拾われ子だって、姫なのです。

田古みゆう

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高嶺の姫様(2)

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 漠然とした不安もあった。だが、それをどう言葉にしていいのか分からなかった。

「わたくしは……一体何者なのでしょう? お母様もお父様もわたくしをとても大切にしてくださるけれど、でも、お二人の愛情をどれだけ頂いても満たされない場所がわたくしの心の中にあるような気がするのです」
「それは……」

 志乃は静かに娘の顔を見た。

「きっと貴女自身が忘れている大切な記憶なのでしょうね」

 志乃の意外な言葉に千代は首を傾げる。そんな娘の様子に志乃はにっこりと微笑むと、優しく諭す様にして言った。

「貴女が求め続けていれば、いつかきっとその場所を埋めることができるかもしれません。ですから、納得できるまで考え抜きなさい。もしかしたら、貴女が求めるものが分かったその時が、貴女がわたくし達のもとから巣立つ時なのかもしれませんね」

 志乃は少し寂しそうにそう言うと、千代の髪を優しく撫でた。千代は母のその手の温もりを感じながら、その心地よさに目を閉じる。

「……太郎は何かを知っているようなのです」

 千代は呟いた。志乃の目が微かに見開いたが、その動揺を娘には悟らせないよう志乃は静かに相槌を打つ。

「そうなのですか」
「そうなのです。でも、何度聞いても教えてくれないのです」

 唇を小さく尖らせる娘の様子に、志乃は小さく息を吐く。太郎が何を知っているのかは分からないが、それでもきっとそれは、千代の今後に重要な何かなのだろう。

 そう考えた志乃はしばらくの間無言で娘の頭を優しく撫で続ける。

 そんな母を不思議に思った千代が目を開けると、いつもよりも寂しそうでありながら、どこか慈愛に満ちた眼差しで自分を見つめる母の顔がそこにあった。

「お母様?」
「ああ、何でもありません。それで? どうして太郎は教えてくれないのです?」

 志乃は、千代の髪に絡めていた自身の指をそっとほどくとそう聞いた。千代は少し真面目な表情になって言う。

「太郎にそれを問うと……はぐらかされるのです」
「……そう……ですか」

 志乃はそっと目を伏せた。

「わたくしは……知りたいのです。どうしたら太郎は教えてくれるでしょうか?」

 そう言って千代は志乃にすがるような目を向ける。

「そうね……」

 志乃は少しの間考えた後に言った。

「太郎は聡い子です。太郎が貴女に告げないのは何か理由があるのでしょう。太郎が話すべきだと判断したその時が来れば自ずと話してくれるはずです。それまで待つしかないわね」
「やはり、そうですか」
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