君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

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閑話 アブス子爵令嬢

 私にはずっと好きだった人がいる。
 その方はアラン・ロジャース伯爵様。私より少し年上の落ち着いた大人の方だ。

 ロジャース伯爵様は、アイスブルーの綺麗な瞳にダークシルバーの髪色の凄い美形の持ち主。
 第一印象は冷たく見える人なのだけど、実はとてもお優しいお方…。




 私はある夜会でロジャース伯爵様に親切にして頂いてから、あのお方に恋をしてしまった。
 
 それは、まだ私が社交慣れしていない頃の話。


 夜会に参加した私は、他の人にぶつかってしまい、うっかり飲み物をこぼしてしまったことがあった。

「ちょっと、貴女!貴女のこぼしたジュースが私のドレスにかかってしまったわよ。」

 少し年上の、派手なドレスを着た気の強そうな令嬢に、私のこぼしたジュースがはじいてしまったようだ。

「も、申し訳ございません…。」

「どうしてくれるのかしら?貴女が弁償してくださるの?」

 私だって、誰かにぶつかられたからこぼしてしまっただけなのに…。
 何も言い返せずにいた時だった…

「失礼!さっき偶然見ていたが、彼女は誰かにぶつかられてジュースをこぼしてしまっただけだから悪くない。
 まだ夜会に慣れてないようだし、許してやってくれないか?」

「……そうでしたの。分かりましたわ。次からは気を付けて下さいまし!」

 令嬢はそう言って、どこかに行ってしまった。
 ふぅー。助かったわ…。

「ありがとうございました。」

「気にするな。あの令嬢のドレスの汚れなんて、全く気付かないくらいの汚れなのだし。
 あ、そこのキミ!ジュースで床が汚れてしまったから、綺麗にしてもらえるか?」

 ロジャース伯爵様は近くの給使に声を掛けて、こぼしたジュースの後始末をしてくれた。
 
「本当にありがとうございました。」

「大丈夫だ。では失礼させてもらうよ。」

 ロジャース伯爵様の親切でスマートな対応を見て、私は一瞬で恋に落ちてしまったのだ。

 素敵なお方だわ…。

 あれだけ素敵な方なのだから、婚約者か恋人はいるのでしょうね。私みたいな地味でパッとしない子爵家の令嬢とは違うのだから。

 しかし、その後の夜会でのロジャース伯爵様を見ていると、女性を伴って夜会に来ている様子はなく、誰かをダンスを誘うようなこともしていないことに気付いた。

 特別な存在のお方はいないのかしら?

 あれだけ見目麗しい方で身分も伯爵様なのに、ロジャース伯爵様に言い寄る令嬢がいないような気がする。
 見た感じが冷たそうで、近寄り難く見えるから良くないのかしら?本当はお優しい方なのに…。





「ララ。貴女はもうすぐ17歳になるけど、気になる殿方はいないのかしら?学園で仲良くしているお方はいないの?」

「お母様。私に異性の友人はいませんわ…。」

「そうね…。貴女は少し大人しすぎるから、難しいかしらね。
 お母様としては、ウチよりも爵位が高い方を望んでいるのだけれど。」

 野心家の母らしい考えだわ。
 でも、自分でそれは難しいのは知っている。私は特別綺麗ではないし優秀でもない。うちの子爵家だってそこまで裕福でもない。
 そんな私に、そんないい縁談の話があるわけないのに。お母様は高望みし過ぎなのよ…。

 でも…、正直にお母様に打ち明けてみようかしら?
 あの方は、伯爵家でウチより爵位は高いし、特別な存在の人がいるように見えなかった。

 もし、少しでも望みがあるのなら…。


「お母様。学園ではないのですが、私、好きな人がいます。
 優しくて素敵なお方なのです。」

「まあ!ララにそんな人がいたのね。どちらのお方なの?」

 お母様の声が弾んでいる。私にも好きな人ができたという事を喜んでくれているのね。

「そのお方は、私の片思いなのですが……、
 ロジャース伯爵様です!」

 私は勇気を出して打ち明けたのに。

 お母様の表情は一瞬にして厳しいものになっていた。



 
 


 アブスの話が続きます。


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