悪い魔女

底に

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第5章 南の島が呼んでいる~

それでも私達は~

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昔、この国は一つだった。
そして相続争いで分裂。

しかし本当の歴史は異なり
老人はそれを今語り始める。


ξξξξξξξξξξξξξξξ

海に面し、山にも恵まれ
この国は豊かで平和じゃった。

しかし厄介な疫病が流行した。
感染はどんどん広がり
どんな薬を使っても治らなかった。

国は隔離という方法で
感染した人々を山へと追いやり
出てこられないようにした。

中には子供もおり
満足な食事もとれないまま
亡くなった人もいた。

助けを求めても、自分が感染したくないので、見てみぬ振りをした人が多くいた。

やがて新薬が見つかり
感染の流行は収まった。

しかし山には隔離された一族がまだいるとされ、夕方や暗くなったら近づかないように言われ続けた。

それからと言うもの、災害などがあれば、そこの王の怒りによる仕業と考えられ、貢ぎ物やお供えの意味も込めて、お寺などが建てられたそうじゃ。

じゃが一方で、隔離されながらも生き延びた住民がおり、彼らは山の奥底に穴を掘り海底へと暮らせるように順応していった。

国のトップはそれらを知っていたが、歴史を改編し、復讐を恐れ、伝説を受け継いできた。

ξξξξξξξξξξξξξξξ

「そして悪い魔女により、伝説は本当になった。ユピテルは初代の王でも何でもなく、ただ悪い魔女が作り出した殺戮兵器じゃ」

「そ、そんな歴史が…でもなんでそれじゃあ私達を襲ったの?」

「それはワシが地下王国、ヘラクレイオンに潜入しやすくするためじゃ。ワシはしばらく、ヘラクレイオンにおったが、いつまでたっても死なないことを町の人々に恐れられ追放された」

「魔女の呪いのせいで、、それで地上へ来たのね」

「そうじゃ、その時のルートを紙に書き、時を待った。そして君たちが現れた。15代目がしているブレスレット、あれも悪い魔女がくれたものじゃ」

「ええ!でも王家の紋章が入っているじゃない」

「悪い魔女は地下王国の王に嘘の情報を与えた。15代目の血によりユピテルは作動すると。それは王家のブレスレットを持ったもののみが操れると」

「でもなんでそんな嘘を…」

「ワシへ望みを叶えるため、というのは建前で、実際は混乱を混沌を楽しみにしていたんじゃと思う。好きな食べ物を最後まで取っておくみたいに」

「悪い魔女はじゃあどこかで今の光景を見ているのね」

「そうじゃ。ブレスレットによりワシは15代目を洗脳し、ワシの元へ来るように仕向けた。しかし海流が昔と異なり、激しく頭を打たれ記憶喪失に。洗脳も効かなくなった」

老人は話を続ける。

「そこに、君たちが現れたんじゃ。15代目を助け、そして地下へ連れ去られた。ワシはそれを逆手に取り、混乱に乗じてユピテルに近づく事ができたんじゃ」

「今動いてるのは、じゃああなたの意志によるものなの?」

「うむ、しかし具体的な指示は出せないのじゃ。とにかく、それがワシの望みじゃからな」

「でもそんな事無意味じゃない!あなたを傷つけた人は当の昔に亡くなっているわ!」

「うるさい!!お前らに何がわかる!!永遠に復讐のために生き長らえさせられている、このワシの気持ちを!!ああ!やっと死ねる!!」

老人は興奮し動き回る。

「破壊!破滅!絶望!狂喜!歓喜!」

くるくると回りながら老人はどこかへ行ってしまった。

「どうしよう。もうじきここも崩れる。地上もめちゃくちゃだと思う」

ブルススが静かに言った。

「俺、何も出来ずに死んじゃいのかな。空も飛べずに、火も吹けずに、誰も助けられずに…」

軽く笑いながらうつむく。

「トカゲってね」

私は話し始めた。

「陸に上がった最初の動物らしいよ。だから泳げるし、陸でも歩けるの」

「突然何を言っているんだ?俺の杖の能力なんて、何も使えないだろ。トカゲの能力なんて」

「この世に使えない能力なんてないわ。あるのは使能力だけよ」

「何が言いたいんだ?この状況を打開する作戦でもあるのか?」

「私一人では出来ないわ。だって私も火も吹けないし、飛べないもの」

「ふっ、笑えないって」

私はブルススに背を向け
顔だけ後ろを向き

「そして私とブルススだけでも解決できない。地上にいる仲間がいないとね。さあいきましょ」

「い、行くってどこに」

私はもう顔を振り返らず
ただ人差し指を上に向けた。

もう時間がない。
でもまだ間に合う。

私は不思議と強い歩みで
進むのだった。
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