僕のごちそう

田古みゆう

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ボクのごちそう

ボクのごちそう p.3

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 ボクはプルンとしたイチゴ色の唇をたくさん動かして、おにいさんの視線を誘う。

 十分に視線を引き付けたところで、ボクは物欲しそうに唇を追うおにいさんに、わざと唇を近づける。

「やっぱり、おに……!」

 最後の晩餐のメニューをはっきりと宣言しようとした瞬間、おにいさんは、自分の唇でボクの唇を塞いできた。

 疑似餌だとも知らずに、おにいさんは、どのくらいイチゴ色の唇を貪っていただろうか。

 ようやくボクの唇を解放したおにいさんは、色白で柔らかそうな頬を紅潮させていて、とても美味しそうに見えた。

「なに? 今の?」
「何って、キスに決まってるじゃないか」
「なんで?」
「なんでって……それは……僕の最後の晩餐! 僕の一番のごちそうは、いつだってキミだよ」

 照れ臭そうに頬を掻きつつ、おにいさんは明後日の方を向く。プックラとした二重顎がとても美味しそうだ。

 頃合かもね。我慢するのはもうやめよう。

 これで最期だとも知らず、ボクに向かって甘い笑顔を溢すおにいさんに軽く顔をしかめてから、ボクはそっぽを向いて言った。

「ごちそうかぁ。そうだね。やっぱりごちそうを食べなきゃね。よし、決まったよ。当ててみて」
「さっき、おに……って言いかけてたから、どうせ、お肉って言うんだろ? いや、おにぎりか?」
「ハ・ズ・レ! ボクのごちそうは……」

 ボクはおにいさんの方へ向き直ると、腰に手を回して、背伸びをした。そして、もう一度2人の唇を重ねる。

 そうしている間に、空からは、あの日と同じように綿菓子のような雪が舞い落ちてきた。

 僕らは重ねた唇を離し、互いに空を見上げる。

 おにいさんは口を開けて、空を見上げていた。ボクは隠していた触手をそろりと出すと、おにいさんが逃げないように、しっかりと絡め取る。でも、本当の姿にはまだならない。

 暗く重たそうな空から舞い落ちた綿雪を食べようと、おにいさんは、無心で口を閉じたり開いたりを繰り返している。

 あの日のボクと同じように……

 ボクは、おにいさんの耳元に口を寄せる。

「やっぱり、雪なんかよりも、ボクはごちそうを頂くことにするよ」
「な……」

 人の皮を脱ぎ捨てると、ボクは、素早く本当の口を大きく開いて、パクリとおにいさんを一飲みにした。

「ボクのごちそうは、おにいさんだよ。ご馳走様」

 お腹の中に納めたごちそうにそう声をかけ、脱ぎ捨てた人の皮を再び被ると、ポッテリと膨れたお腹をさすりつつ、ボクは、次の恋人を探すために歩き出した。





完結しました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
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