君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

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閑話 ロジャース伯爵

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「エレノアはどこへ出かけたのだ?なぜまだ帰って来ない?」

「奥様は自分で事業をされているのですから、仕事で外出しなければならないこともあるでしょう。」


 エレノアがなかなか帰らない日、私は落ち着かなくなってしまった。
 もしかしたらあの夢のように、このまま帰って来なくなってしまうのではと不安になってしまったのだ。

 玄関の近くで待ち続け、やっと帰って来た姿を見た時は安堵してしまった。
 そんな時にエレノアから聞いたのは、あの義弟の誕生日を祝ってきたという話…。

 面白くなかった私は、部屋にエレノアを連れて行き、他の男の誕生日は祝って欲しくないと話していた。
 そんな私にエレノアは、義弟は誕生日を毎年祝ってくれているから、私だって義弟の誕生日をお祝いしたいと言うのである。

 その時になって、今までエレノアの誕生日を祝ってこなかったことを後悔した。

 大切な妻の誕生日すら祝わうことをしなかったくせに、その妻が仲の良い義弟の誕生日を祝ったことに嫉妬するなんて、何て情けない夫なのだろう…。


 次のエレノアの誕生日は私が絶対に祝いたい、今から約束したいと話そうとした時だった。

 疲れた顔をしていたエレノアの様子が変だと思ったら、私の目の前でエレノアが倒れてしまったのだ。


「エレノア!しっかりしろ…エレノア!」













「奥様は過労のようですね。しばらくは療養させてあげて下さい。」


 侍医はそう言って帰って行った。

 私はベッドで寝ているエレノアの手を握っている。

 こんな小さな手で、倒れるまで頑張ってくれていたのだな…。
 美しいエレノアの顔も、こうやって見てみると血色が悪くなっているのに、私はエレノアに甘えるだけで全く気付かなかった。
 
 エレノアが倒れた時、私の方が死ぬかと思ったくらいだった。それくらい私にとって大切な妻なのだ。



「旦那様、ここは奥様のメイド達にお任せしましょう。
 私達から大切な話がありますので、旦那様の部屋に戻って頂いてもよろしいですか?」


 トーマスとメイド長が私を呼びに来る。
 目が笑っていないことが分かった。


「…ああ。
 エレノアが目覚めたら、すぐに私を呼んでくれ。」

「畏まりました。」


 エレノアのメイド達に後を頼んで自分の部屋に戻る。




「旦那様、いい加減になさってください!
 奥様にとっての今の旦那様は、お荷物以外の何でもないですわよ!
 具合が悪くなって奥様が優しくしてくれたからといって、旦那様は奥様に甘え過ぎですし、依存しすぎです。そんな旦那様を奥様が怯えた目で見ていることに気がつかないのですか?
 こんなことを言いたくはありませんが、今の旦那様は奥様に執着しているようにしか見えませんわ。
 このまま行くと、旦那様は前伯爵夫人のようになってしまうかもしれません!
 しっかりして下さいませ!」

「私が母上のようだって…?」


 そんなつもりはなかった。でも、エレノアから怯えられたくはない。あの母のようになんてなりたくないのだ。


「旦那様。先程、ベネット伯爵家から使いが来ました。
 具合の悪い旦那様と奥様を補佐する為に、秘書官を派遣して下さるそうです。
 そのかわり奥様が目覚めましたら、実家のベネット伯爵家で療養させたいので、迎えに行くことを許して欲しいとのことでした。
 …よろしいですよね?」

「実家に帰ってしまったら、ここには戻って来なくなってしまうかもしれない…。
 そんなのはダメだ!ここで私がエレノアの看病をする!」


 エレノアと離れるなんてあり得ない!


「旦那様。ここにいては奥様はゆっくり療養できませんよ。
 付き纏って依存してくる、赤ちゃん返りした旦那様に看病されても、奥様は心休まるはずがないのです。
 目を覚まして下さい。そのようなことをして、奥様は旦那様を愛してくれますか?
 旦那様は、奥様が気の毒に思って優しくしてくれているのを愛情だと勘違いしていませんか?
 奥様に愛されたいのなら、今のままではいけませんよ。今の奥様にとって何が一番いいのか、よく考えて行動するようにして下さい。」


 今の私は、エレノアにとって重荷になっているということか。

 離れたくはないが、エレノアのためなら…
 エレノアが元気になるためには…



 エレノアが目覚めた後、私は彼女を実家に帰す事に決めた。
 辛いが、エレノアが元気になって帰って来てくれることを祈って待っていよう。
 私自身も体調を整え、エレノアが帰って来た時には、夫として支えることが出来るように変わっていかなくてはならない。


 だから…、実家に帰る君を抱きしめるくらいのことは許して欲しい。


 ただの里帰りなのに、離れることがこんなに辛いだなんて知らなかった。
 私は自分で思っている以上に、エレノアが大好きで愛してしまっているようだ。


 
 あの日、君を愛するつもりはないと言った私の方がエレノアを愛してしまい…、愛されたいと思うなと言った私の方が、エレノアからの愛を望んでいる。



 何も考えずに伝えたあの言葉は、呪いのように私達に絡みつき、いつまでも私達を苦しめ続ける……



 
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