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過干渉
「アリエル、一人で歩いてはダメだと言っているだろう? 移動する時はどこに行くにも私かアンナかメイド達に手を引いてもらう約束だったはずだ」
「旦那様。部屋の中を歩き回る時まで手を引いてもらう必要はありませんわ。
メイド達は忙しくしていますし、ソファーからベッドまでの移動くらいは一人で動けます」
「ダメだ! 転倒したらどうする?
君だけの体ではないんだぞ。お願いだから、私の言うことを聞いてくれ」
これは最近の私が毎日のように旦那様から言われている言葉だ。
領地でニヶ月ほど過ごして王都に戻ってきた後、私は体調を崩して横になることが多くなった。
旦那様は、私が風邪でも引いたのかもしれないと大騒ぎし、前にお世話になった女性の医師を呼んでくれたのだが、診察の結果は風邪ではなくて妊娠だったのだ。
まさかこんなに早く妊娠出来るとは思っていなかったから驚いてしまった。
でも、とても嬉しかった……
旦那様も喜んでくれるはずだと思い、すぐに部屋に呼び、先生から妊娠のことを報告してもらったのだが……
「アリエルが妊娠……?
妊娠は危険を伴うと聞く。出産も命懸けらしいが、アリエルは助かるのか?」
旦那様の反応は妊娠を喜ぶ夫というよりは、大病を患ってこれから治療をする患者の家族のような反応だった。
前に私と家族を作りたいと言っていた旦那様はどこに行ってしまったのか……
「公爵閣下。妊娠中は女性の体調が悪くなることは沢山ありますし、体型が変わるにつれて転びやすくなったりと危険が伴うことはあるでしょう。
出産はもちろん命懸けです。しかし、だからと言って夫である公爵閣下が不安そうにされるのが一番よろしくないことだと思います。
一番大変なのは妊娠している奥様なのです。夫である公爵閣下は奥様を信じて、一番近くでお支えしてあげて下さい。
特に妊娠初期は、悪阻があったり食欲がなくなったり、気分が悪くなったりと体調を崩しやすい時期です。
公爵閣下が奥様の体調を気遣って守ってあげて下さいね」
先生は狼狽える旦那様に有り難い助言をしてくれたのだが、その日から旦那様の過保護が凄まじいものになる。
朝・夕の食事は旦那様が食べさせてくれるようになり、移動は転倒防止のために一人で歩くことを禁止された。
外出や面会も制限され、外部の人と会いたい時は邸に招待するようにと言われる。
妊娠初期は悪阻があったり、眠気がひどかったりして横になることが多かったので、特に気にしていなかったのだが、安定期に入った頃からは旦那様の過保護が少しだけストレスに感じるようになってしまった。
部屋の中を少し動く時まで誰かに手を引いてもらえだなんてやり過ぎだと思う。
そんな私は、結婚する前の旦那様が少しだけ恋しくなってしまった。
冷たくて、私に興味がなさそうにしていたあの時の旦那様に今だけ戻ってきて欲しい。
私がそう思ってしまうほど、今の旦那様は過干渉と過保護の酷い人になっていた。
そんなある日、私が妊娠したと聞いた両親と兄が邸に来ることになった。
「アリー。シールズ公爵から妊娠していると聞いた。
良かったな」
「安定期に入ったんですって? 良かったわね!」
私とギクシャクしていたはずの両親の反応は意外なものだった。
「侯爵様も夫人も、喜んで下さっているのですね。
意外でした……」
「妊娠はおめでたいことだろう。
私達の初めての孫になるんだから、嬉しいに決まっている」
「そうよ。初めての孫だし、嬉しくて生まれてくるのが今から待ち遠しいのよ。
男の子と女の子、どちらかしらね? 楽しみだわ。
赤ちゃんの服とか、必要な物はうちで用意するから、アリーは何も用意しなくていいわよ」
「母上は、デザイナーにベビードレスを注文してしまったらしいぞ。その他にも、ベビー用品を買い漁っているようだ。
今のうちにアリーの色の好みを母上に伝えておいた方がいいかもな」
今までならイライラしていたはずの両親と兄の会話を聞いていて気付いてしまった。
私は旦那様にもこうやって純粋に喜んで欲しかったのだと……
妊娠が不安だからと神経質で過干渉になっていた旦那様に疲れていた私は、無意識に涙が流れていた。
「旦那様。部屋の中を歩き回る時まで手を引いてもらう必要はありませんわ。
メイド達は忙しくしていますし、ソファーからベッドまでの移動くらいは一人で動けます」
「ダメだ! 転倒したらどうする?
