記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ

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結婚式とお兄様

 ここ数日、結婚式前の準備で殺気立つお母様とメイド達、何か言いたそうにしているお父様、そして、領地からやって来たお兄様の相手で疲れてしまった。

 お兄様とは私が毒で倒れてからずっと会ってなかったので、目覚めてから初めてお会いした。
 私を見たお兄様は、生き別れて死んだと思っていた最愛の妹が、なんと生きていました…みたいな感じの反応をしていた。

「…ソフィー。目覚めて良かった。グズっ…。辛かったけど、頑張ったね…。守れなくてごめんね。
 体はもう大丈夫かい?ソフィーに酷いことをしたヤツらは、全員消しておいたからね。もう辛い思いはさせないよ。だから、ずっと私と一緒にいよう。」

 ギューっと抱きしめて来るお兄様に、若干引く私。黙っていたら、相当な美形のイケメンなのにシスコンなの?しかも、サラッと爆弾発言があったよね…。
 この世界の兄妹の距離ってこれが普通なの?前世の兄達がこんなことしてきたら、罰ゲームか、何かのドッキリを疑うし、ビンタを喰らわすレベルだよ!

「お、お兄様…。ご心配をおかけしました。
 私は元気になりましたわ。そろそろ離して頂いても?」

「可愛い義妹に久しぶりに会えたんだよ。少しくらい抱きしめさせて欲しい。」

 どこが少しだ?

「…ねぇ、ソフィー。あの男と結婚するなんて、私は認めない。」

 あんな優しい口調で話していたお兄様が、急に低い声で耳元で囁く。私にだけ聞こえる声で…。
 ゾクっとした私は、無意識にお兄様を突き飛ばしていた。

「………!」

 何なの?この人怖いんだけど!
 その時だった…

「ロン!!いい加減にしなさい。ソフィーは結婚することに決めたのよ。義兄がいつまでもベタベタするのはやめなさい!」

「義母上、私はこの結婚には反対です。義父上も義母上も、結婚直前になるまで私に何も知らせてくれないなんて…、使用人や側近達に箝口令を敷きましたね!」

「早めに知らせたら、大騒ぎして、邪魔をしたでしょう?もう結婚は決まったのよ。静かにしてなさい!」

 お母様、怖っ!お兄様も迫力あるし、なかなかレベルの高い親子喧嘩だわ。

「…お兄様、怖いですわ。」

 記憶喪失になる前の、か弱いソフィアさんをイメージして、それっぽく言ってみた。

「……ソフィー。ああ、そんなに怯えないで。ごめんね。私はこの世で1番、ソフィーを甘やかすことを目標にしているから、ソフィーの前では怒らないように気を付けるよ。」

 はあ?何言ってんの?

「ソフィーは記憶喪失になる前は、お兄様が大好きってよく言ってたのよ。こんな感じでクセが強くて、口煩いところはあるけど、根は優しくて面倒見の良い義兄だったから、病弱で気の弱いソフィーはロンにベッタリだったの。
 前に婚姻した時も、辛かったら私がお嫁にもらってあげるから、いつでも帰っておいで…なんて、ロンはソフィーに言ってたわよね。」

 引くわー!ブラコンとシスコンの両思いってか?

「……兄妹ですよね?」

「ソフィー、兄妹でも私は養子なんだよ。だから、その気になれば結婚出来るんだ。私はずっとそのつもりでいたのに…。あの男!」

 あり得ない…。イケメンだけど、なんか裏表がありそうだし、性格がねちっこそう。優しいヘタレの将軍閣下の方がまだマシだわ。

「お義兄様。私はお義兄様を一生大好きなままでいたいので、結婚はいたしませんわ。
 結婚した後に何かで揉めて、憎しみ合う夫婦がいると聞きました。私は絶対にお義兄様を嫌いになりたくないので、このまま仲良し兄妹でいたいと思います。」

「ソフィー……。納得してないけど、あの男が何かしたら、強引にでも連れて帰って来るからね。」

「…ははっ。気を付けますわ。」

 顔が引き攣りそうだ。

「ロン!結婚式では大人しくするのよ。それが出来ないなら、病気になってもらいますからね!」

 お母様…、お義兄様に毒でも盛りそうな言い方はやめて。



 そして結婚式当日。

 朝早くから磨かれ、髪型とメイクを整えた後に教会に向かう。教会の控室で、メイクと髪型を仕上げ、ウエディングドレスに着替える。
 準備が終わったところで、お父様とお母様、お義兄様が呼ばれて入って来た。

「まあ!さすが王族が贔屓にしているデザイナーのドレスね。ソフィーに似合っているわ。素敵よ。」

「「………。」」

 お母様は純粋に喜んでくれているが、お父様とお義兄様の無口が気になる。

「将軍閣下がいらっしゃいました。」

「…なら2人にしてあげましょうか。ほら、行きますわよ!」

 逞しいお母様が、お父様とお義兄様を引きずって退室して行った。なぜかメイド達も退室していく。
 そこまで気を遣わなくても…。

 少しして控室のドアがノックされ、将軍閣下が控室に入って来た。



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