悪い魔女

底に

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第4章 ヴァイナー杯って何なんだ!?

敗者復活組の反撃!?③

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1010号室前に私達は着いた。

「よし、開けるよ」

ガチャリ キィィィィィ
 
ドアを開けるとトーヤが椅子に座り
手鏡をクルクルと回していた。

「お三方、俺に何かようかな?」

「ちょっと事情聴取の記録を見たいんだけど、調べてもいい?」

「どうぞ」

意外とすんなり入れてもらえ
私達は拍子抜けしたが、時間もないのでファイルを探していった。

しかしどこを探しても見つからなかった。

「ねえトーヤ、どこにあるか知らない?」

「さあ、用がすんだらさっさと出てってよ」

「そんな、、もう残りの部屋数も少ないのよ。ここが次、残るとは思えないわ!」

「いいや残るさ」

トーヤは手鏡を置いた。

「ここも重要な部屋なんだ。勿論、事情聴取をやったということで無くね」

「え、それってどういうこと?」

「さっきそっちはヒントを教えてくれなかった。俺も教える気は無いね」

「そんな!私達が知っていることは全て教えるわ!」

「今さらいらないよ」

トーヤは突っぱねる。

私とネコ、ベガは顔を見合せ
一斉に杖を出し、使役獣を出した。

「今ここであなたを失格させてもいいのよ?3人に勝てるのかしら?」

「あー、、俺とやるつもり?いいよ、来るのなら」

トーヤが使役獣を出した。
どうやら犬のイヌマのようだ。

ネコはナシコ、私はカラフルボージュ、ベガはガバキだ。

まずネコが動いた。

「先手必勝!『ギャップ』!!」

ギャップ、相手の意表をつく魔法。
要はネコだましだ。

しかしトーヤは平然としており
逆にネコがうつろな目をしている。

「イヌマ、ナシコへ噛みつき」

アンアン! ピョーン ガシャリ!! ギャッ

ナシコが大ダメージを受ける。

ハッ! ネコの意識がはっきりする。

「ナシコ!大丈夫か!?トーヤ、、何をしたんだ!」

「別に、俺は何もしていない。お前がかってにやっただけだ」

「くそ!ナシコ、『エヴァポレイション』だ!」

エヴァポレイション
霧を出させる魔法。

しかしナシコは何も反応しない。

「ナシコ!どうしたんだ!」

「ねえネコ、あなたさっきからどこを見て言っているの?」

「どこって、ナシコに向けてだよ!」

「ナシコは噛まれた後、私の横に来たわ」

「そんな!だってここに、、」

トーヤがまた座り、手鏡をクルクルと回し出す。

「目に見えるものだけが真実とは限らないんだよ。ネコさん」

「まさか、、鏡?」

ニヤリ トーヤがほくそ笑む。

「俺の杖の能力は鏡、相手の魔法を反射する。また虚像を置いて、対象の位置を分からなくさせることが出来る」

トーヤは続ける。

「催眠が得意なサンでも、見当違いな所に魔法をかけても上手くいかない。また仮に上手くいったとしても自分が催眠にかかってしまう」

クルクルクルクル パタン 手鏡が倒れる。

「俺は敗者復活でサンを操り、他の生徒も操った。ネコ、プラム、プリムを除いてな。プリムとプラムは同じクラスだ。基本的に言うことを聞いてくれる」

「トーヤ、お前、、」

「ネコ、お前だけが邪魔だった。お前の用心深さ、頭の良さ、俊敏さ。結果的に一緒に敗者復活戦を勝ち抜いた訳だが、どうしても倒しておきたかった。良かったよ、それが実現できて」

トーヤが机の下からネコのナシコを手で持ち、ぶら下げた。

「さて、ニナが見ているナシコも虚像だ。本物はここ、そしてこいつもまた、

パリーーン 鏡が割れた。
ナシコは粉々になり戦闘不能となる。

「ネコ、お前の負けだ。さっさと出ていけ」

「そ、そんな、、」

呆然と立ち尽くすネコ
しかしルールによりネコは敗退となる。

「ニナ、ベガ、、すまない。あとは頼んだよ」

ネコはおぼつかない足取りで帰っていった。

「くっくっくっ、こんな呆気ないとはな。いかに用心深くとも、最後の最後は爪が甘い。だからあいつはいつも負けるんだ」

ハーハッハッハッハッハ!!! トーヤは高笑いした。

「べ、ベガ、どうしよう」

「ネコの無念を晴らしたいけど、ここで時間を割く必要は無さそうだよ。一度304号室に戻った方がいいかも」

「そ、そうね。じゃあトーヤさんご機嫌よう」

私とベガは部屋のドアを開ける。

ガチャリ キィィィィィ

「え?」

開けた先は廊下、ではなくバスルームだった。

「そんな、確かにドアを!」

クックックッ トーヤが笑っている。

「だから言ったじゃん。目に見えるものが全て真実とは限らないよって。すでにここは俺の魔法によって虚像で満ち溢れている。ここでお前らを倒せば俺の優勝はほぼ確実。ピリアも寝ているだけだから簡単さ」

トーヤがじりじひと詰め寄る。

「まだ選択時間終了まで時間がある。楽しもうぜ!」

「くっ、ガバキいけ!」

ベガが、ガバキで応戦する。

しかし全て虚像でこちらの攻撃は全く当たらない。

トーヤのイヌマが今度はガバキを襲う。

アンアーン ガギィィンン ザシュッ オォォオオオ!!

