君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

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手紙

 夜会の次の日。


「奥様、伯爵様がいらしています。」

「要件を聞いてくれるかしら?」

「畏まりました。」


 1分後…


「奥様。伯爵様が昨日の夜会のことで、話がしたいそうです。謝罪もしたいので、もし今、お会い出来ないなら、都合の良い時間を教えて欲しいと言っております。」

 また面倒なことを…

「要件を手紙に書いて欲しいと言ってくれるかしら?」


 1分後…


「奥様。旦那様が、奥様に直接会えるまで、ずっとここで待ってもいいと話しております。どうしても会って話がしたいそうです。」

 ハァー。しょうがない。

「中に入って頂いて。」

 アブスの事件以来、避けに避けまくっていたけど、直接話がしたいなんて、何を考えているのかしら?
 あ…、昨日夜会に行くのに久しぶりに顔も合わせたし、話もしたばかりじゃないの。


 伯爵様が部屋に入って来たので、一応、メイドや従者達には部屋から出て行ってもらった。


 今日も浮かない表情の伯爵様だ。
 昨日の夜会で、この人もお疲れのようだわ。


「エレノア、昨日の夜会での話を聞いた。エイベル伯爵令嬢から酷いことを言われたと…。
 私のせいだな。すまない…。君を近くで守ることも出来なくて、申し訳なかった。
 次の夜会は、私にエスコートさせて欲しい。」

 わざわざそんなことを言うために来たの?

「伯爵様。エイベル伯爵令嬢は、昨日の夜会で王子殿下を怒らせたようでして、2年間は王宮の夜会に参加出来なくなりました。しばらくはまともに社交場に出て来ないでしょうから、心配ありません。
 夜会のエスコートは、私は大丈夫ですから、第二夫人を優先してくださいませ。
 私よりも第二夫人の方が、昨日の夜会でお辛い思いをされたのでしょうから。」

「あの女は妻だと思っていないし、憎しみしかない存在だ。エレノアより優先する理由はない。
 昨日…、王子殿下がエレノアを助けに入ったことも、エレノアの為にエイベル伯爵令嬢に激怒していたことも知っている。
 でも、私はエレノアの夫だ。1番近くで君を守りたいし、君が辛い時は支えたいとも思う。夜会だって、エレノアと2人で行きたい。」

 イライラするわ…。今更ご機嫌とりは要らないのよ。

「そういうことは伯爵様には望んでおりません。
 今更、何を言っているのです?迷惑ですわ。
 そんなことよりも、あの第二夫人をきちんと管理して下さいませ。あのお方がまた何かよからぬことをしたら、この伯爵家の恥になりますわよ。」

「あの女のことは、注意して見るようにしている。エレノアを睨みつけたりと、態度を見ても明らかに君を敵視していたからな。友人達やその夫人達からも、気をつけるように言われてきたくらいだ。
 君がいくら私を嫌がっても、私はエレノアとの関係を改善したいと思っている。
 普通の夫婦になりたいんだ…。」

 アブスと一緒にいた夜会で、友人やその夫人達からアブスに気を付けろって言われたの?アブスの目の前で?
 伯爵様の友人達も凄いのね。


 昨日、王妃殿下や王子殿下が他の貴族達が注目していたあの場で、アブスを攻撃した時なんて、鬼嫁はアブスの表情が怖くて見れなかったというのに…。


 しかし、普通の夫婦だって?バカじゃないの?

「普通の夫婦になることを拒んだのは伯爵様ですわよね?お忘れなく!
 私はもう無理ですから、第二夫人と普通の夫婦になってあげてください。あの方だって、伯爵様が優しくしてくれれば、もう少しまともになってくれるかもしれませんわよ。
 …もうよろしいですか?忙しいので。」

「私は何であんなことを言ってしまったのだろうな…。
 エレノアが許してくれるまで、私は諦めない。
 忙しいのにすまないな。…また来る。」

 寂しそうに微笑むと、伯爵様は出て行った。



 伯爵様ってドMなの?
 鬼嫁にここまで言われてもめげないなんて、凄いわ。



 その3日後くらいに、エイベル伯爵令嬢から謝罪の手紙が届いた。

 手紙の内容を簡単にまとめると…、

〝夜会で酷いことを言ってごめんなさい。
 でも、貴女も悪いのよ。友人である私には、不貞されて辛いことを素直に話してくれれば良かったのに。
 あの後、王家から抗議の手紙が届いて王宮に2年間の出禁をくらったし、殿下に怒られている姿を沢山の貴族に見られて恥をかいたわ。更には、両親からも怒られて謹慎生活を送ることになったのよ。
 ここまでくると、ロジャース伯爵夫人よりも私の方が可哀想でしょ?だから私を許してくれるわよね?
 ロジャース伯爵夫人から王子殿下に、私を許してくれるように頼んでよね。私達は友人なのだから当然でしょ?
 連絡待っているわ。急いでね。〟

 あの女……、手紙の内容までいけ好かないわ!

 
 そんな時、私は王子殿下に言われた言葉を思い出した。

〝もし何かあれば、友人なのだからもっと私を頼れ。〟


 ふふ!私みたいな鬼嫁を友人だと言って下さいましたわよね?
 じゃあ、友人である王子殿下にチクっちゃおうかしら…?


 鬼嫁は生まれて初めて王子殿下に手紙を出すことにした。
 その手紙の中にエイベル伯爵令嬢の手紙をそのまま同封してあげた。

 エイベル伯爵家の紋章が描いてある便箋だから、誰が見ても分かりやすいわね。ふふ…。


 王子殿下の所にちゃんと届いてくれるかしら?

 友人だから手紙くらい出してもいいわよね?

 検閲されて届かない可能性もあるけど、その時はいいや。




 

 手紙を出して数日後、王子殿下から手紙が届いた!
 なんと、私の手紙は検閲に引っ掛からなかったらしい。

〝エイベル伯爵令嬢は全く反省してないようだから、王宮への立ち入り禁止期間を2年から3年に変更し、更に社交を1年間禁止にした。
 社交禁止は母上が激怒して言い出したことだ。
 頼ってくれて嬉しかった。また何かあれば、私に知らせろ。〟

 ……そこまでしてくれたの?
 子供っぽくて大嫌いだけど、少し見直したわ。




 その後、私にエイベル伯爵令嬢から手紙が届くことはなかったが、メイド長の話だと、うちの伯爵様にエイベル伯爵様から謝罪の手紙が届いたらしい。



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