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再会したくなかった人
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治療院に出勤すると、仕事開始前に治療師や事務官、警備の聖騎士が集められる。
治療院の院長が新しく配属になった聖騎士を紹介するらしい。替え玉やスパイを防止する為に警備の都合上、新しく配属になった人は必ず皆に紹介するようだ。
まだまだ下っ端ペーペーの私は先輩や上司の後に並ぶので、院長の横に立つ新人の聖騎士の顔はハッキリは見えなかった。しかし、人と人の間からチラッと見えた姿に血の気が引く。
……公爵様のムカつく弟に似ている!あの黒髪に紫の目とか見た事あるし。騎士団にいるとは言っていたけど、聖騎士だったの?人事異動で治療院に来た?どうしよう。しかも、今、名前をアーサー・エドワーズって紹介されてた…。完全に弟だわ。
いや、でも1度チラッと会っただけだし、服装もあの時と違うから、案外分からないかな。いや、ダイアナってあの時に自己紹介をしていたな!うーん?どうだろう。とりあえず、休憩中とかも関係なくベールを被るようにして、関わらないようにして距離を取ろう。もしバレても、出て行けって命令を素直に聞き入れたのだから、文句を言われる筋合いは無いよね。
その日から、極力、騎士達とは距離を置いて過ごすようにした私。食事も自炊して、昼休みは寮の部屋に戻って食べるようにし、職場の食堂を利用するのは止めた。食堂を利用すると、食事中はベールを取るし、聖騎士のお兄さん達に話しかけられたり、相席したりするからね。とっても危険なのだ。
しかし、急に聖騎士達を避けて、食堂を利用しなくなった事で、反対に聖騎士のお兄さん達から心配されるようになる。
「あっ。ダイアナちゃん!ここにいたの?最近あまり姿を見なかったから、心配してたんだよ。お昼はちゃんと食べてるの?偶には一緒に食べたいから、明日とか大丈夫?」
前世の私なら、こんな風にイケメンからランチを誘われたら、飛び跳ねて喜んでいただろうね…。しかし、今は困るのよー!
「心配掛けて申し訳ありません。最近はあまり食欲が無かったので、食堂に行かなかっただけなのです。体調が戻ったら、後日、私からお誘いしてもよろしいでしょうか?」
何となく思いついた理由で、やんわりと上手く断ったつもりでいた。しかし、この一言が聖騎士達の中で噂になったらしく……。
「ねぇ、ダイアナ!クリスから聞かれたんだけど、何が辛いことでもあった?それとも、本当に具合が悪いの?ダイアナが食欲を無くしているとか、食事に誘っても断られるって、聖騎士達の間で噂になっているみたいよ。」
私の噂話をしないでよー!
アマリアさんには本当の事を話したいが……、話したら公爵様の弟の名誉を傷つけるかもしれないしなぁ。
「えっと、最近疲れが溜まっているようで、少しだけ食欲が無かったような気がしただけです。だから、しばらくは引きこもって、のんびりしようかと思って。」
「そうだったのね。何かあれば何でも頼るのよ!…そう言えば、週末にアーサーさんの歓迎会をやるから、ダイアナにも声を掛けて欲しいって言われてるけど、どうする?」
絶対に行かない!
「お酒を飲める程、そこまで回復してないので、今回はやめておきます。みなさんによろしくお伝え下さい。」
「ダイアナが飲みに行かないなんて…。」
アマリアさんは驚いていた。
いつもなら楽しく飲み会に参加していたはずの私が、珍しく欠席したことで、歓迎会で私が参加していないという話になったようだ。それによって、治療師にダイアナさんって可愛い女の子がいるんだけど、今日も来てないねーって、公爵様の弟の耳に入ってしまったことを、私は気付かないのであった。
そして、ある日の仕事上がり。
「ダイアナ、ちょっと急なんだけど、この後、少し付き合ってくれない?話したい事があって!」
珍しく深刻そうなアマリアさん。いつもお世話になっている先輩の頼みは断れないよね。話したい事があるって言うくらいだから、2人きりだろうし。
「はい。大丈夫ですよ。」
何だろう?彼氏と喧嘩でもしたから相談か?それとも、結婚するって報告かな?
アマリアさんと、神殿裏の庭園のガゼボに行くが……。そこにいたのは、私が1番会いたくない人だった。
「ダイアナごめんね。アーサーさんが貴女と話がしたいらしくて。私とクリスはあっちで待っているから、少しだけでいいから話を聞いてあげて欲しいの。」
そんなーー!
