侯爵家に頼んでくれたんだろう?」
「母が困ったことがあれば、私の力になりたいと話しておりましたので、王女殿下の後見人をお願いしましたが、引き受けてくれたなら良かったです。
王女殿下は、あの時に私と一緒に毒入り紅茶を飲んで死ぬつもりだったのだと思います。
ですが、簡単に死なれては困りますわ。私だって死にたいと思っても、死ぬことを許されなかったのですから……」
あの時、王女殿下は自分のティーカップにも毒入り紅茶を入れさせていたことがずっと心に引っかかっていた。
「アリエル、死ぬだなんて言わないでくれ……」
「今は死にたいだなんて思っていませんわ……
監視されて生きていくのは息苦しいでしょうが、罪を償うという意味で我慢してもらいましょう。
ただ私は、王女殿下の尊厳を大切にしてもらいたいと思っております。
離宮で軟禁されているからと、王女殿下にひどい仕打ちをするような使用人は置かないで欲しいですわ。
王女殿下個人だけでなく、仕える使用人のこともバトラー侯爵家にはよく監視してもらいましょう」
「分かった……。その話も私から陛下やバトラー侯爵家に伝えておく」
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