本一冊で事足りる異世界流浪物語

結城絡繰

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1巻

1-1






 1 趣味は人を生き返らせる?


 突飛とっぴな出来事は、ある日突然起こった。
 その日、貯め込んでいたバイト代でずっと読みたかった本を大人買いした俺の気分は最高で、家まで待てずに、買ったばかりの本を読みながら歩いていたんだ。
 今思えば、人生最大のミスだった。
 そのせいで、交通事故に遭って死ぬことになったのだから。
 これで俺の人生はついえ、何もかも終了したはずだった。
 しかし、俺は生きている。
 正確に言うと、意識だけはしっかりとあって、目の前にトラックが迫ってきたところまでは記憶している。状況から考えれば、死んだと考えるのが妥当なのに……
 深い霧に包まれた空間の中、俺を呼ぶおかしな声に気がついた。

「ねえ、君は読書好きなんでしょ? 僕も本が好きなんだよねー」

 語尾に音符マークでも付きそうな口調。
 放っておけば歌い始めるのではないかと思えるほどに楽しそうなその声は、どうやら俺に質問しているらしい。

「……は?」
「いや、だから君も読書好きなんでしょ? 本はいいよねぇ、未知の世界に連れて行ってくれるところとか……」

 わずかに見えるようになってきた俺の目に映る人物が、勝手に語っている。
 まあ、読書好きなのは否定しないが……
 いやいや、それは置いておくとして、目を開けたら、こいつはいきなり話しかけてきたのだ。非常識というか失礼というか、いろいろおかしいんじゃないだろうか。
 まあいいや、聞きたいことは山ほどある。まずはひとつ確認しておこう。

「お前は……?」
「ん、僕? 僕は神様だよ」

 神様と名乗ったそいつの性別は女である。
 一人称が「僕」なのは、よく分からないが、たぶん「ぼく」ってやつじゃないかな。
 見た目は、身長は一六〇センチあるかないかというあたりで、黒髪で瞳も黒。やや大きめのダッフルコートを揺らして胸を張っている。

「神様? ふざけてないで真面目に答えろよ」

 俺の怒声に一瞬だけ目を丸くした少女は、愉快そうに笑いながら話し出した。

「まあ、信じられないよね。でも、僕は本当に神様なんだ。いくつもの次元にある世界のうち、一部の領域を管理してるんだよ。たとえば、進みすぎた文明を天災で滅亡させたり、争いが絶えない世界には救世主を派遣したりしてね」

 はぁ、頭が痛い。面倒だからこいつの話すことは信じるスタンスでいこうか。そのほうが楽だ。それにしても、こいつの言うことが正しければ、異世界というものはあるらしい。
 本の中の空想に過ぎないと思っていたが、実際にあるとなるとテンションが上がるな。

「信じてくれてありがとう! 確かに君がいた世界以外にも、たくさんの世界が存在しているよ。君の世界は比較的、平和だったみたいだね」

 口に出していないことにまで神様は答えてくれた。
 どうやらこいつは、俺の心が読めるようだ。
 これが神様ってやつの能力ってやつなのか。じゃあ、試しに心の中で問いかけてみよう。
 俺は死んだはずなんだが、どうして生きてるんだ?

「それはねぇ、ズバリ! 僕の気まぐれだよー。僕と同じくらいの読書好きが、あんな風にあっけなく死んでしまうのは悲しくてね。つい、霊体だけ抜き出してきちゃったんだよ」

 え? 何言ってるんだこいつは。ちゃんと体があるじゃないか……って、よく見ると俺の体は、青白かった。さらに膝から下は曖昧あいまいな感じになっている。この状態なら簡単に心霊写真が作れそうだ。

「君の肉体はバラバラになったからね。霊体しか持ってこれなかったんだ」
「まあ、今は体のことなんてどうでもいい。気まぐれでもなんでもいいが、呼び寄せたってことは、俺に何か用があるんじゃないのか?」

 肉体がないことは全然良くないんだが、とりあえず今は、俺がここにいる理由を知りたかった。死んだ人間をわざわざ連れてくるくらいなのだ。何かそれ相応の訳があるのだろう。