君だけの体ではないんだぞ。お願いだから、私の言うことを聞いてくれ」
これは最近の私が毎日のように旦那様から言われている言葉だ。
領地でニヶ月ほど過ごして王都に戻ってきた後、私は体調を崩して横になることが多くなった。
旦那様は、私が風邪でも引いたのかもしれないと大騒ぎし、前にお世話になった女性の医師を呼んでくれたのだが、診察の結果は風邪ではなくて妊娠だったのだ。
まさかこんなに早く妊娠出来るとは思っていなかったから驚いてしまった。
でも、とても嬉しかった……
旦那様も喜んでくれるはずだと思い、すぐに部屋に呼び、先生から妊娠のことを報告してもらったのだが……
「アリエルが妊娠……?
妊娠は危険を伴うと聞く。出産も命懸けらしいが、アリエルは助かるのか?」
旦那様の反応は妊娠を喜ぶ夫というよりは、大病を患ってこれから治療をする患者の家族のような反応だった。
前に私と家族を作りたいと言っていた旦那様はどこに行ってしまったのか……
「公爵閣下。妊娠中は女性の体調が悪くなることは沢山ありますし、体型が変わるにつれて転びやすくなったりと危険が伴うことはあるでしょう。
出産はもちろん命懸けです。しかし、だからと言って夫である公爵閣下が不安そうにされるのが一番よろしくないことだと思います。
一番大変なのは妊娠している奥様なのです。夫である公爵閣下は奥様を信じて、一番近くでお支えしてあげて下さい。
特に妊娠初期は、悪阻があったり食欲がなくなったり、気分が悪くなったりと体調を崩しやすい時期です。
公爵閣下が奥様の体調を気遣って守ってあげて下さいね」
先生は狼狽える旦那様に有り難い助言をしてくれたのだが、その日から旦那様の過保護が凄まじいものになる。
朝・夕の食事は旦那様が食べさせてくれるようになり、移動は転倒防止のために一人で歩くことを禁止された。
外出や面会も制限され、外部の人と会いたい時は邸に招待するようにと言われる。
妊娠初期は悪阻があったり、眠気がひどかったりして横になることが多かったので、特に気にしていなかったのだが、安定期に入った頃からは旦那様の過保護が少しだけストレスに感じるようになってしまった。
部屋の中を少し動く時まで誰かに手を引いてもらえだなんてやり過ぎだと思う。
そんな私は、結婚する前の旦那様が少しだけ恋しくなってしまった。
冷たくて、私に興味がなさそうにしていたあの時の旦那様に今だけ戻ってきて欲しい。
私がそう思ってしまうほど、今の旦那様は過干渉と過保護の酷い人になっていた。
そんなある日、私が妊娠したと聞いた両親と兄が邸に来ることになった。
「アリー。シールズ公爵から妊娠していると聞いた。
良かったな」
「安定期に入ったんですって? 良かったわね!」
私とギクシャクしていたはずの両親の反応は意外なものだった。
「侯爵様も夫人も、喜んで下さっているのですね。
意外でした……」
「妊娠はおめでたいことだろう。
私達の初めての孫になるんだから、嬉しいに決まっている」
「そうよ。初めての孫だし、嬉しくて生まれてくるのが今から待ち遠しいのよ。
男の子と女の子、どちらかしらね? 楽しみだわ。
赤ちゃんの服とか、必要な物はうちで用意するから、アリーは何も用意しなくていいわよ」
「母上は、デザイナーにベビードレスを注文してしまったらしいぞ。その他にも、ベビー用品を買い漁っているようだ。
今のうちにアリーの色の好みを母上に伝えておいた方がいいかもな」
今までならイライラしていたはずの両親と兄の会話を聞いていて気付いてしまった。
私は旦那様にもこうやって純粋に喜んで欲しかったのだと……
妊娠が不安だからと神経質で過干渉になっていた旦那様に疲れていた私は、無意識に涙が流れていた。
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