悪い魔女

底に

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第7章 秋雨の神酒を君にー

FLY、AN D→

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「うわああああああ!!!!」

「ニナさん!手を!」

ヒュゥゥウウウウ ガシッッ

私とカブトは飛ばされながらもお互い手を握りあい、バランスを取りながら【自殺者の森】の方に飛ばされていった。

ヒューー ザザッ ザザッ ズザザザザッ 

アタッ イテッ ウウウウ

「いたたた。この木が無かったらヤバかったね」

「うう、そう、、だね。状況はそんなに変わってはないけど」

私達は辛うじて木に引っ掛かり、何とか無事だった。

だがまだハルピュイア達から完全に逃れられた訳でない。

ギャァァォォオオオオオオオオ!!!!

悲しみの谷から私達を探しに追ってきた。

「どうする!?あんなのに勝てるわけ無いよ!一旦引き返すか?」

「いや、今日を逃したら次は来月になるよ。何とかして羽根を持ち帰らないと」

そう、今日を逃したらチャンスは…

ん?そもそも何で今日なんだ?

わざわざ狂暴になるような。しかもハルピュイア達が密集しているような所を、本は指定してきたんだ?

羽根を取るならいつだっていいし、大人しい時間帯の方がいいに決まってる。

それでもこの時間、この場所でなければダメ…むしろ好都合なのか?


私は考える。

空を見上げる。雲が所々に掛かってはいるが、月が半分欠けて明かりを放っている。


「下弦の月…弦…天馬…はっ!もしかして!!」

私は辺りを見渡す。
偶然にもそこには何枚かの羽根が。
木の枝も何本か落ちている。

「ねえカブト、あなたって手先が器用なんでしょ?」

「勿論さ!僕は魔道具特化のトリノオスの生徒さ。しかもその特待生だよ!」

「じゃあじゃあ、これとこれ使って、、こんなの作れる?」

私は落ちていた枝で地面に絵を描く。

「それくらいどうってこと無いけど。それで何をするつもりなんだ?」

「ちょっとね。秋の伝統行事をね」

「で、伝統行事?」

上手く行くかは分からないけど
やって見るしかない。

カブトが作っている間に
私はもう一つ違うものを準備していた。

ガサゴソガサゴソ … ヨシッ!

「カブトできた?」

「そ、そんな早くできるわけないよ!」

「あら、特待生も大したことないのね」

「なっ、何をー!」

ギャォォオオオオオ!!!!!

いつの間にかハルピュイア達がすぐ近くまで来ている。

「ちょっと!早くしてよ!」

「待って!もうちょっとだから!」

ギョォォオオオオオオ!!!!!!!

ついに見つかった!

もの凄い勢いでこっちに向かってくる。

「ヤバいヤバいヤバいヤバい!」

「よし!出来たよ!ニナさん!」

バッ バッ ガシッ ガシッ

「ありがとう!そして」

『トランス』!

ボンッ!!

私はカブトを変身させる。

「いくわよ!それっ!」

ハイヤッ!! バシッ ヒヒィィィーン

パカラッ パカラッ パカラッ

私は森の中を駆け抜ける。

「それっ!」

ヒューーーーン バシッッ!! ギャオオオオオン!!

ハルピュイアの一体を、落ちていた枝と羽根でで射る。

ハルピュイアは羽で竜巻を起こすが、羽根一枚でもその効力は少しは持つ。

矢は勢い良く飛び見事命中
ハルピュイアは崩れ落ちていく。
矢じりには強烈な睡眠薬を塗っておいた。

補習中に先生を寝かして、遊びに行くための道具がまさかここで役に立つとは。

ギィィィイイイイイ!!!

「ニナさん!まだまだ来ますよ!」

バッサァァァァアアア!!!! グルグルグルグル!!

他のハルピュイアが竜巻を巻き起こす。

私達は宙を舞う。

しかしそれでも

「さっきの私達とは違うわ!それっっ!」

ヒュゥゥーーーン バシッッ!! グギァァオオ!!!!

空を舞う馬、文字通り天馬に乗り
私はもう一体も射ぬいた。

「よし!この調子でいけば!」

「ニナさんごめんね。いい忘れてたけど」

「ん?カブトどうしたの?」

カブトが言いづらそうに言う

「急いで作ったし材料枯れ木だからその弓、、、壊れやすいんだ。つまり…」

ボキィィ!

弓は盛大な音を立てて折れた。

「早く言ってよーーー!!」

「逃げろおおおーー!」

眠ったハルピュイアを
縄で馬と結びつけ
私達は全速力で逃げた。

幸運にも興奮しすぎたハルピュイア達は暴走し、私達を追っては来なかった。

木々をぎ倒し、魂達をむさぼ
谷にいた魂達も森へと逃げ惑い
辺りは霧のようになり視界を遮り
ハルピュイア達から隠れるような形になったのだった。

私は逃げながら後ろを振り返り
悲惨さと怒気で満ちている森を
恐ろしげに見つめるのだった。
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