「よく分かったね! そうなんだよ。これから君には、あるお願いをしようと思うんだ。そのためにまず、君を生き返らせる。その後に僕の担当世界のひとつに行ってもらう。誰に行ってもらっても良かったんだけど、ちょうど読書好きな人間が事故死したってことで、君を選んだんだよ」

 聞きたいことが増えてしまった。
 生き返らせるって簡単に言ったが、神様というやつだからそんなことまでできてしまうのだろうか。それに読書好きだから選んだ? 全く論理が分からない。やはりこの神様、説明不足で色々と怪しい。
 そう思っていると、神様が少しショックを受けたような顔をして、何やら説明を始めた。

「怪しくなんてないよー。それで、お願いの内容なんだけど、ちょっとした手違いで〈神製かみせいの本〉というものを、とある世界に落としてしまったんだ。君にはその本の回収を頼みたいと思うんだ」

 そう言って、神様はヘラヘラ笑っている。ちょっとイラッとした俺は神様の肩を叩こうとするが、俺の手は神様の体を貫通してしまった。その状態のまま、神様は話し続ける。

「無駄だよー。今の君は霊体なんだから。まあ、そういうわけでよろしくね。詳しい説明は後でするよ。では、さっそく異世界にGO! グッドラック!」

 いや、グッドラックじゃねえよ! ていうか、お前のミスのためになんで俺が……って、あれ、だんだん意識が遠のい……て…………き……た…………

「ふふ、同じ読書家として、君には期待してるよ――」


   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「ん? ここは――」

 目を開くとそこには、鬱蒼うっそうとした森が広がっていた。
 地面に横たわっていた体をゆっくりと起こす。
 どうやら本当に、異世界とやらに飛ばされてしまったらしい。
 何故それが分かるのかというと、さっきからやたらテンションの高い声が脳に直接響いてくるからだ。

『やっほー、やっと起きた? ここは異世界だよ。僕の声が聞こえる? 聞こえたら右手を上げてほしいなぁ』

 俺は、黙って右手を上げた。

『ん、ありがとー。それじゃあ、さっきのお願いについて詳しい説明をしていくよ。ちゃんと聞いててねー。まず、君にはこの世界を旅して様々な経験を積んでもらうよ! 君がいた世界とは、だいぶ違うからねー。今の君なんて僕の〈神製の本〉に見つかれば、あっという間に殺されちゃうだろうなあ。せっかく生き返ったのに、またすぐ死ぬなんて嫌でしょ? 僕としても気分が悪いしねー』

 ちょっと待て。〈神製の本〉に殺されるってどういうことだ。本が噛みついたりしてくるのかよ。なんて、心の中で笑っていたら、また脳に声が響く。

『んー、噛みついてはこないけど、襲ってくることはあるよー。まあ、そのことについては今度話すよ』

 頭を掻いて苦笑する神様の姿が目に浮かぶ。
 ここでも俺の心が読めるのなら、なんで手を上げさせたんだよ。それに、「今度」とか「後で」とか、やたら説明を先送りにしてくるが、そんなにテキトーでいいのだろうか。

『大丈夫、大丈夫。とにかくある程度実力がついてきたら、本格的に〈神製の本〉を探しに行こう! それから、他に伝えなきゃいけないことは……そうだ! 君の新しい体は、神製だからねー』

 …………って、説明終わり!? 絶対にもっと必要だろ!
 あまりのいい加減さに思わずツッコミを入れる。

『お、ごめんねー。〈神製の体〉っていうのは、その名の通り神様こと僕が造った体のことなんだ。〈神製の本〉も同じようなものだね。これは自慢だけど、その体にはいろんな機能があるんだ。いちいち説明するには多すぎるから、主に使うと思う機能について説明していこうと思うんだけど……』

 神様の話はだらだらと続いたので、簡単に要約する。
 まず、〈神製の体〉の身体能力。
 これには俺も驚いた。まさか一発殴っただけで岩が砕けるとは思わなかった。前世の肉体とは比べものにならないほど強い。
 次に、神製の眼だ。〈神製の体〉の能力のひとつなのだが、この眼で、ステータスを見ることができる。RPGとかによく出てくるアレだ。
 試しに自分のステータスを確認してみると、こんなものが見えた。


