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閑話 ロジャース伯爵
目覚めると自分の部屋のベッドに寝かされていた。
「旦那様、大丈夫ですか?過労と心労だそうですよ。
しばらくはゆっくり休んで、栄養を摂るようにと侍医から言われました。
すぐに奥様をお呼びしますね。」
「…トーマスか?悪いな。」
エレノアを呼んだとしても、忙しいのに来てくれるはずはない。エレノアは私を嫌っているのだし、離縁を望んでいるのだから。
何の期待もしていなかった…。
しかし、そんな私の所にエレノアはすぐに来てくれる。
そして、いつものような感情のない瞳ではなく、不安そうな目で私を見つめ、優しい言葉を掛けてくれたのである。
正直、信じられなかった。これは夢なのか…?
その日から、エレノアは私の執務を代行し、私の食事や着替えなどの世話までしてくれるようになる。
あの女の悪夢にうなされた時には優しく励ましてくれたりもした。
「旦那様。せっかく奥様があそこまでしてくれているのですから、この機会に仲良くなれるようにして下さい。
奥様のような大金持ちのご令嬢として育ってきた方が、あんな風に旦那様のお世話をして下さるなんて、私は正直驚いております。
旦那様には勿体ないほど素晴らしい方ですよ。」
「私もそう思う。だが…、難しいだろうな。」
口ではそう言っていても、エレノアが私を心配してくれて、一日に何度も私の所に来て世話を焼いてくれるのはとても嬉しかった。
亡くなった両親ですらこのようにしてくれたことはなかったし、こんなことは人生で初めてのことだった。
弱っている時にこんな風に優しくされたら、ますますエレノアが好きになってしまう。
大切にしてもらっていると実感できるし、家族というものはこんなにも素晴らしいものなのだと、エレノアは私に教えてくれたようなものだ。
やはりエレノアと離縁なんて考えられない…
エレノアへの気持ちを再自覚すると共に、捨てられたらどうしようかという不安が襲ってくる。
エレノアから世話をされて嬉しくなるのと同時に、私が元気になったら、また前のように相手にしてくれなくなるのかと心配で押し潰されそうになるのだ。
そんな私は、また悪夢でうなされてしまった。
それはエレノアがこの邸から出て行ってしまう夢…。
必死にエレノアを追いかけようとするが、エレノアは私を振り返ることなく行ってしまった。
邸に取り残された私は、悲しくて、寂しくて…、絶望で死にそうになる夢だった。
「旦那様、おはようございます。
……顔色がよろしくないですね。大丈夫ですか?」
「トーマス…。エレノアは邸にいるよな?」
「は?奥様でしたら、まだ朝ですから部屋にいらっしゃるかと思いますよ。」
「エレノアに会いたい。今すぐに呼んでくれないか?」
「今ですか?……ハァー。分かりました。
少しお待ちください。」
エレノアはすぐに来てくれた。
我慢出来なかった私はエレノアの手を引き、抱き締めていた。
エレノアは突然のことに驚いているようであったが、私が夢のことを話すと、優しく背中をさすってくれた。
「伯爵様、怖い夢を見てしまって落ち込んでしまったのですね。
よしよし…。大丈夫ですわよー。ただの夢ですからねー。」
「エレノア、ずっとこうしていたい…。」
このままずっと一緒にいたいと思った。
「旦那様。少し奥様に依存し過ぎているような気がしますよ。」
「依存…?そんなつもりはない!
ただ私はエレノアを愛しているから、近くにいてくれることが嬉しいだけだ。」
「奥様は自分の事業が多忙なのにもかかわらず、旦那様の領主の仕事を手伝い、更に赤ちゃん返りしてしまったこの旦那様の面倒までみているのです。
奥様も顔色が悪いようですし、相当お疲れになっているように見えます。
優しくされるのが嬉しいからと、いつまでもそのままでは困りますよ、旦那様!」
「赤ちゃん返りだって…?
