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新人魔女は、のんびり森で暮らせない?!(2)
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リッカは唇を噛み、眉間に皺を寄せる。
重圧から解放されたい。のんびりと好きなことだけをやって暮らしていきたい。
それがリッカの最大の望みだ。
しかし、それが都合の良い願いであることはリッカとて解っていた。リゼの無茶振りから始まったとはいえ、与えられた称号は国王が認めているのだ。それを何の功績もなさずに返上することが、如何に不敬な振る舞いとみなされるのか。家名に傷をつけ、両親や義姉にどれだけの迷惑がかかるのか。そして、きっと多くの反発が周囲からあったであろうに、それを振り切りリッカを推挙した張本人である師の面目を潰すことにもなってしまうだろう。それを思うと、称号を返上するなど出来るはずもない。
リッカが思い悩んでいると、弟子の心中などお構いなしに、リゼが淡々とした口調で言う。
「称号など無理強いして与えるものではないからな。君の好きにしろ」
「……え?」
「もちろん工房もだ。ギルドの仕事も大変なら辞めればいい。君が望まぬものならば全て辞めてしまえ。君は自由だ」
そう言うとリゼはチラリとリッカに視線を投げ、それ以上は何も言わずに作業場を出ていってしまった。
リッカは、そんな師の背中を呆然と見送る。自由。それは、リッカが何よりも望んでいるもの。しかし、それに手を伸ばせば、その代償として大切なものを失うことになる気がする。
リッカは、リゼが出ていった作業場の扉をじっと見つめた。リゼが残したあの視線。あれは、まだリッカがマグノリア魔術工房へ来たばかりの頃に向けられていた視線によく似ていた。そう、まだリッカのことなど微塵も信頼していない、あの冷め切った視線。
リッカはグッと拳を握りしめた。このままリゼの言う通りにすれば、リゼとリッカの関係は確実に変わってしまうだろう。それは、リッカにとっては耐え難いことだった。
リッカはギュッと目を瞑る。そして決意を固めるように自分の頬を両手で叩いた。リッカはリゼの後を追って作業場を飛び出す。
工房へ飛び込むと、リゼと使い魔のグリムが何やら言い合いをしていた。勢いよく開けられた扉にリゼとグリムがギョッとしたような顔を向けてくる。
「リゼさん!」
「なんだ、騒々しい」
リッカはそんな師を睨みつけながら、ずんずんと近づいていく。リゼの目の前で立ち止まると、その目を真っ直ぐに見据えた。
「簡単に言いますけどね。称号返上なんて、普通はおいそれと出来ないんです! もうやるしかないんです!」
重圧から解放されたい。のんびりと好きなことだけをやって暮らしていきたい。
それがリッカの最大の望みだ。
しかし、それが都合の良い願いであることはリッカとて解っていた。リゼの無茶振りから始まったとはいえ、与えられた称号は国王が認めているのだ。それを何の功績もなさずに返上することが、如何に不敬な振る舞いとみなされるのか。家名に傷をつけ、両親や義姉にどれだけの迷惑がかかるのか。そして、きっと多くの反発が周囲からあったであろうに、それを振り切りリッカを推挙した張本人である師の面目を潰すことにもなってしまうだろう。それを思うと、称号を返上するなど出来るはずもない。
リッカが思い悩んでいると、弟子の心中などお構いなしに、リゼが淡々とした口調で言う。
「称号など無理強いして与えるものではないからな。君の好きにしろ」
「……え?」
「もちろん工房もだ。ギルドの仕事も大変なら辞めればいい。君が望まぬものならば全て辞めてしまえ。君は自由だ」
そう言うとリゼはチラリとリッカに視線を投げ、それ以上は何も言わずに作業場を出ていってしまった。
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「リゼさん!」
「なんだ、騒々しい」
リッカはそんな師を睨みつけながら、ずんずんと近づいていく。リゼの目の前で立ち止まると、その目を真っ直ぐに見据えた。
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