君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

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身を引きますわ

 応接室にて、伯爵様とバード男爵・令嬢、私で話を続ける。

「男爵様は伯爵様の叔父として心配して下さっているのです。忙しい私の為に、お嬢様を第二夫人として迎えてはと提案までして頂きましたのよ。お嬢様と伯爵様は仲が良いから何の問題もないことも教えて頂きましたわ」
「叔父上。私とシンディーは兄妹みたいな関係だと知りながら、エレノアにそんな話をしに来たのですか?」

 だから、たかりに来たんだって!
 しかし伯爵様は、シンディーお嬢様を第二夫人に迎えたいとは思っていないような感じがする。本当に妹としか見てないってこと? 微妙な反応をしていた。
 でもこの国での第二夫人って、貴族の中でも本当に裕福な人か高位の貴族くらいしか迎えないよね。こんな貧乏伯爵家には不釣り合いだよ。持てるとしたら愛人くらい……
 この男爵親子は本気で私にたかる気でいるわ。

「いや、シンディーなら二人を支えることが出来るだろうと思ってな。いい話だと思うのだが……
 夫人も前向きに考えているようだし」
「うちみたいな伯爵家が第二夫人を迎えるなんてあり得ませんよ。それにシンディーは妹です」

 あらら……、シンディーお嬢様が泣きそうになっているわ。
 せっかく兄様が好きって言ってくれたのに。もしその気持ちを受け止めるようなら、私はすぐに身を引こうかと思っていたのに。

「失礼ですが、お嬢様はおいくつになりますの?」

 この会話に年齢は関係ないが、何となく気になって聞いてみた。

「……二十三歳になりますわ」

 私より四つも歳上? ……で、そんな可愛らしいドレス?
 だから貴族学園で見たことがなかったのね。二歳差までじゃないと同じ時期に在学出来ないもん。
 二十三歳ならそろそろ本気で相手を見つけないと。ふふっ、譲ってあげようか。

「伯爵様、二十三歳にもなる可愛いお嬢様が〝兄様が好き〟とまで言って下さっているのですよ」
「エレノア、私は第二夫人は要らない」

 そんな必死な顔しなくても分かるよ……。だって貧乏なんだもん。顔だけの伯爵様なりに、節約して生活しているのは知ってるし。

「第二夫人が要らないのでしたら、私が身を引きましょう。すぐに離縁いたしますので、お嬢様を正妻として迎えてあげて下さいませ」
「エレノア……、何を言って?」
「伯爵様が初夜の日に、私にあのような話をされた理由がやっと分かりましたわ。仲の良い二人を引き裂くようなことをして申し訳ありませんでした。
 仕事を優先する至らない妻よりも、伯爵様をお慕いしているお嬢様が妻でいて下さった方が幸せでしょう」

 顔だけの伯爵様に嫌味を言って、ストレス解消する鬼嫁。
 それくらいはいいでしょ? こっちは結婚詐欺に合ったようなものなんだから。

「あれは違う! シンディーは本当に妹としか思っていないんだ」

 アラフォーおばちゃんの記憶が戻る前のエレノアだったら、バード男爵に言われたことに傷付いたり、シンディーお嬢様の存在を気にしたりしたかもしれないけど、今の私はそんなのどうだっていいの。

 私はただ、伯爵様も男爵親子も腹が立ったから、少しは困ればいいと思ってこの話をしているだけなんだよー!
 白い結婚が認められる時期まで我慢しようかと思っていたけど、思った以上に金儲けが上手くいっているから、今すぐに離縁してもいいや。

「夫人! 私達親子は君たちの離縁は望んでいない。シンディーを第二夫人にしてくれるだけでいいんだ。三人で仲良くしてくれたらいいじゃないか」

 仲良く出来るわけないし!
 しかも、金蔓にいなくなられるのは困るって反応してる。うちはサイフは別だって話をした方がいいかな?  いや、また何か口を出してきそうだから今は言わない方がいいよね。

「いえ。お嬢様が可哀想ですし、至らない妻は必要ありませんので、私は身を引きますわ。お嬢様の愛を応援したいと思います。
 離縁するにあたって、まだ結婚して日が浅いので、持参金二億は返金されますよね? それは私の両親に返して下さると助かりますわ。
 邪魔者の私はこれで退席しますので、後は三人で話し合って下さいませ。失礼致します」

 困る伯爵様と男爵親子を見てスッキリした鬼嫁は、笑顔で退室するのであった。
 その後、バード男爵と令嬢が私を訪ねてくることはなくなった……
 


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