拾われ子だって、姫なのです。

田古みゆう

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旗本の姫様(4)

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 太郎は濡れ鼠を客間に運び込むと、志乃の言いつけ通りすぐに風呂へ向かって行った。

 残された千代と志乃は、濡れ鼠の着物を脱がせにかかった。太郎は軽々と抱えていたが、やはり意識のない人間は重いもの。二人は悪戦苦闘しながらも何とか濡れた着物を脱がせた。そして、思わず顔を見合わせる。

「まぁ……」
女子おなご……」

 二人は濡れ鼠の姿を見て、思わず声を上げた。固く巻かれたさらしがその下の膨らみを隠していることはすぐに分かった。しかし、濡れ鼠の身なりは武家の子息そのもの。

「お母様……この方は一体?」
「さぁ、見るからにご事情がお有りの様だけれど、今はとにかく冷え切ったこのお身体を温めないと」

 二人は困惑しつつも、それぞれ行動を開始したのだった。

 志乃は濡れた晒を慎重に解いていく。痩せてはいたが、女性らしい柔らかそうな曲線を持つ身体だった。年の頃は十六、七だろうか。まだ大人になりきっていない清らかな裸体は、傷一つなく、透き通るように白く美しかった。固く巻かれた晒がきつかったのか、晒を解くと苦しそうだった表情が少しだけ穏やかになった。

 志乃はお湯に浸した手拭いで身体を拭いてやり、千代は濡れた髪を丁寧に梳き、椿油で髪を整えた。

「それにしても、美しい方ですわね」

 千代は髪を梳きながら、眠っている濡れ鼠の顔をじっくりと見る。確かに女性にしては少々凜々しくもあったが、とても整った顔立ちをしていた。

「お肌もお綺麗ですから、どこかの姫君かもしれませんね」
「そのような方が何故我が家の門前に……」
「さて、それは分かりませんが、今はとりあえず着る物を。殿方かと思っていたのですけれど、女子おなごの様ですし、とりあえず貴女の着物を着せて差し上げなさい」

 母の指示で千代は立ち上がる。しばらくして何枚かの着物を手に戻ってきた。その間に志乃は濡れた身体を隅々まで拭いてやっていた。

 それから二人はせっせとその身体に乾いた着物を纏わせる。

「これで少しは温まるでしょうか」

 千代は心配そうに濡れ鼠の顔をのぞき込む。身体を締め付けるものが無くなったためか、先ほどより表情は険しくないが、それでも顔色はまだ悪く呼吸も浅い。とても良い状態とは言えそうにはなかった。

「しばらく様子を見ましょう。念の為、町医者に来てもらうよう使いを出しておきましょうか」

 テキパキと動き指示を出すその様はいつもの母であり、その様子に千代は先刻の様子を思い出しつつも、ほっと安堵の息を漏らした。
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