サラリーマンと異世界 ～秩序が崩壊した世界を気ままに生き抜く～

第81話 決戦前日

　翌日。
　いつものように狩りには出向かず、ファミレスに滞在している。
　明日の決戦に向けて準備をするためだ。

　現在は銃火器類と自作武器を並べて手入れを施している。
　少しでも誤作動や故障のリスクを減らしておきたい。
　これらの武器がヒュージセンチピードに通用するか不明だが、持っておいて損はないだろう。

　一応、変容で増えた特殊能力も使える。
　特に共同生活を始めてからはペースアップで増えている。
　切り札と呼べるような代物がいくつかあるが、過信は禁物だった。
　一発逆転の戦法に頼るのは危険だ。
　堅実な作戦と地道な攻撃が勝利に繋がるのは、この世界で学んだことである。
　切り札を使うにしても、そこに至るまでの流れを整えなければ。

　ストレングスは厨房で料理を作っている。
　明日の分の弁当を支度しているらしい。
　要望を訊かれたので、四人それぞれ違う中身になるのだろう。

　戦闘準備は無いのかと尋ねたところ、もう準備はできているとの答えが返ってきた。
　彼女は解体用の鉄球を武器に、軽自動車を盾にするそうだ。
　豪快すぎる戦い方は、ストレングスの名にぴったりであった。
　彼女のパワーならヒュージセンチピードにも有効打となり得る。

　道化王子は壁にダーツの的を設置して矢を投げている。
　いずれもほぼ真ん中に命中していた。
　凄まじい命中精度だ。

　彼の武器は主に鉈や斧だが、投擲技能も無視できないほどに高い。
　狙撃銃を持つ殺人鬼を返り討ちにしたという話もあるので、有効射程は相当なものだろう。
　下手な銃火器より強力と言える。
　軟体化による変幻自在な動きも相まって、不意を突く攻撃が得意な殺人鬼だった。
　ヒュージセンチピードの攻撃でも滅多に死なないと思われるので、その点だけでも実に頼もしい男である。

　紙袋姫は音楽プレーヤーで一昔前のヒット曲をリピートしている。
　イヤホンから漏れ聞こえるほどの音量だが、本人が気にする様子はなく、周りも自分の作業に集中していた。
　彼女の周りには、植木鉢に入った木や花が置かれてある。
　明日はこれらを軽トラックで運搬する。
　植物を操る紙袋姫は武器を大量に所持したいのだ。

　この他にもファミレスの裏に多種多様な植物を用意してあった。
　中には植物系統のモンスターも混ざっており、現在は紙袋姫が大人しくさせている。
　四人でヒュージセンチピードに挑むという無謀な作戦において、数を揃えられる紙袋姫の能力は必要不可欠だった。
　戦場になる学校付近には他にも植物があるはずなので、さらなる戦力アップが期待できそうだ。