記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ

文字の大きさ
24 / 133

閑話 エドワーズ公爵 2

しおりを挟む
 騎士団での仕事をして、ランチの時間を迎えた私は、天気がいい日であったので、外にランチに行くことにした。1人で街中を歩いてランチに行くのも、いい息抜きになるのだ。

 その時に、少し前を歩くサラサラの蜂蜜色の髪の町娘に気付く。もしかして、あの食堂の!いつもは一つに縛っているが、あの平民には珍しい綺麗な髪色は、彼女に違いないと思った私は、無意識に話しかけていた。

「あれっ?君はアンナさんの店の?」

 不思議そうに振り向く彼女。しかし、店の客だとすぐに気付いたようだ。彼女は眩しく微笑む。

「ご機嫌よう。騎士様はお仕事ですか?」

 ご機嫌ようって、自然に挨拶しているな。やはり彼女は元貴族令嬢らしい。
 話を聞くと、店が休みで街中を散歩していたらしい。もっと彼女のことが知りたくなった私はランチに誘っていた。女性の手を引いてまで、強引に誘うなんて、後で思い出して恥ずかしくなるが、人生で初めてのことだったと思う。

 せっかく誘ったから、落ち着いて食事が出来そうな店に連れて行く。彼女は、とても綺麗な所作で食事をしていた。
 これは、恐らく高位の貴族令嬢だったのではないか?子爵令嬢や男爵令嬢は、そこまで綺麗なマナーを身につけている令嬢は少ないように思う。彼女は仕草や言葉遣いにも品があるし、きっと伯爵家より上の家門出身だろう。しかし、没落した家門なんて最近は聞いてない。もしかして、何か理由があって家を追い出されたとか?
 思い切って彼女に家門を聞いてみると、平民だと言う。…絶対ウソだろうな。言えない事情がありそうだから、無理に聞くのはやめた方が良さそうだ。

 名前をダイアナと言う少女は、美味しそうに食事をしていて、何だか可愛い。私は、その姿に癒されてしまった。話していても全然疲れないし、むしろもっと一緒に過ごしたいと思った。こんな風に女性に感じるのは、初めてかもしれない。

 食事を終えて店の外に出ると、ダイアナは私の左腕の包帯に気付く。魔物討伐で怪我をしたと伝えると、彼女は私の左腕に手をかざすと、優しい光が彼女の手から出てくる。これは治癒魔法か?でも、前にも治癒魔法は試してみたが、効果はなかったのだ。恐らく今回も…。
 しかし、患部が何だか温かく感じ、皮膚のつっぱりがなくなり、腕が軽くなったような気がする。もしかして…。人前では絶対に包帯をとるようなことはしない私だったが、気になってしまい我慢出来なかった。包帯をほどいて腕の皮膚を見てみると、綺麗に治っていたのだ。
 …信じられない。今まで、あんなに苦しんで来たのに、彼女はあっさりと治してしまった。

 こんな凄いことをしてくれたのに、食事のお礼ですと言って、彼女は帰ってしまった。治癒魔法はとにかく高額だから、高い治療費を請求してもいいくらいなのに。彼女は無欲なのだろうか?しかし、彼女が私を救ってくれたのは間違いない。私も彼女の為に何か出来ることをしたいと思う。

 私の腕が治ったと両親や弟に報告すると、私以上に喜んでいた。よっぽど心配されていたようだ。本当に苦労を掛けたと思う。
 父と母は、私の腕を治してくれた治療師が気になるようだった。


 その事があってから、なぜかダイアナに会いたくて仕方がない私。彼女はそんな私の気持ちには気付かず、店に行くと他の客と同様に、普通に笑顔で迎えてくれる。
 私はダイアナに、治癒魔法の感謝を込めて、若い娘が好きそうなスイーツや花を持って店に行く事が多くなった。しかし、その様子を見ていたであろう他の客までダイアナに差し入れを持って来るようになる。正直、面白くなかったし、ダイアナには私以外の男からは、何も受け取って欲しくないと思ってしまった。

 恐らくこの気持ちは、彼女を独占したいと思う気持ちだ。
 その時に私は、ダイアナに恋をしているということに気付くのであった。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」  私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。 「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」  愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。 「――あなたは、この家に要らないのよ」  扇子で私の頬を叩くお母様。  ……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。    消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

処理中です...