 /////////////////////////////


【名前】   陵陵〈ミササギ リョウ〉
【職業】   異世界放浪者Lv0
【年齢】   17
所有能力ユニークスキル】〈神製の体〉〈万物をむさぼる常識外の本〉〈無から有を生み出す引用〉


 /////////////////////////////


 前世での俺の名前は、みささぎりょうである。
 はっきり言って嫌がらせだ。俺の両親に悪意があったとしか思えない。こんな名前のせいで小さい頃はよくからかわれた。まあ、今はそこまで気にしていないが。
 年齢も十七であっているし、職業が異世界放浪者になっているのにもなんとなく納得がいく。レベルというのも気になるが、今はスルーしよう。
 問題は、所有能力ユニークスキルの欄だ。
 なんだこの〈万物をむさぼる常識外の本〉と〈無から有を生み出す引用〉という厨二感ちゅうにかんあふれる能力は。もう少しマシな名称にならないのか?

『君も面白い能力を獲得したねー。んー、ちょっと待っててね。……ふむふむ、ミササギ君、まずは本を出したいですって念じてみようか』

 少し間を置いて、神様から指示を受けた。
 言われた通り、本を出したいと念じてみる。
 すると、何もない空間からいきなり古ぼけた本が落ちてきた。使い込まれた感はあるが丈夫そうで、革表紙の装丁も洒落しゃれている。一目でなんだか気に入ってしまった。

『気に入ってくれてよかったよー。それで、その本の使い方はいろいろあるんだけどさー……』

 ここの説明も長かったので要約すると……


 ① 生き物、もしくは他人の所有物以外の収容
 ② 収容した物の放出
 ③ 自己ステータスの書き換え
 ④ 他の本の吸収


 ①の能力は簡単に言えば、本がアイテムボックスになるということだ。収容したものは本に記載されていくらしい。
 ただし、生き物や他人の所有物は収められない。だったら万物という名は詐欺さぎではないだろうか。そう尋ねてみたが、字面がかっこいいからOKらしい。
 さっそく、さっき〈神製の体〉を試したときに砕いた岩を収容してみる。すると、岩は本に吸い込まれていき、跡形もなく消失した。
 恐る恐る本を開いてみると……


 ・岩(破片)


 と、白いページに一言だけ書かれている。おお、これは便利だな。これからは、重い荷物を持たなくて済みそうだ。
 ②の能力は、①とは逆に取り出す能力らしい。取り出し方は文字を指でなぞるだけ。実際にやってみると、見事にさっき収容した岩が出てきた。
 ③の能力はそのままだ。最初のページに俺のステータスが載っていて、変更したい箇所をなぞり、どんな風に書き換えたいかを念じれば、変えることができる。
 しかし、そうやって記載されている職業を変えても能力は変わらないし、年齢を変えても老けたり若返ったりはしないらしい。あくまで表面上のプロフィールが変わるだけである。
 とりあえず「異世界放浪者」なんて職業は目立ちそうなので、「旅人Lv3」に変えて、ついでに名前を「ミササギ」に書き換えておいた。旅人のレベルを3にしたのには特に意味はない。
 ④は、神様曰くかなり重要らしい。これは、この本に他の本を吸収させて、その内容を記録するという能力。つまり、本を吸収し続ければ、歩く図書館になれるということだ。
 とりあえず、俺が死ぬ前にまとめ買いした本を神様から餞別せんべつとして持たされていたので、それらをすべてこのチート本に吸収させてみた。
 本を開いてみると、次のメッセージが表示された。


 ・読みたい本を選んでください


 その下には、今吸収したばかりの本の題名が書かれてあった。とりあえず一つのタイトルを選んでみると、内容が表示される。
 これで本が読めるらしい。ちなみに本を選択する場合は、基本念じるだけでいいみたいである。なんとも便利な機能だ。
 さて、俺のステータスの話に戻るが、三つ目の能力である〈無から有を生み出す引用〉は、はっきり言って反則だ。この能力は、チート本の能力で吸収した本から文字を引用し、それを具現化するというものである。
 使い方は簡単。引用したい文字を指でなぞるだけ。なぞった箇所が赤文字になり、後は俺が念じればそれを物体として出現させることができる。
 説明のみでは分かりづらいので、とりあえずやってみよう。
 まず一覧から料理本を選び、「ピザ」の文字をなぞる。文字が赤くなったので、具現化と念じてみると、目の前に温かそうなピザが出現した。
 空腹だった俺は、さっそくそれを口に運ぶ。
 うん、普通に美味しい。
 気分が良くなった俺は、黙々とピザを食べ続けた。

