ブーケプルズ

田古みゆう

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「オレは、妊娠させてしまったと思ったんだ。だから、責任を取るためにあいつとの結婚を決めた」
「やっぱり、自分で美香を選んでるじゃない!」

 私は、語気を強めて睨む。そんな私に、悲しそうな色を瞳に宿して、義博は弱々しい視線を返してくる。

「違う! そうじゃないんだ! あいつは、オレに烏龍茶だと偽って酒を飲ませ、酔ったオレと関係を持った様に偽ったんだ! その時に妊娠したと!」

 彼の言葉に、私は思わず目を見張った。まさか、あの子は本当にそんな事をしたのだろうか。

「だま、された?」
「そうだ」
「そんな……妊娠なんて、すぐにバレる嘘を?」
「あいつは流産した事にするつもりだったらしい。でも……」

 私の呆然としたつぶやきに、義博の瞳が揺れる。

「……妊娠は、してるんだ」
「は?」

 彼の口からもたらされた矛盾に、思わず間の抜けた声が出る。

「婚約中に、オレたちは……その……それは、覚えてる」

 義博は、言いにくそうに私から顔を背けた。美香の嘘は、既成事実となり彼を縛っている様だった。

「……あなたは、美香にそんな事をされたと知ってどうしたいの?」
「オ、オレは……茉莉花がいい」

 義博は不安そうにチラリと私を見る。私はその視線の中に、言葉にされていない言葉を読み取る。

「じゃあ、美香とは別れるの?」
「……それは……」

 口籠った彼が、自分の思いに押しつぶされそうになっているのは、一目瞭然だった。彼が、美香を、そしてまだ見ぬ我が子を裏切るわけがない。そんな事が出来る人ではない事を、私は知っている。

「義博……もう帰って」

 私は、すくっと立ち上がると、彼に背を向けた。

「茉莉花……」
「出ていって。私には、そんな気持ちはないわ」
「でも……」

 その後、義博の声に一切反応を示さない私の態度に諦めた彼は、静かに部屋を出ていった。一人になった狭い部屋に、ドアが閉まる音が大きく響く。

 ドアが閉まる時に微かに動いた空気の振動は、私の瞳に溜まった滴を揺り動かし、ポタリと絨毯に染みを作った。

 そのまま崩れる様に座り込む。

 カサリと何かが爪先に触れた。次から次へと溢れる涙を左手で拭いながら、右手で足元を探る。指先に触れたそれを引っ張った。リボンだ。涙を拭う。足元には、美香に渡された花束がバラけていた。

 私は唇を噛み、しばらくの間花を睨みつけてから、むんずと掴み立ち上がる。

「美香。おめでとう。あなたの勝ちよ」

 そう言って、私は、花と共に、友情と愛情をゴミ箱に投げ捨てた。





完結しました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
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