拾われ子だって、姫なのです。

田古みゆう

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格下の姫様(13)

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「ふふ。ありがとう」

 そう言って千代が微笑むと、太郎はホッと安堵したように表情を緩める。しかしそれは一瞬のこと。太郎の眼に真剣な光が宿った。

「しかし、でしたら何故なにゆえあのような事を仰ったのですか? 吉岡家に嫁ぐなど」

 太郎の問い詰めるような口調に、千代は視線を落とす。そして、ポツリと呟いた。

「……だって」
「はい?」

 聞き取れず問い返す太郎に、千代はキッと顔を上げて睨みつける。その瞳には涙が浮かんでいた。

「だって! ああでも言って追い払わないと、旗本の言うことは流石に聞き流せないでしょ!」
「え?」

 思いもよらぬ言葉に太郎は言葉を失った。そんな太郎の様子に構わず、千代は堰を切ったように話し続ける。

「わたくしだってそれくらいのことは分かっているわ。旗本の言うことは絶対ですもの。相手が格上の家である以上、わたくしの意志など関係ない。それは分かっているけど……」
「姫様……」

 千代の目には大粒の涙が浮かぶ。溢れる涙をそのままに、千代は拳を固く握る。

「それでもわたくしは嫌だったの! もしも先方の家から正式に縁談を申し込まれでもしたら、お父様だって断ることは出来ないでしょう? そうなればわたくしは本当に……」

 堪えきれず千代はわっと泣き出した。そんな千代の様子に太郎はオロオロとするばかり。

「確かに、正式な申し込みがされては、井上様でもその申し出をお断りすることは難しいでしょうが、でしたら何故御自分から奴に婚姻の条件など出したのです? 姫様の所望した物を手に入れて戻ってきたら、本当に姫様は奴の妾とされてしまうのですよ」

 太郎は小さくため息をつく。全く訳が分からないと、頭を振る太郎のその言葉を聞いた千代は、ハッとした様子で泣き止んだ。涙で濡れたままの瞳で太郎を見つめると、ニヤリと笑う。

「ふふふ、その点なら心配無いわ」

 先程までの悲しげな様子は何処へやら、千代はすっかり元気を取り戻していた。千代はコロリと表情を変えると笑い出す。

「あはは。大丈夫。そんなことにはならないから」
「大丈夫?」

 あっけらかんと笑う千代に太郎は困惑するばかりだった。そんな太郎に構うことなく、千代はいつもの調子で告げる。

「だって、精力が増大する水? 子宝に恵まれる石? そんな物あるはずがないわ。少なくともわたくしは聞いたことが無いわね。あの方たちだってそうよ。皆、知らない様だったわ。そんな物を当てどころもなく探すなんて無理に決まってるもの。見つかりっこないわ」
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