『でしょ? 君の能力はかなり優遇されているほうだと思うよ。まあ、お腹も膨れたと思うし、そろそろ出発しよ……ん? どうしたの?』

 食事の手が止まり、食べかけのピザが手から落ちる。
 俺の呼吸が不自然に乱れたのを察した神様が尋ねてきたが、俺は返事どころか指一本動かせないでいた。
 なぜなら、俺の目の前には二メートルを優に超える巨体の鬼がいたからである。




 2 始まった流浪


「え……どうすんの? これ……」

 目の前にいるのは、ゲームなどで一般的にオーガと言われているやつではないだろうか。いやいや、絶対無理。普通に殺されるだろ。
 俺がバケモノを前に慌てているにもかかわらず、神様は呑気なアドバイスをしてくる。

『あぁ、オーガだね。まあ、能力を使うまでもないよ。その体ならね』

 そんなこと言われても、こんなバケモノに勝てるとはとても思えない。この場からすぐに逃げ出したくなったが、震える足が全く言うことを聞いてくれなかった。

「く、くそっ。動けよ……」

 そうこうしているうちに、オーガが攻撃してきた。右手に持った柱のような棍棒こんぼうを思いっきり振り下ろしてくる。
 頭部への直撃を避けたかった俺は、咄嗟とっさに左手を上げて防ごうとした。
 腕に伝わる大きな衝撃。あ、これは骨が折れるどころじゃないな。
 そう覚悟するが、結果は予想と全く違うものとなった。
 なんと、俺の左手にぶつかった棍棒が真っ二つに折れてしまったのだ。

『ほらね。大丈夫でしょ。今度は君から攻撃してみなよ』

 神様からそう言われ、俺は無我夢中でオーガに向かって拳を叩きつけた。構えも何もないただのパンチだったが、拳からオーガの体が破壊されていく感触が伝わってくる。
 周囲に破裂音が響き、オーガの肉体の一部が爆散した。腹に大きな穴が空いたオーガは、その場にゆっくりと崩れ落ちる。
 肩で息をしながら、俺はその光景を眺めていた。

『おっ、クリティカルヒットだね! 今のは運が良かっただけって感じだけど、初めての戦闘にしてはなかなか良かったよ。じゃ、気を取り直して出発しよう』

 そして神様からあたかも当然のように出発を促されたが、状況がさっぱり分からない。すかさず俺はツッコミを入れた。

「おい、神様。そもそもここ何処どこだよ」
『えーと、分かんない。僕も割とテキトーに君を飛ばしたからね。まあ、オーガの出る森ってことは人のいる町からそこそこ遠い場所かな。たぶん東に向かって歩けばいいと思うよー』

 テキトー過ぎる。こいつ本当に、俺に〈神製の本〉を探させる気があるのだろうか。
 とはいえ、頼れるのはこいつしかいないので、町に着くまでの間、俺はこの世界についていろいろなことを聞いてみた。
 まずこの世界は、剣と魔法のファンタジーな世界らしい。そして、先ほどオーガが出てきたように、魔物という存在もいるそうだ。
 あと、ステータスを見たときから思っていたが、レベルの概念もあるらしい。この世界のレベルはゲームなどに出てくるシステムと同じようなもので、経験値を得ることで上がっていき、レベルが上がれば能力も上がる。
 それと、条件を満たせばステータス欄に「職業」というものが追加される。レベルというのも、正確にはこの職業ごとのレベルを指しているのだそうだ。
 獲得した職業は多種多様の補正によって肉体を強化する。つまり、上手く条件を満たし複数の職業を手に入れれば、その分だけ強くなれるという寸法だ。
 しかし、神様によると俺はそれができないらしい。「異世界放浪者」が固定職扱いであるのが原因とのこと。どうせならファンタジー世界ならではの「戦士」や「魔法使い」などになりたいと思っていたので残念だ。それに一つしか職業を持てなかったら、他の人と比べるとずいぶんと不利になるんじゃないだろうか。

