金貨三枚で買った性奴隷が俺を溺愛している ~平凡冒険者の迷宮スローライフ~

結城絡繰

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第9話 一緒に食事をしてみた

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 その日の夜、俺とビビは街の酒場へ向かった。
 稼いだ分でご馳走を食う話になったのだ。
 二人で迷宮を探索した記念日でもあるので、少しくらい贅沢をしてもいいだろう。
 ビビがいれば効率よく稼げることも判明したため、出費に関してもそれほど痛くない。
 ギルドから依頼達成の報酬を貰った俺は強気になっていた。

 酒場はほぼ満席に近かった。
 通りに面した立地で、酒も料理も安いので人気なのだ。
 俺も金に余裕がある時は利用している。
 盛り上がる客を見たビビは、少し驚いた顔になる。

「にぎやかだね」

「どいつも酔っ払っているからな。騒がしいだろ」

「でも楽しそう」

 ビビはふんわりと微笑んだ。
 うるさい雰囲気が苦手なら店を変えるつもりだったが、杞憂だったようである。
 俺達は店の端にあるテーブルを確保した。
 ビビと向かい合うように座ってから尋ねる。

「酒を飲んだことはあるか」

「ないよ」

「そうか。じゃあ最初は弱めのやつを頼もう。色々と飲んでみて、気に入ったものを探せばいい」

 俺は給仕を呼んで酒と料理を何品かずつ注文する。
 ビビが飲めなかった分の酒は俺が貰えばいい。
 特に嫌いな種類が無いので問題ない。
 料理はビビの希望を聞きつつ頼んでみた。
 彼女が興味を持ったのは魚や肉を使った味の濃い料理だった。
 どれも酒との相性が良く、なかなか的確な選択である。

 雑談をしていると料理と酒が運ばれてきた。
 ここの酒場の名物と言えるタレの香りが広がる。
 それだけで空腹が刺激された。
 肉が焼けて油の弾ける音も耳を楽しませてくれる。

 素晴らしい。
 やはりこの店を選んで正解だった。
 心の内で称賛しつつ、俺はビビと乾杯をする。

 ビビが手に取ったのは果実酒だった。
 慎重な動きで飲むと、彼女は少し笑って二口目に移る。

「甘くておいしい」

「そうか。こっちはどうだ」

 俺は自分の酒を渡す。
 麦を発酵させたもので、鼻を通る香りと喉越しが抜群なのだ。
 受け取ったビビは嬉しそうに飲んだ直後、口を曲げて悲しそうな顔になる。

「苦い……」

「甘い方が好みらしいな」

「うん」

 ビビの好みが分かったところで、次々と追加注文をしていく。
 酒は甘めのものを重点的に選んだ。
 料理をつまむビビは、一定の速度で飲み干していく。
 頬が少し赤らんでいるが、特に気分が悪くなったりはしていない。
 獣人族は酒に強いらしい。

 ビビがこれまで飲んだ量を計算してみる。
 普通ならぶっ倒れてもおかしくない状態だった。
 そして、金銭的にも危険域に達しそうである。
 さすがに報酬が残らず消し飛ぶ展開は避けたい。
 酒を置いた俺は、やんわりとビビに告げる。

「そろそろ止めるか」

「まだ飲む」

「無理しないでくれよ」

「大丈夫」

 微笑むビビはテーブルに残る酒を空にしていく。
 料理よりも酒が優先のようだった。
 奴隷である彼女にとって、飲酒はそれほど未知の経験だったのだろう。

(今晩くらいは満足するまで止めないでおくか)

 俺は財布の防衛を諦めて肉料理を頬張る。
 その時、背後から粗暴な声がした。

「おう、見ない顔だな。新入りの冒険者か?」

 どうやら俺達に話しかけているらしい。
 振り向くとそこには、屈強な体躯の冒険者が立っていた。
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