き、気をつける。」
しかし、私は自分が思っている以上にエレノアに依存していたようだ。
※いつも閑話が長くなってしまい申し訳ありません。
「旦那様、大丈夫ですか?過労と心労だそうですよ。
しばらくはゆっくり休んで、栄養を摂るようにと侍医から言われました。
すぐに奥様をお呼びしますね。」
「…トーマスか?悪いな。」
エレノアを呼んだとしても、忙しいのに来てくれるはずはない。エレノアは私を嫌っているのだし、離縁を望んでいるのだから。
何の期待もしていなかった…。
しかし、そんな私の所にエレノアはすぐに来てくれる。
そして、いつものような感情のない瞳ではなく、不安そうな目で私を見つめ、優しい言葉を掛けてくれたのである。
正直、信じられなかった。これは夢なのか…?
その日から、エレノアは私の執務を代行し、私の食事や着替えなどの世話までしてくれるようになる。
あの女の悪夢にうなされた時には優しく励ましてくれたりもした。
「旦那様。せっかく奥様があそこまでしてくれているのですから、この機会に仲良くなれるようにして下さい。
奥様のような大金持ちのご令嬢として育ってきた方が、あんな風に旦那様のお世話をして下さるなんて、私は正直驚いております。
旦那様には勿体ないほど素晴らしい方ですよ。」
「私もそう思う。だが…、難しいだろうな。」
口ではそう言っていても、エレノアが私を心配してくれて、一日に何度も私の所に来て世話を焼いてくれるのはとても嬉しかった。
亡くなった両親ですらこのようにしてくれたことはなかったし、こんなことは人生で初めてのことだった。
弱っている時にこんな風に優しくされたら、ますますエレノアが好きになってしまう。
大切にしてもらっていると実感できるし、家族というものはこんなにも素晴らしいものなのだと、エレノアは私に教えてくれたようなものだ。
やはりエレノアと離縁なんて考えられない…
エレノアへの気持ちを再自覚すると共に、捨てられたらどうしようかという不安が襲ってくる。
エレノアから世話をされて嬉しくなるのと同時に、私が元気になったら、また前のように相手にしてくれなくなるのかと心配で押し潰されそうになるのだ。
そんな私は、また悪夢でうなされてしまった。
それはエレノアがこの邸から出て行ってしまう夢…。
必死にエレノアを追いかけようとするが、エレノアは私を振り返ることなく行ってしまった。
邸に取り残された私は、悲しくて、寂しくて…、絶望で死にそうになる夢だった。
「旦那様、おはようございます。
……顔色がよろしくないですね。大丈夫ですか?」
「トーマス…。エレノアは邸にいるよな?」
「は?奥様でしたら、まだ朝ですから部屋にいらっしゃるかと思いますよ。」
「エレノアに会いたい。今すぐに呼んでくれないか?」
「今ですか?……ハァー。分かりました。
少しお待ちください。」
エレノアはすぐに来てくれた。
我慢出来なかった私はエレノアの手を引き、抱き締めていた。
エレノアは突然のことに驚いているようであったが、私が夢のことを話すと、優しく背中をさすってくれた。
「伯爵様、怖い夢を見てしまって落ち込んでしまったのですね。
よしよし…。大丈夫ですわよー。ただの夢ですからねー。」
「エレノア、ずっとこうしていたい…。」
このままずっと一緒にいたいと思った。
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「依存…?そんなつもりはない!
ただ私はエレノアを愛しているから、近くにいてくれることが嬉しいだけだ。」
「奥様は自分の事業が多忙なのにもかかわらず、旦那様の領主の仕事を手伝い、更に赤ちゃん返りしてしまったこの旦那様の面倒までみているのです。
奥様も顔色が悪いようですし、相当お疲れになっているように見えます。
優しくされるのが嬉しいからと、いつまでもそのままでは困りますよ、旦那様!」
「赤ちゃん返りだって…?
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しかし、私は自分が思っている以上にエレノアに依存していたようだ。
※いつも閑話が長くなってしまい申し訳ありません。
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