「ガバキ!くそ!ここだと狭すぎて身体能力を高めても逃げ場が無さすぎる!」

「フハハ!!特待生を含む3人を相手にしても勝ったとなれば俺の株も上がる!ニナの使役獣は使い物になら無い!ベガさえやればあとは怖くないんだよ!」

トーヤの攻撃は止まらない。
ガバキはどんどんと弱っていく。

「くそ!このままではやられる!何か良い案はないか!?ニナ!」

「そんな!私に聞かれても!」

どうしよう。このままでは謎も解けずに敗退してしまう。

そんなのは嫌だ。
せっかくここまで来たのに。

散々使えないと言われてきた
練習獣のカラフルボージュ、ポコと一緒にここまで、最終試合まで来たのに…

ん?使えない?使えないのなら…

「ベガ、良い案思い付いたよ」

「何!どんな案?」

「上手くいくかは分からないけど」

「いいから!早くやろう!」

「じゃあこれを思いっきり投げて」

私はポコを渡す。

「え、でもこれって、君の使役獣じゃあ」

「いいから投げて!」

私は叫んだ。

ポコはぎょっとし

「ちょ、ちょっと!オイラはまだ了承してないけど!」

「まあ大丈夫よ。あんだけ特訓したじゃない」

「え、ちょ、ニナ!待ってよ!あれ、ベガさん、強く握りすぎだよ。や、優しくしてーーーー!!」

ポコも叫んだ。
最も、私にしか聞こえていないのだが。

ソォレ!! ビューーーン ボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨン

ガシャン!! イテ! アイタ! オォォオオオ!! アンアン!!

部屋中がめちゃくちゃになる。
勿論私達にも当たる。
まあボールだから全然痛くはないのだが。

「ひょえーーーー!」

ガシッ 最終的にポコはベガに捕まれ、落ち着いた。

ボサボサの髪でトーヤがよろよろと立ち上がる。

「いきなり何をするんだニナ。血迷ったか」

「うーん、おかしいと思ったのよね。声はするけどそこには実体がない。虚像だったとしても音が出る場所は変わらないはずなのに」

私は続ける。

「あなたは虚像を見せるけど、それは【どこかにある真実】であり、その姿そのものは崩せないはず。だから今部屋がめちゃくちゃなのも、あなたの髪が乱れているのものはず」

「そ、それがどうしたって言うんだ!」

「あなたは音を発する時、姿は遠ざけているけど、虚像を近づけ、音を大きくさせる。つまり、させていたの。でもその方向は変わらない。遠近が違うだけで」

今度は私がトーヤに近づく。

「ベガ、私に身体強化の魔法を」

「分かった」

『ストロング』! 

キュルルルリン!! コキッコキッ

「ポコも返して」

「はいどうぞ」

「お、お前ら!何をするつもりだ!」

「さあねっ!!!」

私は思いっきりポコを地面に叩きつけた。

ボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨン

「ハッ!どこを狙ってるんだ!下手くそめ!」

「どこも狙ってないわよ。ただこの方向には天井と地面を跳ね続けるだけ。ね」

「ま、まさか!」

「ポコ!『跳ねならさい』!!」

ポコの跳ね返る速度はさらに加速していく。

いかに遠近が分からなくても、イヌマがさっき出した鳴き声の方向に投げるのでなく、天井と地面との往復による投げていくのである。

どんな運動音痴でもいずれ当たる。

ボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨン アンアンアンアンアン!! アオーーーーーン!!!

一回一回は痛くはないが、何回も、しかもその都度、強度をあげたらそのダメージは何倍にもなる。

ポコにもベガにより強化魔法がかけられ、ついに

アンアン… バタッ

「い、イヌマ!イヌマー!!」

「どうやら戦闘不能、あなたの負けね。さっさとここから出ていって」

そして私は続けて

「ネコは確かに負けた。爪も甘い。でも誰よりも真実を求めていた。真実を偽るあなたより、よっぽど優秀だとは思うけどね」

「く、くそぉぉおおおおお!!!」

こうして残りの人はベガと私とピリア
3人で残り5部屋の内、どれかを選ばないといけなくなったのだった。
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