『いや、異世界放浪者は他の職業なんかより圧倒的に強いよ。レベルアップによる能力上昇率は一番高いし、他にも面白い「スキル」を覚えられるしね。重複できなくても充分だよ』

 神様によると、そんなこともないらしい。
 そして、今の説明から考えると、スキルという概念も存在するようだ。
 本当にゲームの世界だな。
 ちなみにスキルというのは、主に職業レベルの上昇によって得ることのできる能力や技のことである。特定の行動によって「獲得」でき、「発動」させることで様々な恩恵を受けられるようだ。
 ただ、便利な能力になるほど取得が難しく、獲得率は個人の才能に依拠いきょしているので、スキルそのものに希少価値があるそうだ。ステータスの所有能力ユニークスキルというのも、その一種なのだとか。
 なので、所有能力ユニークスキルの欄を目をらして見てみると……


 /////////////////////////////


〈神製の体〉 身体能力及び筋力の強化。各体内器官の強化
  スキル獲得率上昇


〈万物をむさぼる常識外の本〉 異次元収納。自己能力隠蔽いんぺい。本の吸収
  所有者の知識の吸収、能力化。所有者への知識還元


〈無から有を生み出す引用〉 文字の具現化


 /////////////////////////////


 おぉ、すごい。スキルの詳細が見られた。
 神様によると、俺の能力はまだ生まれたばかりで弱く、これから経験を積んでいくことで強化されていくらしい。今でこの強さなのに、さらに強くなるのか。
 本の能力の後半部分がややこしいが、要は普通の人と比べて、スキルや称号もガンガン獲得できるようになっているのだそうだ。本にあるまじき利便性である。
 まあ、俺にとってはメリットでしかないことなので、それだけ分かれば十分だろう。世界の法則にいちいちケチを付けていたらキリがない。
 そんな感じで神様にいろいろ聞きながら歩くこと数時間。途中で休憩を挟みながら進み、翌日には町に到着できた。
 通りはそこそこ賑わっており、人の往来が激しい。
 どこから見て回ろうかと考えていると、突然、頭の中に声が響いた。

『ちゃんと町に着いたみたいだね。じゃあ、そろそろ僕は仕事に戻るよ。君ばかり見ているわけにはいかないからね。じゃあ、頑張ってねー』

 そこで声は途切れて聞こえなくなった。唐突な別れだったが、別に驚いていない。アイツは常にこんな感じだったし。
 最後までテキトーなやつだったな。しかし、なんだかんだ言っても生き返らせてもらったので一応感謝している。〈神製の本〉もちゃんと見つけてやろうかな。まあ、しばらくの間は、レベルアップと異世界の探索を優先するが。
 意気揚々と町へ繰り出す。
 町の中は活気にあふれていた。しかし、周りの目線がおかしい。なにやら俺のことをジロジロ見てくるのだ。
 不思議に思ったが、自分の格好を見てその理由が分かった。
 今の俺の服装は上が紺色のパーカーで、下はカーキ色のカーゴパンツ。これは俺が前世で着ていた服そのままだ。
 それに対して周りの人たちは、鎧や甲冑かっちゅうを身につけていたり、ブカブカのローブを着て自分の背丈ほどの杖を持っていたりと、ファンタジー世界らしい身なりをしている。あとは、布の服を着た村人もいた。
 目立ちたくないので、俺は慌てて路地裏に入った。もしかしたら、俺の能力で服が出せるのではないか? と思ったからだ。しかし、そんなことをしている余裕はないらしい。〈神製の体〉である俺の鋭敏な耳は、路地裏の奥から聞こえてきた僅かな息遣いを聞き逃さなかった。

(ったく、いきなり運が悪いな……)

 振り返るとそこには、いかにも悪人という感じの男たちが五人ほどいた。とりあえず一番前にいる男のステータスを見てみる。

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