サラリーマンと異世界 ~秩序が崩壊した世界を気ままに生き抜く~

結城絡繰

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第89話 弱点調査

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 建物の上を跳び移り、ヒュージセンチピードの後部に回ってしがみ付く。
 よじ登って外殻に掴まって膝立ちの姿勢を保つ。
 この付近は紙袋姫の蔦で固定されているのでまだ安全だ。
 手始めの攻撃を仕掛けるにはちょうどいい。

 逆に頭部に近付くほど暴れるので危険である。
 ストレングスがいかに凄まじい力を持つかよく分かる。
 彼女ほどの身体機能はないため、真似をすればあっさりと死ぬだろう。
 叩き潰されれば、さすがに再生能力があっても不味い気がする。

 周囲を見回して、外殻の剥がれた箇所を見つける。
 狙撃銃を突き付けて至近距離から連続で発砲してみた。
 肉が抉れるも、やはり大したダメージにはならない。

 他の銃でも結果は同じだった。
 少なくとも急所を撃たねば効果は薄い。
 仕留め切るには何日かかるか分かったものではなかった。

 もっとも、既に判明していたことなので悲観しない。
 狙撃銃を肩に担いで、撃ち抜いたばかりの箇所に片手を当てる。
 そして変容による炎を噴射した。

 炙られた肉が変色して煙が上がる。
 さらに熱された肉の周りの外殻が乾いて剥がれ落ちた。
 焦げた箇所は再生しない。
 素手でも千切れるほど肉が脆くなっている。

 ヒュージセンチピードは高熱に弱いらしい。
 個人携行ができるレベルの銃では歯が立たないが、炎の直射や大規模な爆撃なら有効なのだ。
 これは何気に大きな発見である。

 おかげで具体的な攻略方法が分かってきた。
 まずは物理攻撃で外殻を剥がす。
 そして、内側の肉に高熱の炎や爆発を炸裂させる。
 そうすることで効率よくダメージを与えられるはずだ。
 箇所によっては致命傷になるのではないか。

 狙うとすればやはり頭部だろう。
 現在はストレングスが攻撃し続けて外殻も大きく破損している。
 そこに炎を叩き込めばいい。

 『盾と牙』は被害を抑えるために胴体部を集中的に攻撃していた。
 これまでの被害が大きすぎたようで、活躍はかなり控えめだ。
 最も激しく動く頭部に、彼らが爆撃を当てられるとは思えない。
 彼らはあくまでもサポート役と見なして行動すべきだろう。

 今すぐにでも頭部に向かいたいところだが、変容で使える炎では力不足の可能性が高い。
 頭部の表面を焦がすだけでは駄目だ。
 そのためにも他の変容も試しておかなければ。
 土壇場で調べるより、ここで確認しておく方が確実だろう。

 逸る気持ちを堪えつつ、外殻の剥がれた箇所を使って変容の実験を開始する。
 周囲の蔦が千切れる音を聞きながら、冷静に没頭するのであった。
 ここ数日で得た変容を順番に試していく。
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