クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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砂浜の結婚式(2)

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 ジャケットは、流石に暑いので、手に持っていく。姿見で全身を確認する。よし、完璧。

 バッグを手に取り、玄関に向かった。靴箱の上に置いてあるキーケースに手を伸ばす。

 ちょうどその時、スマホが鳴った。表示された名前を見て、一瞬ドキッとする。深呼吸をしてから、通話ボタンをタップした。

『もしもし? クロか? ちゃんと起きてるな』 

 電話の向こう側から、シロ先輩の声がする。私は努めて平静に、明るい声で返事をする。

「もちろんですよ。どうしました? 何か急用ですか?」
『いや、休日出勤なんてなかなかないからさ。寝坊とか、してないよなと思って』

 シロ先輩の言葉に思わず苦笑いを浮かべる。確かに休日出勤など、入社して初めてのことだ。しかし、社会人である以上、こういうこともあるだろうと思っていたので、特に問題はない。

「シロ先輩、私だってそれなりに社会人やってるんですよ。心配無用です。今から家を出るので、バッチリ時間前には着くはずです。それでは現地で」
『お、おう。気をつけてこいよ』

 シロ先輩との電話を終えると、私はドアの鍵をかけ、エレベーターへと向かった。

 エントランスを出ると、容赦のない夏の陽射しが目に刺さり、一瞬目を細める。空には雲一つなく、まさに快晴だった。

 駅に向かって歩きながら、シロ先輩のことを思い浮かべる。

(それにしてもさっきの電話、私が寝坊して遅れるって思っていたってことだよね? 私って、シロ先輩の中でそんなに子供っぽいのかなぁ)

 そう思うと、胸の奥がきゅんと疼いた。少しガッカリしながら、駅のホームに立つ。ほどなくして電車が来たので乗り込むと、運良く座ることができた。

 電車に揺られながら、窓の外を流れる景色を眺める。このところ残業続きだったので、こうしてゆっくりと外を見る余裕もなかった。車窓から見える風景を見ていると心が和む。流れる木々の緑や、立ち並ぶビルの白さが目に飛び込んでくる。時折、大きな入道雲が見えることもあった。こんなふうにゆっくりと外の景色を見ていると、時間を忘れてしまいそうだ。

 しかし、今日だけは時間に追われていなければならない。なぜならば、今日は私たちの企画が実現する日なのだから。

 目的の駅で降りると、改札口を出て、待ち合わせ場所に向かう。駅前には、既にシロ先輩の姿があった。

「おはようございます。朝から連絡をくれただけあって早いですね」

 そう声をかけると、シロ先輩は私の方を向いて、ニヤッと笑った。
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