悪い魔女

第5章 南の島が呼んでいる～

最悪の登場～

ネコ達の前に突如現れた巨大な渦

それは地下王国の初代王
ユピテルが復活したのだと
その場にいる全員に
予感させたのだった。

やがて渦の中央から男が出てきた

男は空高く上がり、そして停止した。

〖空が近いな〗

男の一言目はそれだった。

〖地上の民よ。久しぶりだな〗

一言一言に重みがある。

海岸に集まっていた町の人々も
段々慌てふためいていく。

「ゆ、ユピテルだ！！」

「本当に復活したんだ！」

「逃げるべさ！命がいくつあっても足らねぇ」

町の人達の驚きように
ネコ達は圧倒される。

〖まあそう慌てるでない。私は別にお前達に復讐しにきたわけではない〗

ゆったりとユピテルは話す。

〖地上と地下、それを一つにしに来ただけだ。終わったらまた眠りにつく〗

ニヤリ　怪しげに笑い

右手を前にだし
人差し指を上から下へ

下げた。

ﾋﾞｭｩｩｩｩｩｳｳｳﾝ!!　ﾋﾟｼｰｰｰﾝ

渦が一瞬にして無くなった。

「な、なんだ？渦がなくなったぞ」

「おい…なんか揺れないか？」

ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ

ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ

揺れる大地

突然下がる水位　

そして

「お、おい！あれを見ろ！」

ｷﾞｭﾙﾙﾙﾙﾙ　ﾊﾞｼｬｧｧｱｱｱｱ!!!

水平線いっぱいに広がる巨大な津波が

町に、この国に襲いかかろうとしていた。

〖まずはここを元のように戻す。何もなかった、あの頃と同じように〗

「やめろ！！そんなことしたら町が！人々が死んでしまうではないか！」

「お願い！子供もいるの！」

〖ほう、、あの時、あの時と立場が逆だなあ。クックックッ、まあいい。全て水に流そう。文字通りな〗

ｺﾞﾜﾝｺﾞﾜﾝｺﾞﾜﾝ　ｽﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞ

津波はどんどん近づいてくる。

ようやく事の重大さを理解したネコ達
町の人達同様に慌て始める。

「やば！私達もどこかに逃げないと！」

「でも逃げるってどこに！」

「山奥に！あそこまでは来ないよ！」

「無理だよ！こんな短時間であんなところまで！！」

「転移魔法を使おう！それなら間に合う！」

「町の人達はどうするの？魔法が使えない人もいるのよ！」

「そんなこと言ったって！自分達で精一杯だよ！！」

どんどん近づく津波。

「こんな時、、ニナなら…」　　

混乱に渦巻く地上。

この状況下でただ一人
ユピテルだけが
高笑いしていたのだった。