サラリーマンと異世界 ~秩序が崩壊した世界を気ままに生き抜く~

結城絡繰

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第104話 そして進んでいく

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 四人で休憩しながら話をしつつ、テレビと食事を楽しむ。
 とにかく必要なのは何もない時間だった。
 あれだけの経験をしたのだ。
 しばらく怠けたとしても文句を言われる筋合いはない。

 一方で収穫が気になるのも事実だ。
 死闘を経て、四人それぞれが強くなっていた。
 あれだけの大物を殺したのだから、相当の変容が進行する。

 ストレングスはさらに屈強な身体となり、各部位にプロテクターのような骨格ができていた。
 それはヒュージセンチピードの外殻だった。
 あの時に捕食したことで能力を奪ったのだろう。
 外殻部分は銃弾では傷付けることすらできず、モンスターの炎や消化液だろうと効かない。
 さらには攻撃時の鈍器として応用できる。
 タフなストレングスを後押しする能力になった。

 当然ながら彼女の身体能力は向上している。
 近くを歩いていたオーガなど赤ん坊同然の扱いだった。
 今ならヒュージセンチピードの突進を正面からでも止められそうだ。
 前からそうだったが、彼女にはますますパワー勝負を挑めなくなった。
 肉弾戦をこよなく愛するストレングスにぴったりの変容だと思う。

 道化王子はスライム時の消化能力が劇的に増したらしい。
 屋外で実演してもらったところ、大型車両が一分と持たずに吸収されてしまった。
 スライム状になって広く伸びた道化王子が覆い尽くして溶かしたのである。
 人体など一瞬で跡形もなくなるだろう。

 加えて消化した物体の性質を一時的に再現できるそうだ。
 たとえば自動車なら鉄やゴムの質を肉体に反映できる。
 応用力が高く、どの場面でも活躍する変容だ。
 道化王子なら変幻自在のサポーターになれると思う。

 紙袋姫は百足に似た人食い植物を生成できるようになった。
 彼女の特性に合わせて、ヒュージセンチピードの変容がアレンジされたのだろう。
 紙袋姫が能力を発動すると、彼女の人体各所から深緑色の百足の大群が大量に溢れてくるのだ。

 正直、かなりショッキングな光景だった。
 本人には言えないが気持ち悪い。
 ちなみにその植物百足は毒を持っているらしく、一匹分の噛み付きでもオーガを殺すことができた。
 僅か数秒で立てなくなり、三十秒ほどで泡を噴いて気絶し、一分が経つ頃には絶命する。
 しかも紙袋姫本人は、その毒を人体から分泌できる。

 ここに凄まじい毒使いが誕生した。
 植物による射程の広さと毒の脅威を考えると、紙袋姫のテリトリーに安全な場所は存在しない。
 許可なく立ち入れば、気付かぬ間に毒殺されそうだ。
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