治療院の院長が新しく配属になった聖騎士を紹介するらしい。替え玉やスパイを防止する為に警備の都合上、新しく配属になった人は必ず皆に紹介するようだ。
まだまだ下っ端ペーペーの私は先輩や上司の後に並ぶので、院長の横に立つ新人の聖騎士の顔はハッキリは見えなかった。しかし、人と人の間からチラッと見えた姿に血の気が引く。
……公爵様のムカつく弟に似ている!あの黒髪に紫の目とか見た事あるし。騎士団にいるとは言っていたけど、聖騎士だったの?人事異動で治療院に来た?どうしよう。しかも、今、名前をアーサー・エドワーズって紹介されてた…。完全に弟だわ。
いや、でも1度チラッと会っただけだし、服装もあの時と違うから、案外分からないかな。いや、ダイアナってあの時に自己紹介をしていたな!うーん?どうだろう。とりあえず、休憩中とかも関係なくベールを被るようにして、関わらないようにして距離を取ろう。もしバレても、出て行けって命令を素直に聞き入れたのだから、文句を言われる筋合いは無いよね。
その日から、極力、騎士達とは距離を置いて過ごすようにした私。食事も自炊して、昼休みは寮の部屋に戻って食べるようにし、職場の食堂を利用するのは止めた。食堂を利用すると、食事中はベールを取るし、聖騎士のお兄さん達に話しかけられたり、相席したりするからね。とっても危険なのだ。
しかし、急に聖騎士達を避けて、食堂を利用しなくなった事で、反対に聖騎士のお兄さん達から心配されるようになる。
「あっ。ダイアナちゃん!ここにいたの?最近あまり姿を見なかったから、心配してたんだよ。お昼はちゃんと食べてるの?偶には一緒に食べたいから、明日とか大丈夫?」
前世の私なら、こんな風にイケメンからランチを誘われたら、飛び跳ねて喜んでいただろうね…。しかし、今は困るのよー!
「心配掛けて申し訳ありません。最近はあまり食欲が無かったので、食堂に行かなかっただけなのです。体調が戻ったら、後日、私からお誘いしてもよろしいでしょうか?」
何となく思いついた理由で、やんわりと上手く断ったつもりでいた。しかし、この一言が聖騎士達の中で噂になったらしく……。
「ねぇ、ダイアナ!クリスから聞かれたんだけど、何が辛いことでもあった?それとも、本当に具合が悪いの?ダイアナが食欲を無くしているとか、食事に誘っても断られるって、聖騎士達の間で噂になっているみたいよ。」
私の噂話をしないでよー!
アマリアさんには本当の事を話したいが……、話したら公爵様の弟の名誉を傷つけるかもしれないしなぁ。
「えっと、最近疲れが溜まっているようで、少しだけ食欲が無かったような気がしただけです。だから、しばらくは引きこもって、のんびりしようかと思って。」
「そうだったのね。何かあれば何でも頼るのよ!…そう言えば、週末にアーサーさんの歓迎会をやるから、ダイアナにも声を掛けて欲しいって言われてるけど、どうする?」
絶対に行かない!
「お酒を飲める程、そこまで回復してないので、今回はやめておきます。みなさんによろしくお伝え下さい。」
「ダイアナが飲みに行かないなんて…。」
アマリアさんは驚いていた。
いつもなら楽しく飲み会に参加していたはずの私が、珍しく欠席したことで、歓迎会で私が参加していないという話になったようだ。それによって、治療師にダイアナさんって可愛い女の子がいるんだけど、今日も来てないねーって、公爵様の弟の耳に入ってしまったことを、私は気付かないのであった。
そして、ある日の仕事上がり。
「ダイアナ、ちょっと急なんだけど、この後、少し付き合ってくれない?話したい事があって!」
珍しく深刻そうなアマリアさん。いつもお世話になっている先輩の頼みは断れないよね。話したい事があるって言うくらいだから、2人きりだろうし。
「はい。大丈夫ですよ。」
何だろう?彼氏と喧嘩でもしたから相談か?それとも、結婚するって報告かな?
アマリアさんと、神殿裏の庭園のガゼボに行くが……。そこにいたのは、私が1番会いたくない人だった。
「ダイアナごめんね。アーサーさんが貴女と話がしたいらしくて。私とクリスはあっちで待っているから、少しだけでいいから話を聞いてあげて欲しいの。」
そんなーー!
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