クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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クロとシロ(7)

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「うーん……まぁ、理由は色々とあるんだが、一番の理由はアレだな」
「アレ?」
「親睦を深めよう的な」
「はぁ……」

 私はいまいちピンとこなかった。そもそも私たち企画営業一課と、シロ先輩の同期、白谷しろやぎんの属する企画営業二課では、仕事内容や客層が違うせいもあってか、普段から関わる機会がないのだ。

 それなのに、わざわざ親睦を深める意味があるのだろうか。まぁ、同じ会社の社員なのだから交流はあった方がいいのかもしれないが。

 私が首を傾げていると、シロ先輩が苦笑しながら教えてくれた。

「もう少し先の話だけどな、どうやら一課とニ課、合同の仕事が入るみたいなんだよ」
「それで、今のうちにお互いのことを知ろうということですか?」
「まぁ、そういうことだな」
「ふぅん……」

 私は曖昧に頷いておいた。

 その後も私とシロ先輩は、最近の社内事情について語り合った。主に話題の中心となったのは、やはり新プロジェクトに関することだ。

「シロ先輩は今回の件、どう思ってるんですか? うまくいくと思います?」
「ん? どういう意味だ?」
「いや、ほら、うちの会社って結構保守的なところがあるので、新しいことを始めるのに躊躇いがあったりするじゃないですか。だから、今まで一課と二課は別々に動いていたわけですし」
「ああ~、まあな~」

 私の問い掛けに、シロ先輩は頭を掻きながら答えた。

「実際、課長もかなり悩んだみたいだしな」

 先輩の話によると、課長たちはかなり頭を抱えているらしい。それも当然だ。今までそれぞれの課がほとんど関わりなしに動いていたのだ。それがいきなり一緒に動けと言われても、うまく稼働するとは思えない。

 しかし、それでも課長たちは、なんとか実現させようと頑張っているのだという。

 私は話を聞きながら、ドリアの最後の一口を口の中に放り込んだ。それから、コーヒーをコクリと飲んで喉を整える。

 シロ先輩の方はというと、オムライスを食べ終えて、今度はしれっと追加注文したモンブランに取りかかっていた。相変わらずよく食べる人だ。見ているだけでお腹がいっぱいになる。

 私はシロ先輩の食べる姿を眺めつつ、なんとなく聞いてみた。

「シロ先輩って、将来どうするつもりなんですか?」
「へ? 何だよ急に」
「いや、そのプロジェクトを機に昇進とか考えてないのかなって」
「ああ、そういうことね」

 シロ先輩はフォークを器用に使いながら、モンブランのクリーム部分を掬いとった。そして、それを口に運ぶ。
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