新人魔女は、のんびり森で暮らしたい!

田古みゆう

文字の大きさ
193 / 461

新人魔女とお姉様(1)

しおりを挟む
 翌日、部屋の扉をノックする音でリッカは目を覚ました。

「ふぁい……」

 眠い目をこすりながら、扉の前まで行くと、そこにはニコリと微笑むエルナの姿があった。

「あ、エルナさん。おはようございます」
「おはようございます。リッカ様。まだ、おやすみでしたか?」

 リッカの寝起き姿に、エルナはクスッと笑った。リッカは自分の姿を見下ろして顔が熱くなる。髪はボサボサで、寝巻きも皺だらけ。とてもではないが人前に出られる姿ではない。リッカは慌てて部屋へ引っ込むと身支度を整え、改めてエルナを部屋へ招き入れた。

「ご、ごめんなさい。お待たせしてしまって……。それでエルナさん、朝から一体どうされたのですか?」

 リッカが尋ねると、エルナはペコリと頭を下げた。

「起こしてしまって申し訳ございませんリッカ様。いつも朝早くに工房へいらっしゃるので、てっきり起きていらっしゃるとばかり……それで、もし良ければ食堂へご一緒しませんかと、お誘いにきたのです」

 エルナの言葉にリッカは納得した。来たばかりの他人の屋敷だ。一人で動くには心細いのだろう。リッカは笑顔で頷いた。

「そうですね! 一緒に行きましょう」

 二人連れ立って食堂へ向かうと、そこにはすでに母の姿があり、数名の使用人達が忙しそうに動き回っていた。皆一様に、エルナの姿を認めると軽く会釈をする。エルナも会釈を返すと、彼らの方へ歩み寄って声をかけた。

「こちらを運べば宜しいのですか?」

 エルナが尋ねると、使用人達は目を丸くして動きを止めた。リッカも驚きに固まる。使用人達は、困惑した表情でとんでもないといわんばかりに手を横に振る。リッカは慌ててエルナの手を取り声をかける。

「え、エルナさん。我が家では、そういったことはお任せしているのですよ」

 リッカの声を聞いて、使用人達はそれぞれにホッと安堵の表情になり、仕事の手を早める。リッカの言葉にエルナもハッとした表情を見せた。

「私、ついいつもの様に……皆様にやっていただくのは、なんだか落ち着きませんね」

 エルナはそう言って恥ずかしそうに頰に手を当てた。リッカはそんなエルナに苦笑いを見せる。家の中のことを使用人に任せることは、リッカにとっては当たり前の事だ。だが、エルナにとっては当たり前ではない。これまではあちら側だったのだから。その事はリッカにも分かっていた。しかし、これからはそれが当たり前になる。

 エルナのスヴァルト家での生活はこうして始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

巻き込まれ召喚された賢者は追放メンツでパーティー組んで旅をする。

彩世幻夜
ファンタジー
2019年ファンタジー小説大賞 190位! 読者の皆様、ありがとうございました! 婚約破棄され家から追放された悪役令嬢が実は優秀な槍斧使いだったり。 実力不足と勇者パーティーを追放された魔物使いだったり。 鑑定で無職判定され村を追放された村人の少年が優秀な剣士だったり。 巻き込まれ召喚され捨てられたヒカルはそんな追放メンツとひょんな事からパーティー組み、チート街道まっしぐら。まずはお約束通りざまあを目指しましょう! ※4/30(火) 本編完結。 ※6/7(金) 外伝完結。 ※9/1(日)番外編 完結 小説大賞参加中

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

処理中です...