クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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真実はすぐそばに(8)

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 私は必死に平静を保つように努めた。そうしてしばらく仕事をしていたところで、隣からシロ先輩の気配が消えた。シロ先輩は席を立ってどこかへ行ったようだ。

 気になってチラリと様子を伺うと、シロ先輩は隣の課の白谷吟と話をしていた。二人とも笑顔を浮かべていて楽しそうだ。二人がどんな会話をしているのか興味はあったが、盗み聞きするには少し離れている。私は、自分の仕事に集中しようと頭を切り替えた。

 しばらく集中したところで、ようやく一区切りついた。私は軽く伸びをして時計を見る。十二時半を回ったところだった。

 シロ先輩は、まだ白谷吟と話していた。シロ先輩は、真面目な顔で何かを話しているが、白谷吟はニコニコとしている。

 二人の邪魔をしては悪いと思いつつ、やはりどうしても気になったので、そっと立ち上がって、彼らの方へ向かった。

 白谷吟が先に私に気づいた。白谷吟は、シロ先輩の背中をポンッと叩いて、何か言った。シロ先輩は、振り返って私を見ると、白谷吟をうるさそうにあしらう。白谷吟は、私にヒラヒラと手を振って、「お昼だよね?」と言った。

 私は、ペコリとお辞儀をする。シロ先輩は、白谷吟を追い払った後、大きな溜息をつくと、私に「行くか」と声をかけた。席に戻り、外回りのための荷物を持つと、私とシロ先輩は会社を出た。

 シロ先輩は、何も言わずにスタスタと歩いていく。私はその背中を追いかけるように歩いた。白谷吟は、シロ先輩に何を言ったのだろう。シロ先輩の態度が、どこか余所余所しく感じる。

 もしかしたら、シロ先輩は白谷吟から昨日のことを聞いたのかもしれない。それで、私にどう接したら良いか分からなくなっているのではないだろうか。

 そうだとすれば、私から話を切り出すべきだろう。でも、一体何から話すべきか。考えれば考えるほど頭の中は混乱する。そうこうしているうちに、私たちはランチを食べるお店に着いた。

 会社からほど近いところにある洋食屋。私たちはしばしばこの店を利用する。慣れたように注文を終えて、料理を待つ間、私はずっと考えていた。まずは何を言うべきだろうか。

 シロ先輩は、私を見て黙っている。私は意を決して口を開く。すると、シロ先輩は私の言葉を遮るかのように口を開いた。

「お前さ、吟に何か言った?」

 私が戸惑っていると、シロ先輩は苦笑いをした。

「別にいいんだけどさ。いつかは言うことになっただろうし」

 シロ先輩が、私の顔色を伺うように見つめる。
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