拾われ子だって、姫なのです!

田古みゆう

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惜別の姫様(5)

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「我らはもとよりそのつもりだ。お前の力がどのようなものなのかは、まだよくは理解しておらぬが、娘と息子が今宵旅立つというに、見送る事もなく寝こけるような薄情な親はここにはおらぬぞ。そうだろう?」

 正道は志乃と小十郎に同意を求める。二人は当然だというように頷き、心外だとばかりに口々にぼやく。

 千代はそんな三人に、胸がいっぱいになった。思わず泣きそうになるのをグッと堪える。

 これでもう思い残すことはない……。

 千代はそっと安堵の溜息を洩らした。千代から洩れた小さな溜息は、太郎の耳にだけ届く。太郎はそっと千代の手を握った。千代も何も言わず、太郎の手を握り返す。

 そんな二人の様子に気づかないまま、親たちは揃ってこれからの段取りをつけ始めるのであった。

 夜半過ぎ。月光のない深夜。闇に紛れて、約束通り基子は春陽を伴ってやって来た。

 客間へと通された基子は、正道と志乃、そして高山小十郎が居ることに目を見張る。

「何故このように人が……」

 基子は千代へと詰め寄った。春陽もどういうことだと剣呑な視線を千代に向ける。千代は基子を宥めるように手を取り、その目を見て静かに言った。

「こちらに控えますのは、わたくしの家族です。母は以前にもお会いしたことがございましたね」

 千代は親たちの方へ視線を移す。千代に促されるようにして、正道、志乃、小十郎が揃って深々と頭を下げる。基子は呆然と三人を見て、そして千代へと視線を戻した。

「まさか、この者どもは私が何者か知っておるのか?」
「ええ。先ほどわたくしがお話しました」

 平然と答える千代に対して基子は声を荒げる。

「何故だっ? 其方は何故そのような勝手を……」

 基子の怒りは尤もである。千代は素直に頭を下げた。

「お怒りは御尤も。ですが、これから基子様がこちらで暮らしていくうえで、本来の基子様のことを知っておいて頂くべきだとわたくしは思ったのです。勝手をお許しください。ですが、この方々の協力は不可欠です。基子様、どうかご理解ください」

 千代があまりに素直に謝るので、基子はグッと言葉に詰まる。そして助けを求めるように春陽を見た。しかし、春陽も何が何やらわからない様子で戸惑っているばかりである。基子はどうしたものかと、正道、志乃、小十郎を順繰りに見やる。

 三人は基子の視線をしっかりと受け止めた。本来であればしっかりと視線を合わせることなどできない身分の差があった。だが基子は、その身分を捨てるのだ。
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